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やっぱりやらねば  作者: Anastasia
Part2-マレーシア編
152/215

その18-02

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 ものすごい量のランチを食べ終え、テーブルを移動し、別れの挨拶を済まし、その度に、ハグがたくさん。


 いえ……、さっきも済ませたんだけど、セカンドラウンドです。


『アイラぁ、気を付けて帰るのよ。旅行、楽しんで来てね……!』

『Mum も、元気でね~。写真沢山撮って、送ってあげるから』

『そうねえ。楽しみにしてるわぁ……』


 今度は、アイラの母親が、アイラとハグを交わす――だが、未だに、なんだか、アイラにぶら下がっているような状態で、アイラから離れない。


『アイラも、あまり無理し過ぎないように。旅行楽しんでおいで』


 アイラの母親がアイラにぶら下がったまま離れる様子がないので、その母親の背中から、アイラにも腕を回すようにするアイラの父親だ。


『Dad も元気でね』

『寂しくなるね……』


『大丈夫よ。たくさん電話するから』

『そうだね』


 電話で声を聞けるのも嬉しい。

 でも、こうやって、姿を見て話をすることだって、父親としては嬉しいのだ。


 もう、早くから、一人立ちした(し過ぎた)可愛い一人娘は、遥か彼方の遠い国で、一人暮らし。南半球など、中々、簡単に遊びに行ける場所ではない。


 そして、ここ数年、毎年、クリスマスになると、友達と旅行をしているアイラは、実家にも帰郷できない。


 なんとも寂しいことだ……。


『今年も、また、クリスマスに旅行をするのかい?』

『どうだろ。私の大学次第かなぁ』


 アイラは、もう、最初の専攻科目を終了している。

 それで、趣味で取った科目も何個か残っている。それと、一応、修士学用の科目も一つ。


 だが、今年でそのペーパーは終了する予定だ。

 その後、就職すべきか、それとも、まだ学生を続けるべきか。


 アイラも、まだ、そこまでの将来は考えていない。


『そうか……』

『Mum だって、龍ちゃんとレンに挨拶しないの? うちら、次のテーブルに行くわよ』


『ええええ? ダメよ、そんなの。最後の夜なのに、一緒にお話できないじゃない』


 思いっきり不貞腐れて、アイラの母親が、(やっと)アイラの身体から腕を放していた。


 ものすごい綺麗な女性で、サラサラとした黒髪に真っ青な瞳。

 なのに、不貞腐れて頬を膨らませている顔は、ちょっと……可愛いとも、思えてしまうアイラの母親だ。


「リュウチャン、ゲンキデネ。アエテ、ヨカッタワァ……」

「あっ、はい。ありがとうございます。俺も、お会いできて、光栄でした。皆さんも、お体に気を付けて、元気で……」


「リュウチャンノアイサツハ、トテモ、テイネイナノネ? ソウデショウ? スゴイワ」

「いえ……。そこまで、丁寧なものでもないんですが……」


 そして、なぜだか知らないが、アイラの母親は、またも、龍之介にしがみついたままだ。


 この状態……、離してくださいって頼んだら、失礼なんだろうか?


