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やっぱりやらねば  作者: Anastasia
Part2-マレーシア編
157/215

その18-07

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「みんな……、お酒強いなあ」

「そうか? 普通だぜ、この程度」


「俺は、少し、酔ってきたかなあ……」

「日本人の大学生は、酔っ払いが職業だって、アイラが言ってたぜ」


 あははは、と龍之介もその形容に笑ってしまう。


「ウィリアムは、アイラがニュージーランドに行っても、アイラとよく話すのか?」

「いや、会話はほとんどないぜ」


「だったら、どうやって、アイラの話を知ってるんだ?」


 素直な質問だったが、ウィリアムが、なぜか、少し口端を上げたような顔をみせる。


「なにせ、うちの一族は、情報網が広がっててな。全員が全員、情報を回し合うんで、大抵、全部の話は聞いてる」

「へえ、そうなのか。一族って、すごいよ。仲がいいしな」


「まあ、うるさいけどな」

「そうなのか? でも、仲がいい家族って、いいよな」


「リュウチャンの家族は、仲が悪いのか?」

「いや、普通だぜ」


 お酒のせいか、気分が上がっている感じだ。

 それで、龍之介もの会話だって、適当で、よく分からない話題ばかりだ。


「お待たせ~」


 アイラが両方の指に、シャンパングラスのようなグラスを四本挟めてやって来た。


「アイラ、器用だな、それ……」

「このくらいはね。仕事でしてるから」


「仕事? なんの仕事だ?」

「バーよ。夜は、バーで働いてるって、説明したじゃない」

「あっ、そっか」


 アイラは、旅行費用を貯める為に、2~3のバイトを掛け持ちしていたと言う。

 だから、夜はバーで働いていた。


「でも、私はお酒専門じゃないわよ。カクテルも作らないし。ビールとかジュース係り」

「そうなのか?」


「そうよ。私がグラス持ってホールなんか出たら、酔っ払いの下衆共に、体触られまくりじゃない。そんなの、ぶん殴っても、気が済まないわ」


 物騒な話である……。


 だが、お酒で、頭がフワフワとしている龍之介は、アイラの話の重要さを理解していない。


「ぶん殴ってって……、それは、さすがに、マズイだろ? お客様だしさ」

「客だろうと、お酒を飲んだからって、体を触って来るような下衆には、手加減なんてする必要ないのよ。――まあ、その話はつまんないから、いいとして、ほら? 龍ちゃんの分よ」


「あっ、ありがとう。でも、俺は……、少し酔ってきたかなあ」

「そうみたいね。ゆっくり飲みなさいよ。まだまだ時間はあるんだから」


 マイケルは、簡単に、自分のグラスだけ持っている。


 そこに、オーダーしていた料理も運ばれてきた。


 テーブルの上には、料理の皿が重なり、結構な量で埋め尽くされている。


「すごいなぁ……。俺、こんなに食べれないと思うぜ」

「大丈夫よ。ミックとウィルがいるから」


「へえ、そうなんだ。ウィリアムとマイケルは、たくさん食べれるんだ。すごいなあ」

「リュウチャンよ、もう、酔っ払ってるな」

「たかが、二杯なのにな」


 ほろ酔いになっている龍之介の頬も、赤くなり出していた。


 双子とアイラは、早速、運ばれてきたピザなんかをすぐに口に持っていく。


 アイラに急かされて、龍之介も、ピザのスライスを一枚もらうことにした。

 お腹も膨れているけど、結構、入るものなんだな。


「よしっ。軽く腹ごしらえもしたし、お酒も入ったから、ダンスしてこよう」

「俺はパス」

「俺もパス」


 双子は、即答だった。


「いいから。行くわよ」


 そして、(問答無用で)マイケルの首根っこを掴むかのようにして、アイラがマイケルを連れて行く。


 向こうに進んでいくアイラを、ぼんやりと目で追っている龍之介の視界の向こうで、アイラとマイケルがダンスをし始めていた。


 うるさいほどの騒音が響き渡り、DJが忙しく手を動かし、そんな中で、気分が乗っているのか、アイラが体を動かして踊っている。


 アイラは背が高いから、ごちゃごちゃした団体が周りにいても、頭一つ分高い。


 マイケルだって背が高い。


 だから、ハイヒールを履いたアイラと背丈が合って、二人の居場所はすぐに目に入って来る。

 おまけに、二人共、ものすごい派手な容姿をしているから、超目立つことこの上ない。


「……従弟と踊るって、どんな気持ちだろう……?」


 龍之介なんか、親戚の女の子とダンスする――なんて、想像もつかない。

 一緒にそんな場面になったら、恥ずかしくないのかな……。


「リュウチャンよ、堅苦しいこと言うなよ。ダンスしてる時に、一々、そんなこと考えるわけないだろ?」


 半分はダンスフロアの方に身体を向け、半分はテーブル側に向いているようなウィリアムが、龍之介の言葉に呆れている。


「そ、そうかな……。でも、なんかさ……恥ずかしくないか? 普段、親戚で、血が繋がってるのに……」


 クルっと、龍之介を振り返ったウィリアムが、大笑いし出す。


「リュウチャンよ、あんた、ホント、ピュアだなあ」

「ピュア、って……。別に、そんなんじゃないぜ……」


 小馬鹿にされたのか、笑われたのか、龍之介もちょっと言い返してしまう。


「いやいや。いいぜ、そういうの。リュウチャンは、やっぱり、そのままでいろよな」

「なんだよ。バカにして」


「いやいや。バカにしてないぜ。それに、うるさいミュージックの中、ダンスするなんて、適当に身体動かして踊ってりゃいいんだから。一々、相手の顔見ながら、「ああ、アイラは俺のイトコです」なんて、考えもしないぜ」


