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やっぱりやらねば  作者: Anastasia
Part3-アメリカ編
163/215

その1-02

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「龍ちゃんったら、いつ着いたの? 今朝じゃなかったの?」

「俺は、昨日着いたんだ。夕方だったんだけどな。飛行機の予約した時に、今朝で着くやつより、一万円多く払ったら、夜を越さないでサンフランシスコに来れるって分かったから、その分払ったんだ」


「あら、そう。一人で、税関とか通れたの?」

「いや、緊張したけど、俺は一度も引っかからなかったぜ」


 龍之介は、見るからに、問題もなさそうな日本人で、少々、童顔に見えることを除けは、全くの安全圏だ。

 止められることも、滅多にないだろう。


 駐車場に向けて三人がゆっくりと動き出した。


「NZ は真夏なんだけど」

「そうだよなぁ。南半球だもんな。俺は、今回は、冬から冬だったから、全然、問題ないんだ」


「今までは、真冬から真夏だったもんね」

「そうそう」


「ねえ、レン、なにか飲み物買いたいわ」

「ジュースじゃなくて、お水とか?」


「ジュースは、もう、いいわ。フライト中に、結構、飲んだから。でも、ヒーター入ったり、空気が乾燥してるから、喉が渇いたのよね」

「パーキングに行く前に、空港内のお店に戻る?」


「それはいいわ。レンの家に行くついでに、どこか寄ってよ」

「お水なら、家に着いてからでもできるけど。空港から街中まで、十分程なんだ」


「え? そうなの? それなら、レンの家まで待つわよ」


 国際空港からダウンタウンの街中に行くのに、ほとんど時間がかからないではないか。


「そう言えば、アメリカには何度も来てるけど、サンフランシスコにやって来たのは、今回が初めてだわ」

「じゃあ、アイラにも観光になるようだ」

「そうねん」


 二人の会話を聞きながら、龍之介も、ふと、思うことがあった。


「あっ……」

「なによ、龍ちゃん」


「いやさ……、今回は、俺の希望って言うか、そのさ……俺がアメリカに来たことなかったから、アメリカ旅行になったけど、廉には、あんまり旅行の気分にならないかなぁ……。悪かったな、廉」


「俺は、気にしてないよ。俺はアメリカにいて長いけど、だからと言って、一人旅したことはないから、知らない場所もたくさんあるしね」


「そうなのか?」


「龍ちゃん、アメリカ大陸なんて、でっかいのよ。東西で分けても、ものすごい広くて、その全部を見て回るなんて、何カ月もかかるんだから」

「そうなのか?」


 ああ、でも、龍之介だって、日本にいるのに、日本全土を見て回ったことはない。

 日本にいるから、まあ、国内旅行はいつでもいけるか、なんて、つい考えてしまうほうだ。


 だから、北海道にやって来て、龍之介は友達と一緒にドライブに出かけたり、キャンプに出掛けたりと、北海道旅行は満喫しているが、東京にいた時は、修学旅行以外、それと、武道大会の移動くらいしか、違う場所に行ったことがなかった。


