その4-01
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アイラ達3人はラスベガスに到着していた。
靖樹が予約したホテルに向かうと、部屋は一つだけで、経費で落とせると言った割に、部屋代をケチるとは、一体、どういう領分なのだ。
しっかり、アイラは文句を言っていた。
だが、龍之介はラスベガスにやって来られただけでも嬉しいので、今回も、ベッドはアイラと廉に譲ってあげている。
それで、龍之介は、エクストラとして、シングルベッドが運ばれていたので、壁側にあるそのベッドを使うことになった。
「今から、すぐに仕事なのか?」
「仕事は夕方からにしましょうよ。昼間からカジノに出入りしてるのもいるだろうけど、やっぱり、夜になった方が賑わうもの」
「そっかぁ」
それなら、大勢人のいる場所なら、少し調子に乗って、人混みがあるから見つからないかも、なんて理由で、犯罪人も、簡単に、カジノに顔を出すかもしれない。
犯罪人の全員が全員、狡賢くて頭が切れる――とは限らないらしいから。
「でも、ベガスなんて、夜景が有名じゃない? ヘリコプターのツアーとか乗ったら、面白そうなのにぃ」
でも、靖樹のせいで、今夜はカジノに行って人探しだ。
それも、脱税で逃げ回っている中年のオヤジを、だ。
「おおぉ……。ヘリコプターツアーかぁ。それも、楽しそうだなぁ」
「そうでしょう?」
「もう、絶対、ヤスキには倍額払わせないと、気が済まないわ」
「まあ……、そうかもしれないけどな……」
プンプンと怒っているのなら、なぜ、初めから靖樹の仕事を引き受けたのか――龍之介にも、少々、そこが謎である。
「まあ、いいわ。今から出て、昼食でも取りながら、簡単にできる観光でもしましょうよ」
「それ、いい考えだな」
「ねえ、レン? 観光場所見つかった?」
ホテルの部屋に入って来るなり、アイラから命令されて、簡単にできる観光場所を探している簾は、まだ自分の携帯電話を見下ろしている。
「大きな観覧車がある」
「それは、夜がいいわよ。やっぱり夜景が見えるんだもん」
ふうんと、廉は次のページをスクロールする。
「エッフェルタワー――まで、あるんだ」
これは、廉も知らない情報だった。
「えっ? エッフェルタワー? なんで? エッフェルタワーって、フランスにあるんじゃないのか? なんで、ラスベガスにあるんだ?」
「豪華なホテルの一部みたいだ。わざわざ建設したのかな? 夜景は派手で、きれいだと思うけど」
わざわざ、ホテルの宣伝の為に、かの有名なエッフェルタワーまで建てるとは、さすが、ラスベガス。
スケールが違う。
「じゃあ、やっぱり、それ登ってみましょうよ。ヘリコプターツアーができないかもしれないから、高い場所に登って、夜景を見なくちゃ、ベガスに来た意味がないわ」
「一応、夜中の12時までは開いているみたいだ」
「それなら、10時には、もう、カジノ終わらせるわ。その後、観覧車に乗って、エッフェルタワーもどきも登って、夜景を見るべし!」
「そう。――ああ、予約がいりそうだ」
「両方とも?」
「いや、エッフェルタワーの方だけ」
「じゃあ、よろしくねん、レン」
「わかったよ」
それで、3人は街へ繰り出した。
軽い昼食を終え、簡単にできる観光ということで、蝋人形の有名な博物館にも直行。
本物もどきで、有名人のそっくりさんがそのままあって、映画で出てくるヒーローも飾られていて、感動しまくる龍之介だ。
アイラは、違う場所で、違う国で、同じお店の支店を訪ねたことがあるらしく、アメリカ版は初めてね~、と以前には見たことがない蝋人形を見て、楽しんでいた。
夕方頃には小腹が空いたので、簡単なスナック程度の食事を買い込んで、ホテルに戻って来る。
それからアイラはバスルームを占領して、今夜の準備の取り掛かるらしい。
スナックを先に食べて、それから、龍之介達も着替えだ。
「おわぁ……!」
「その叫び声、一体、なんなのよ」
あまりな龍之介の反応に、アイラの冷たい目が、ギロリ、と向けられる。
バスルームを占領していたアイラが出て来て、その姿を見た龍之介が、唖然として口を開けたまま、その叫び声を上げていたのだ。
アイラは――いつもの髪色ではなく、腰まで伸びた長い金髪だったのだ。
アイラの金髪姿を見るのは初めてで、おまけに、その恰好が――ドレスが、これまた……ものすごい煽情的で、アイラのスタイルの良さを見せつけるかのような、ボディコンに近いドレスだったのだ。
超ミニのスカートから覗く足が、長いこと長いこと……。
スラリと伸びた長い足を見せつけるだけではなく、細い足首の先は、その足元を更に強調させるかのようなピンヒールだ。
色は派手ではないのに、ブルーグレイかかった渋みの色のドレスが、女性らしい体の稜線をそのまま浮き彫りにさせて、どこに目をやって良いのか困るほど……、煽情的なドレスだ。
「その恰好じゃ、寒いだろう?」
「寒いわね。だから、レンタルしてるブラックのコートを着るわよ」
「それでも、寒いだろう?」
「寒いわよ」
でも、寒い真冬だからと言って、手抜きをするようなアイラではない。
本人にその気がなかろうが、嫌々で仕方なくだろうが、色気をみせて男を誘い込むのなら、徹底して、手は抜かない主義なのだ。
中途半端に、セクシーだけど可愛らしい――なんて形容は、絶対に当てはまらないような、セクシーで悩殺される――くらいの意気込みで、アイラは抜かりがない。
「まあ、君に迫られたら、どんな男でも、速攻で落ちるだろうけど」
「当然じゃない」
わざわざ、仕方なく、せっかくの観光を取りやめてまで、くだらない仕事に付き合ってやるのだ。
この請求は、絶対に、倍額以上で、あの靖樹に払わせてやる!
「龍ちゃん、バスルーム空いたから、さっさと支度してよね」
「お、おお……。分かったよ……」
まだ、唖然としたまま、ものすごい形相をしている龍之介に軽く睨め付けながら、アイラに言いつけられて、龍之介が、コクコクと、頷いてみせる。
それで、自分の着替えを持って、バスルームに入っていた。
廉は、龍之介がスナックを食べている間に、一応、着替えは終わらせているようだった。
黒いシャツは、首元で少しボタンが外され、光沢のある黒地のスーツを着込んで来た。
「あら~、今回は、少しは遊ぶ格好に見えるじゃない」
「まさか、堅苦しいスーツは着ていけないだろう?」
うふと、アイラが蠱惑的に瞳を細めて行く。
スタスタと、廉の前に寄って行って、その手が上がっていた。
つーっと、廉のスーツの襟をたどるように、アイラの長い指先が滑り落ちて行く。
「なあに? 少しは、遊ぶ気になったの?」
「アイラのボディーガードだよ」
その一言を聞いて、アイラの視線だけが上がり、廉を見返す。
「頼んでないわよ、今回は」
「でも、アイラの前歴からすると、ともてじゃないけど、君を一人きりにさせることはできない。だから、仕方なく、普通のスーツじゃないだろう?」
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