「まあ、あんたも、ガンバレよ。生き延びれよ、なあ?」


 ギデオンが廉の肩を抱き、そんな呑気なことを口にする。


 廉も、一応、肩を軽く抱き返すが、その指摘には無言。


「ねえね、龍ちゃん、丁寧な挨拶って、どんなの?」

「えっ? どんなの、って……? 別に、サヨナラ、くらいじゃないのか?」


 アイラの興味心も、変な場所で湧いてくるなあ、と思いながらも、別れの挨拶なんて、そこまで丁寧なものなんてした記憶がない龍之介だ。


「他には? ものすごい丁寧なやつとか、ないの? 日本人でしょう? 日本人のやり方してみてよ」

「ええぇ?」


 そんな無理難題を押し付けて来るアイラだ。


 困ってしまったが、なぜか、アイラの家族全員から、(ものすごい)期待の眼差しが向けられていることに気が付いた龍之介だ。


 ひくり……と、顔が引きつってしまう。


「あの……丁寧、って……」


 廉に助けを求めても、ごめん、と廉は首を振るだけだ。


 帰国子女の廉に、日本式の挨拶を訪ねる方が、無理があったかもしれない。


「あのぉ……」


 うーんと、真剣に考えてしまって、すみません……と、アイラの母親の腕をゆっくり外す。


「あの……、それでは、これで、失礼させて頂きます。皆様、どうかお体に気を付けて、無事にお帰り下さい(?)」


 適当に取り繕った挨拶だが、龍之介は、しっかり45度、体を傾けて、深いお辞儀をした。


『おおぉ、すげぇ!』

『すごいわっ!』

『お辞儀が様になっているねえ……』


 適当なアドリブだったが、それでも、アイラの家族は大満足だったらしい。


「リュウチャン、すげーなっ。頭下げるの、すごい、カッコ良かったぜ」


 ギデオンが、ものすごい素直に褒めてくれる。


「いや、その程度は……」


 頭を下げて、これだけ喜ばれて、褒められたのは、人生初めてである。


「すごいじゃないっ、龍ちゃん。やっぱり、日本人って、そうやって頭下げるのね」

「まあ……、お辞儀は、基本だしな……」


 すごいわっ! と、アイラを含めた全員から、大喜びされてしまった。


 別れ際に、大した芸でもなかったが、喜ばれたようなので、一応、良しとするか。


「お辞儀の姿勢がきれいだな」


 廉も感心しているようだった。


 龍之介が廉の方に向いて、

「まあ、この程度は」


 毎回、やらされていることだった。

 座礼だって、厳しく躾されている。


「俺も、最敬礼のお辞儀は教わったけど」

「教わったのか?」

「うん、まあ」


 そう言う習慣を躾されるって、結構、廉の家では厳しい習慣があったのだろうか。

 これは、龍之介にとっても新発見だった。


「ねえ、龍ちゃん、帰る前に、Dad とMum 達に、日本のお辞儀の作法教えてあげてよ?」

「ええ? お辞儀の作法、って……」


「いいじゃない。二人共、日本のこと、すごく好きなのよ。だって、Pop が日本人なんだもの。昔は、Dad だって、結構、日本語勉強したのよ。今じゃ、ほとんど使う時がないから、忘れ出してるって言ってたわ」


「そっか……」


 それで、年を取るにつれ、日本語を忘れたり、日本の繋がりを忘れてしまうのは寂しいことだろうな、と龍之介も思ったことである。


「じゃあ、まあ、簡単な説明だけなら……」


 それを聞いて、アイラが嬉しそうに後ろを振り返った。


『リュウチャンが教えてくれるのかい? それは、いいねえ』


 アイラの通訳を聞いて、アイラの父親はすごく嬉しそうだった。


「ありがとう、リュウチャン」

「いえ……。この程度は……」


『ビデオに撮っても、いいかな?』

「えっ……? ビデオ、ですか……?」


『ダメかな?』


 そんな残念そうな顔をされたら、あまりに悪いことをしている気になってしまう。


「いえ、問題、ありません……」

『そうか。ありがとう』


『Dad、俺がビデオ撮ってやるから、説明、ちゃんと聞いておけよ』

『ああ、そうか。だったら、ビデオはギデオンに頼もうかな』


「じゃっ、決まりねっ! 龍ちゃん、お願いね」

「お、おう……」


 変な展開になってしまったが、もう、明日になれば、アイラの家族とも会えなくなってしまう。


 こんな風に、マレーシアにやって来て、外国に住んでいるアイラの家族に会えることができるなんて、一生に一度あるかないかの機会だったことだろう。


 海外にやって来て、日本の習慣と作法なんて教えることになろうとは、一体、誰が考えただろうか。


 これも、一生に一度あるかないのかの、貴重な経験だ。



読んでいただきありがとうございました。

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