「じゃあさ、廉とアイラが行ったことのない場所も行ってみようか」

「今回は、一ヶ月近くも遊ぶんだから、色々できるわよ。龍ちゃん、ちゃんと、しっかり稼いできたの?」


「おうよっ! 今回だって、俺も、たくさん遊ぶぞーっ!」

「あら、私だって遊びまくるわよ」


 旅疲れも見せず、二人の意気揚々とした熱気に、廉もおかしそうに笑っていた。


 今年の年末はどうなることかと思いきや、どうやら、今年も、三人で、また騒がしく遊べることができるようだ。





「ここだよ」

「どこ」


 通りの道端に車を停めた廉に、アイラは窓越しから外を覗いてみた。


「向かい側の入り口に、白いアーチがある所」

「なんかな、すごい場所なんだぜ。俺も最初に来た日は、感動しちゃったくらいだしさ」


 よく判らない龍之介の説明だったが、龍之介は何でも素直に感心するので、今回は何に感心をしたのだろうか――と、アイラもそんなことを考えていた。


 車から下りると、廉がトランクを開けて、アイラのスーツケースと他の荷物を取り出していく。


「龍ちゃん、スーツケースは重いから、レンにやらせればいいのよ」

「なんでだ?」


「身長さから言ったら、レンの方が、スーツケースに合ってるでしょう」

「そりゃあさ……、廉の方が、背が高いけど――俺も力はあるぜ」


「別に、比べたんじゃないわよ。でもまあ、龍ちゃんは力持ちだから、私はどっちでもいいけど」

「それでやっぱり、君は荷物無しなんだな」


 龍之介が言い張るので、スーツケースの方を龍之介に渡して、もう一つの荷物を廉が取り上げながら、廉がそれを指摘した。


「あら、レディーファーストじゃない」

「こういう時だけ、いっつも、レディーファーストだ」

「いいじゃない。女の特権よね」


 言い返す気も失せて、廉は荷物を片手に持ちながら、龍之介とアイラの二人を通り側に呼ぶようにして、動き出した。


 二人が揃って廉の後ろをついていく。


『Mr.シバザキ。お帰りなさいませ』

『Mr.スミス。こちらの女性は、俺のもう一人の友人です。しばらく、ここに泊まりますので』


『わかりました。――ミス、ようこそ』

『どうも。――Mr.スミス?』


『はい』

『よろしくね。しばらくお世話になるわ』


 満面の笑みを投げてアイラが挨拶し、入り口に立っていたバトラーの前を通り過ぎていく。

 その後を、龍之介と廉が入ってきていた。


 入り口のドアを通り抜けるとすぐに、昔風の開き扉のエレベーターがあって、上のボタンを押すと、時計の針のようなものが、チン、チンっと、上の階の番号からゆっくりと下がってくる。


 1階に下りてきたエレベーターが到着したので、その外扉を開いて、アイラが中に進んでいった。


「何階なの?」

「3階」


 それで、丸ポチのボタンを押したアイラの横で、廉が外の扉を閉めていた。


「こんな所に住んでるわけ? 随分、お坊ちゃまなのねぇ」

「ここは、両親が買った場所なんで、俺は、ただ、部屋を使ってるだけだよ」

「広い部屋なんだぜ。なんかな、西洋の本とかに出てくるような部屋だし」


 へえと、アイラも多少の興味をみせていた。


 いつも冷静沈着で、全く物事に動じないこの廉は、龍之介同様、知り合ってから、大分、経つのだが、どうも、本人自身の生活感が全く想像できない男だった。


 平然とした態度で、顔で、様子で、問題もなく、なんとなく、何でもこなしているようだし、本人自身もできないことがあってもがいている――というような素振りもないものだから、本当に、実生活が想像しにくい男だったのだ。


 3人で、毎回、旅行を共にすることが多くなって、旅行では、ある程度、それぞれの知らない面も見始めてきたり、知り始めたりしたが、それでも、本人の自宅に行って、その生活を見ない限り、まだまだ、知らないことはあるのである。


 チンと、金が鳴って3階に到着した一行は、エレベーターを降りて、廉のアパートに入っていく。


「この部屋を使っていいよ。龍ちゃんと俺の部屋は、居間を挟んで向こう側だから」


 入り口から細長い通路を抜けて、居間に入る前の左手の部屋が、アイラにあてがわれたようで、アイラは、一歩、部屋の中に入って、サッと、周囲を見渡した。


「あのドアは?」

「続きのバスルームだよ。もう一つは、向こうの寝室側の隣にある」


「エンスーツ? ――ここ、両親の部屋なんでしょう。いいの?」

「俺の両親がいた時はそうだったけど、今は、二人共イギリスだ。龍ちゃんとアイラがいる間に、俺の両親が帰ってくることもないから」


「大きな部屋だろ? それに、部屋にバスルームもついてるから、アイラだったら、この部屋がいいって言うと思って、俺はあっちの部屋にしたんだ」

「それは、どうも」


「俺達は、居間にいるから」


 廉が荷物を入り口の近くに置き、龍之介も廉に習って、スーツケースをその荷物の隣に置いていた。



読んでいただきありがとうございました。

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