その17-03
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『胡散臭くて、おまけに抜け目ないし、一人で澄まして、淡々として、何考えてるか判らないけど、まあ、悪い男じゃないわね。今回も、ヤスキにコキ使われて、せっかくの休みにも邪魔が入ったから、これくらいはね。だから、Thanks』
それを言って、アイラが部屋の中に進み出した。
『もう一つ、忘れていたことがある』
顔だけを振り向きかけたアイラの前で、グイッ――と、腕が引っ張られ、そのまま入り口の横の壁に押し付けられていた。
驚いて顔を上げかけたアイラの唇に、廉の唇が強く押し付けられた。
そのまま、廉の両腕がアイラの顔をしっかりと囲むようにして、アイラの顔を上げさせて、廉が、更に深く唇を押し割ってきた。
咄嗟のことに、アイラが両腕で廉の体を押し返そうとするが、壁に押し付けられるように押さえ込まれ、蹴り上げようにも、その動きを予測してか、廉の足がしっかりとアイラの足を押さえている。
『――んっ……』
半分、抵抗を試みたが、次から次に押し付けられるその強い唇に、それなのにアイラを誘うようなその唇の動きに、その舌がアイラを刺激していくようで――仕方なく、結局は、アイラも、その動きに身を任せて行くことにしたのだった。
それで、アイラがキスを深めていく。
廉の舌がくすぐるようにアイラの下唇をかすって行って、その割れた口元に、更に深く廉のキスが襲ってきた。
『ふ……』
そうやって、何度も唇を重ねているうちに、廉が、ゆっくりとその唇を離して行った。
少し離れていく廉の顔を真っ直ぐ見返しているアイラの前で、廉も、アイラの瞳を真っ直ぐに見つめ返している。
『――これで、おあいこだ』
パッ――と、アイラの瞳が上がっていた。
『毎回、毎回、男をその気にさせるようなことを続けて、それで、そのまま中途半端に放り投げていくのも、君の得意技だ。――これで、おあいこだな』
目の前にある廉の顔を真っ直ぐに見返しながら、アイラの瞳が細められて、廉にやられてしまった事実に、アイラの顔が、くそぅ――と、まさにそれを物語っていた。
廉はそれを見ながら少しだけ笑って、
『君のキスは癖になりそうだから、あんまり触れたくないんだけど、今回は、君のツケも溜まってきたから、仕方がない。おまけに、アメリカに帰ったら、そこは君のオニイサマのテリトリーらしいし。休みの度に、家に押し入られることを考えたら、これくらいはもらっておかないと、本当に割にあわないだろう?』
『もらい過ぎよ』
『でも、君のオニイサマの逆襲を考えたら、安いものだ』
それを言い終えて、廉は両手をアイラの顔から外していく。そして、体を少し起こすようにして、アイラの体からゆっくりと離れ出した―――
『!』
グイッと、アイラに、無理矢理、引っ張り返されて、反動で壁に腕をついた廉の胸の中に、アイラがその体を押し付けてきたのだ。
そして、両腕を廉の背中に回して、ピッタリと、その体を更に廉の体に押し付けてくる。
『アイラ――』
『なによ。中途半端に女にキスしまくっておいて、タダで帰れると思ってるの? うちのオニイサマに、どうせ逆襲されるんだから、今のうちに、タップリ楽しんでいけば。ねえ、レンちゃん?』
廉が、なんとなく、その目を瞑って、その顔をしかめてしまっていた。
アイラがその体をピッタリとなすりつけるようにして、おまけに、艶かしくその腰を動かして、いかにも、廉を刺激して誘い込んでいるのである。
『それ――やめてくれないかな』
『へえぇ。いつも、あまりに冷めた顔してるけど、反応する所は反応するんじゃない』
『それは自然現象』
『へえぇ』
『それ、やめてくれないかな』
片腕は壁について、もう片方の腕で、廉がアイラを引き離そうとする。
だが、アイラがしっかりとしがみついている形になっているので、その試みも空しいものだった。
『アイラ――それ、やめてくれないか』
アイラの瞳が悪戯を楽しんでいるかのように、爛々と輝いていて、極力、アイラから離れようと試みている廉の苦悶を見やりながら、その口元に、満足そうな艶笑が浮かび上がって行った。
ペロっと、アイラの舌が廉の顎をなぞって行き、廉の苦悶の表情が、更に歪んでいく。
くつくつと、アイラが喉で笑いを堪えている。
『アイラ――それ、いい加減やめてくれないか』
『反応する所は、反応するんじゃない』
『俺は普通の男なんで、自然現象とて当然だ』
『へえぇ、そうなの?』
『アイラ――押し倒されたいのか?』
はあ……と、諦めたような長い溜め息を吐き出す廉に、アイラは、まだ、くつくつと肩を揺らしながら、スッと、廉の背中に絡めていた腕を下ろしていく。
だが、中途半端に終わらせない性格だけに、その腕が廉の背中を滑り落ちて行って、廉の腰から離れていくまでの間も、ゆっくりと、アイラの体が廉の胸の中で動いていた。
それで、やっとアイラから解放された廉は、まだ顔をしかめたような顔をして、目をつぶっている。
『中途半端に燃えて、私のこと考えながら悶々してなさいよ』
『どうして――そうするかねぇ』
『さあねぇ。でも、アメリカ帰っても、これでしばらく退屈しなくて済むじゃない。カイリに邪魔される分、元は取ったでしょう? ――だってねぇ、もうちょっとで押し倒す所だったじゃない。もう、ワ・イ・ル・ド、なんだから、レンちゃんったら』
廉は、その場で、ゲッソリとやつれていた。
『――なんなのよ。イチャつくなら、外でやりなさいよね。まったく』
話し声がするので、寝ぼけたまま確かめに来ていた美花の前で、暗がりの広間で、開けっ放しになっているそのドアの隣で、アイラと廉が激しく絡み合っていたのである。
シーンと、その光景を見た美花は、冷たい眼差しを二人に向けて、またベッドに戻り出していた。
ふあぁ……と、大きなあくびをして、ベッドの中にもぐりこんでいく。
『まったく、押し倒すんなら、外でやりなさいよね、外で。アイラに構われたら、骨の髄までしゃぶられるわね、あれじゃあ』
中途半端に起こされた本人は、ぷんぷんと、その怒りを撒き散らしながら、枕に頭を埋めて、さっさと眠りに戻っていたのだった。
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