「まあ、そうかもしれないけどさ……」

「適当に身体動かしてりゃ、ストレス発散にもなるぜ」

「俺は、いいよ……」


 ダンスは苦手だ。

 ダンスは、恥ずかしくて、できないのだ。上手くも、踊れない(運動神経は誰よりもいいのに)。


「まあ、今夜は飲めよ、リュウチャン。せっかく旅行に来てるんだから、派手に遊ばないと損だぜ」

「うん……、まあ、そうかもしれないけど……。でも、俺は、お酒、あんまり強い方じゃないんだよな」


「だったら、料理食べて、酒を薄めりゃいいだろ。その間は、オレンジジュースでも飲んでろよ」

「うん、そうしようかな」


「レン、あんたは、どうするんだよ」

「俺も、そこまで飲むつもりはないな」


「へえ。でも、全然、平気そうじゃん」

「まあ、この程度は」


 それで、普段と全く態度も変わらず、様子も変わらず、淡々としている簾だ。


 その様子を見ているウィリアムも、皮肉気に口端を上げて行く。


「あんたも、ホント、不思議な男だよな。あれだけ、カイリ達に目をつけられて、毎回、うるさく構われてるのに、無事に生き延びてな。アイラとは色気もなにもないのに、恋人ごっこしたりな」


「恋人ごっと? アイラと廉が? 恋人じゃないぜ」

「まあな」


「靖樹さんも、確か――そんなこと言ってたような?」

「へえ、あのヤスキが。何て言ってたんだ?」


「うん? なんだか、アイラと廉は、恋人になんか見えない、って。色気に欠けてるから」

「へえ。それで?」


「それで? えーっと、確か、アイラが、どうせ、わざとにじゃれ合ってるんだろ、とかだったかな?」


 ふうん、とウィリアムも興味深そうにその話を聞いている。


「リュウチャン、あんた、日本で何してるんだ?」

「なに? 大学生だぜ」


「そうだってな。何、勉強してるんだ?」

「獣医だぜっ!」


 この時ばかりは、龍之介は誇らしげに叫んでいた。


「獣医? ――って、Vet か?」

「ベッド? 違うよー。獣医、だよ」


 お気楽な様子の龍之介では話にならないので、ウィリアムの視線が廉に向けられる。


「そう。Vet(veterinarian)だよ」


 へええぇぇぇぇと、その話は初めてだったのか、ウィリアムがかなり興味を見せていた。


「リュウチャン、あんた、Vet になるのか?」

「そう。俺さ、昔から、動物好きなんだ。それで、獣医になりたかったんだ」


「へええ。そいつはいいな」

「うん、いいぜぇ。毎日、動物触れるんだ。もう、天国だよー」


「へええ。そいつはいいな。人は見かけによらないなあ」

「そうかあ? 俺は、獣医になりたいんだあ」


「まあ、ガンバレよ」

「ああ、ありがとう。頑張るからさ」


 気分が上がって、酔っ払い始めている龍之介に、ウィリアムもおかしそうに笑っていた。





 そして、その夜の、“龍之介の初ナイトクラブ”は問題もなく、無事に終えていた。


 ホテルの帰り道、大分、お酒の酔いが冷めて来た龍之介だ。

 それでも、まだ、微かに残るお酒で、気分がいい。


「ウィリアムとマイケル、今日は、ナイトクラブに連れて来てくれて、ありがとな。俺一人だったら、絶対に行かないと思うけど、これもさ、いい経験になるよなあ」


「せっかくの旅行だしな」

「そうそう」


「うん、だからさ、ありがとな。こうやって、一緒に旅行したり、遊びに行けるのは、今回で最後だから、一緒に遊べて、俺もうれしいよ。海外で、友達できるなんて、一体、誰が考えたかなあ」


「龍ちゃん、ホント、いい子ねえぇ」


 なんだか、大袈裟に、アイラが泣き真似をする。


「なんだよ、アイラ。そんな大袈裟な」


 ははは、と龍之介は気分よく笑っている。


「この旅行で、ウィリアムとマイケルと一緒に遊べたから、よかったなあ。いい思い出になったよ」

「まだ、酔ってるな」

「確かに」


「そんなことないぜ」


 しっかりと指摘する双子だったが、呆れたように龍之介を見返している瞳は、親愛がこもっていた。


「リュウチャンよ、あんた、いい奴だな」

「そうそう」


「そうか? 普通だぜ」

「いいえ。龍ちゃんは、いい子よー。ミカだって、別れ際、感動して、泣いてたじゃない」


「ははは。美花さんも大袈裟だなあ」


 旅行の準備から、予約から全部してくれた美花に、旅立つ前、もう一度、きちんとお礼を言った龍之介の前で、美花が感動したように涙をこすっていたのだ。


「でも、今回の旅行は、アイラと廉の三人だけじゃなくて、アイラの一族が全員揃ってて、最高に面白かったなあっ! アイラもさ、誘ってくれて、ありがとな」


「どういたしまして。遊ぶんだから、しっかり遊ばなきゃね」

「うん、そうだな。俺も、アイラの真似して、派手に遊ぶことにしたんだ」


「当り前じゃない」

「うん、そう」


「アイラ2号か?」

「それはマズイだろ」

「うるさいわね」


 そんなこんなで、賑やかな一行は、ペナンでのナイトライフも満喫したのでした。



読んでいただきありがとうございました。

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