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やっぱりやらねば  作者: Anastasia
Part3-アメリカ編
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その4-02

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 廉は、昔から、その年齢に合わず、スーツも難なく着こなし(元々が、冷静過ぎて、若造に見えないので)、貫禄のある青年によく見られがちだ。


 だが、今夜は、少しお金持ちの気取ったお坊ちゃんが、夜遊びに出るような出で立ちだったのだ。


 アイラを護衛するから、廉一人だけ、普通のスーツで目立ってしまっては、仕事にならないと判断したからだろう。


「アイラ、靖樹さんの仕事を受けるのは君の勝手だが、君を一人きりにさせることは、危険すぎるからね」

「今回は、そこまで危険じゃないじゃない」

「そう、祈りたいね」


 なにしろ、今までの過去の記録から言って、あの靖樹が関わって来ると、ロクな結果になった試しがない。


「まあ、いいけど。レンが勝手にボディーガードするって言うんだから、しっかり、護衛しなさいね」

「わかってるよ」


 まったく、余計な手間をかける靖樹に、手間がかかるアイラだ。


「龍ちゃんは、どうするのよ」

「龍ちゃんは、普通にカジノで楽しめばいいさ。初めてのカジノみたいだからね」

「まあ、そうだけど」


 元々、龍之介を混ぜて仕事をするつもりはなかったアイラだけに、一緒に、カジノの場所には行っても、その後は別行動のつもりだったのだ。


「私の邪魔はしないでね」

「その約束はできない」


 それで、嫌そうに、アイラの眉間だけが揺れる。


「できない約束は、しない主義なんで」

「邪魔しないでよ」


「それは、その時の状況によりけりだ。俺に邪魔されたくなかったら、あまり無茶なことはしないように」


 アイラの行動を把握しているだけに、廉だって、アイラの先回りをして、アイラを牽制して来るものだ。


 今日この頃では、アイラの扱いにも慣れて来たのか、このアイラに脅しまでかけてくるなんて、手に負えない男だ。


「どうするんだ、アイラ?」

「龍ちゃんを盾に取るなんて、卑怯じゃない、レン」

「まだ、取ってないよ」


 屁理屈だ。


 だが、ここで言い合いをしていても、廉とは平行線で話が進まないことは分かり切っている。


「それも、状況次第ね」


 そして、アイラの返答だって、約束ではない。


 アイラだって、したくない約束には、同意などしないのだ。


 廉の方も、嫌そうに、少しだけ顔をしかめてみせるが、今の所、仕方なさそうに、長い溜息をついていた。



* * *



 今夜、訪れたカジノは、一応、ラスベガスでも一番大きなカジノで知られているホテルだった。

 もう、ホテルの入り繰りからして、ネオンが壁一杯に照らされていて、ホテルの形全部が、ネオンで出来上がっていると言っても過言ではないほどの、眩しく、煌々とした明るさだった。


「さすが……、ラスベガス! 目がチカチカするなぁ……」


 初っ端から、ものすごい派手なネオンを見せつけられて、龍之介も感動しているのか、感想が出てこないのか。


「龍ちゃん、一人になったら、あまりウロチョロしないのよ」

「わかってるって。俺は、たぶん、スロットマシーンとかだけやると思うんだ。英語も分らないから、カードとかはできないしな」


「そう。それなら、大損しない分だけ、しっかり遊んで来なさいよ」

「おうよ」


「帰る時は、レンが連絡するから」

「わかった。音がうるさくて聞こえなかったら困るから、LIMEにしてくれな、廉。それなら、ちょくちょく確認するからさ」


「わかった。一応、龍ちゃんの居場所の確認も兼ねて、15分おきに、簡単なLIMEを入れておくから」

「オッケー。俺も、ちゃんと確認するから、大丈夫だぜ」


 意気揚々と、カジノの入り口に向かう龍之介は――やはり、止められていた。

 少し離れた場所から、列に並び出したアイラの視界の前で、入り口に立っているカジノの護衛に、龍之介は止められているのである。


「やっぱり……」


 少し大人っぽく、Yシャツなどを着こんでも、あの日本人特有の童顔は、どこに行っても子供に見られてしまう傾向がある。


 それで、龍之介は、(あらかじ)め用意していたパスポートを、ガードに見せていた。


 ガードの方も、パスポートと龍之介の顔を見比べ、それから、また()()()()、見比べ、また()()()()、時間をかけて――あたかも、龍之介が問題であるかのような、態度だ。


 どうせ、童顔に見える龍之介を見て、子ども扱いしてからかっているのだろうが、客商売で、随分な態度ではないか。


 赤の他人の振りをしているアイラでも、いい加減、あのガタイのいいガードを蹴り飛ばしたくなるものだ。


 当然のこと、アイラは全くの問題なしで、素通りパスだ。

 廉も、全く問題なし。


 大抵、こう言った場所で引っかかるのは、龍之介、ただ一人だった。


 カジノの中に入って行くと、スロットマシーンがずらりと並び、スロット回る音、弾ける音、スロットが当たる音、それらが入り混じり、それだけで気分が高揚してくるものだ。


 アイラはホール内も適当にうろついて、カードゲーム用のテーブルなども、回って見ていく。

 時々、空いている席に座り、カードゲームをしては、大した稼ぎにならないので、次に移って行く。


 そんなことを繰り返しながら、大体のホール内は観察できた。

 だが、目的の逃亡者は見当たらなかった。


 化粧室に行って、廉に確認すると、廉も、それらしき人物は見かけなかったという。


 どうやら、今夜は、空振りだったようだ。


 靖樹が寄越してきた情報によると、スキップ(逃亡者)は、ラスベガス内の3つのカジノで目撃されているらしい。

 今夜のカジノも、その一つのうちだった。


 それで、大抵、夕食後、よくカジノに顔を出して、それで、深夜まで居座って、また帰って行く、というのである。


 そこまで調べ上げているのなら、さっさと一人になる隙を狙って、とっ捕まえてやればいいものを、なぜ、靖樹の知り合い――情報屋は、かなりの居場所まで突き止めておいて、その男を捕縛しないのだろうか。


 なんだか、キナ臭い匂いがしてくるのは、アイラの気のせいではないだろう。


 なぜ、靖樹のイトコであるアイラが、ラスベガスまでやって来て、スキップを捕縛しなければならないのか?


 靖樹は、未だに、日本にいるのに。


 これは――どうやら、あちらの情報屋も、どこかかしらで靖樹の情報を手に入れて、それで、身内であるアイラに、コンタクトをつけに来たと踏んでも、きっと、アイラの勘は外れていないだろう。


 靖樹は、ある意味、(ぎょ)(がた)い男だ。

 あの風体で、頭も切れる(全く、そんな風には見えないが)。


 だから、靖樹を使っているとしても、靖樹自身が、簡単に、他人に使われるような男ではない。


 一筋縄ではいかない男だから、靖樹の仕事を引き受けるアイラが、一体、どんなものなのか、確認しに来たのだろうか。


 まあ、それならそれで、アイラには問題はない。


 アイラだって、靖樹と影で繋がっている情報屋が、一体、どんな人物なのか、確かめておく必要があるからだ。


 お互い、腹の探り合いで、さあて、一体、どっちに勝星(かちぼし)が上がるのか。


 アイラは、負ける気はないけれど。


 今夜は初日で、それほど必死になって仕事をするつもりもないアイラは、10時になると、さっさと仕事を切り上げていた。



読んでいただきありがとうございました。

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Twitter: @pratvurst (aka Anastasia)

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