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やっぱりやらねば  作者: Anastasia
Part2-マレーシア編
146/215

その16-04

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 もしかしなくても……その勘は、当たっていたのかもしれない。


 ガーン……と、今更になってショックが襲ってきた。


「マジか……」

「可能性は高いわね。そんなことで落ち込んでないで、さっさと説明しないさいよ」


「いや、うん……まあ、そうなんだけど」

「そんなに嫌気が差してたんなら、後で、私がし~っかりと、龍ちゃんの体、洗い直してあげるわよ」


「アイラが俺の体を洗い直す? どうやって?」

「何言ってんのよ。愚問じゃない、バカねえ、龍ちゃんは」


 アイラの口元が妖艶に上がっていき、アイラの指がわざとに、つーっと、龍之介の腕をなぞっていった。


「――――えっ!? いやっ、ダメだよっ。そんなことしなくていいから。絶対に、しなくていいからっ!」


「なに、そんなに全力で否定しなくてもいいじゃない。私に体を洗われるなんて、ラッキーなことこの上ないのよ」


「いやいやいやっ。俺はいいからっ。俺にはそんなことしなくていいから。俺は、別に気にしてないし」


 ものすごい勢いで否定してきている龍之介の顔が真っ赤だ。


「なに、遠慮してるのよ」


 アイラの顔が不満げだ。


「遠慮してないからさ――その話は、もういいってば」


「リュウチャン、顔真っ赤だな。初心で可愛いぜ」

「うるさいよ、ギデオン……」


 そんな呑気な指摘をしてこないでください。


 顔を真っ赤にしながら、龍之介は、手前にあったグラスの水を一気に飲み干してしまった。


「だからさ……その話はいいとして――説明の続き、するからさ……」

「じゃあ、しなさいよ」


 はい……と、またも大人しく龍之介が頷いた。


 それから、リュックサックの切られたことと、龍之介が三人をノしたこと、靖樹がやってきて、警察がやってきて――云々を説明し直した。


「へぇ、そうなの」


 ふーん、とアイラはにこやかに龍之介の話を聞いている。


 それで、龍之介も、そうなんだ、と相槌を返していた。


 だが、そのにこやかなアイラとは打って変わって、向かいに座っているギデオンは、その不穏な空気を察して、なんとなく反射的に身構えていた。


 ドカッ――!!


『――いってぇっ――!』


 突然、龍之介の前で足を組んでいたアイラがその足を上げて、前にあるテーブルを、思いっきり力のままに、サンダルの底で蹴り飛ばしたのだ。


 一瞬、何が起こったか理解できなくて、龍之介は、これ以上ないほどに目を見開いている。


 テーブルが勢い良く蹴られて、それをモロに受けた靖樹が、痛そうに顔をしかめ出す。


『アイラ、てめぇ――』


 痛そうに足を抱える靖樹は、キッと、顔だけを上げてアイラを睨み付けた。


 だが、アイラは腕を組んだまま、その凍りつきそうな冷たい眼差しを、真っ直ぐにヤスキに向けて、

『ヤスキ、やってくれるじゃない。私の前で、私の友達に手を出すとは、随分とやってくれるじゃないの。いい度胸ね』


 ペラペラと英語で話されて、意味が理解できない龍之介だったが、一瞬、ボワッ――と、アイラの背後で、猛吹雪が荒れ狂っているようなイメージが頭に入ってきて、龍之介はそれにも驚いて、完全に呆然としている。


 ヒュルリ~――と、アイラの背後で吹雪が逆なでしているかのようだった。


 靖樹はまだ足を痛そうにさすりながら、嫌そうにアイラを睨め付けている。


『私を利用させてやったのに、それで足りないと言うわけ? ダブルブッキング(ダブル逮捕)だなんて、やってくれるじゃないの、ヤスキ』

『ヤスキ、これは殺されるぜ。アイラを怒らせたら、怖いのなんの、て』


 スッ――と、アイラの凍りつきそうな冷たい視線だけがギデオンに向けられ、パッ――と反射的に、ギデオンが両手を上げる。


『仕事のことになると、本当に見境いのない男ねぇ、ヤスキ。私が知らないと思って、随分、好き放題してくれるじゃない。どうせバレても、アイラだったら、ミカみたいに機嫌とって、ご馳走でも食べさせておけば大丈夫だろう、とでも思ってるんでしょう?』


 ふんっ――と、アイラが思いっきり冷たく鼻を鳴らしてみせた。


『ヤスキ、あんた、私のこと何も判ってないわね。大抵の人間は、私のことを分かってるって信じ込んでいるようだけど、実際は、そんなのはいないの。ヤスキ、あんたも同類よ。私を利用させてやってるって言うのに、私の友達にまで手を出すなんて、一体、どういう了見よ』


『偶然だろ』


『そんなの誰が信じるのよ。そんなでっち上げを信じるようなバカが、どこにいるって言うのよ。ヤスキ、あんたのような男が、一緒に歩いている連れとはぐれた? 100万年経ったって、そんなこと起こりもしないわよ。罪状はなによ』


『知るかよ』

『あら、そう。それなら、警察に連絡すれば、その確認だって簡単にできるわよねえ。なにしろ、連絡先を知ってるのは、なにも、ヤスキだけじゃないものねえ』


 アイラだって、指名手配犯の捕獲と逮捕で警察の連絡は知っているのだ。

 それで、ついさっき、指名手配犯を警察に預けて来たばかりではないか。


『ただの暴行未遂、恐喝だけの罪状じゃなかったら、絶対にタダじゃ済まさないわよ、ヤスキ』

『だったら、それがどうしたって言うんだ』


『だから、ヤスキ、あんたはロクデナシだ、と言われるのよ。反省する気もなければ、その兆しも全くない。世の中、自分一人が偉くて、自分一人の決断で何でも決まる、なんて傲慢な考えを持ってるから、何でも利用しても文句を言われない。そのツケだって回ってこない、なんて決めつけてるのよ。浅慮極まりないわね』


『ちゃんとした考えがあるんでね』

『ロクデモナイ考えに決まってるじゃない』


 ピシャリと、言い訳も許さないような、口答えも許さないような強さで、アイラが靖樹の言葉を叩き落としていた。


『ヤスキ、あんた、Asshole だわ』

『お前はBitch だって知ってたか?』


 アイラの冷たい瞳が輝いて、口元に薄い笑みが上がっていく。


『今頃気付いたわけ? そんなことも知らなかったとは、随分、遅れてるのねぇ、鋭敏な私立探偵の割には。まあ、ロクデナシ男に、なにを説教しても始まらないだろうけど。でも、いつまでも、自分の思い通りに事が運んでる思ったら、大間違いよ。ロクデナシ男には説教程度じゃ役にも立たないから、しっかり、お灸を据えてやるわ』


『お前が?』


 靖樹も小馬鹿にしたように、鼻で笑い飛ばす。


 その顔を見て、アイラの瞳が冷たく輝きだし、背筋がゾワゾワしてきそうな冷笑が浮かび上がっていく。


『甘いわね、ヤスキ。あんた、私に大物の方を追わせた点で、もうすでにその間違いを犯してるって気付かないの? 利用させてやってるけど、それで、大人しくヤスキの言うことを聞いてやる――なんて、ただの一度も言ったことはないのよ。この、電話一本で、あんたの賞金なんか、一瞬でオジャンになってもいいわけ?』



読んでいただきありがとうございました。

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