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やっぱりやらねば  作者: Anastasia
Part2-マレーシア編
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その16-03

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 それから、しばらくすると、通行人が呼んでくれたらしい警察官が二人やってきて、靖樹に英語で状況説明を聞いている。


 龍之介は質問されたことを日本語で返す。それを靖樹に通訳してもらっている。


 警察官の一人が、肩紐の切れたリュックサックを確認し、証拠品として貸してもらってもいいかと聞かれ、それは困ってしまうが、仕方がない状況で、仕方なく、龍之介も、リュックサックの中身を取り出した。


 まあ、財布とお水のボトル、日焼け止めしか入っていないから、大した中身ではない。

 アイラに忠告されて、パスポートはちゃんとホテルの自室の金庫に残して来てある。


 今回は財布も無事だから、お金も盗られていない。


「――あの……、俺は怪我させたことでで、事情聴取させられますか……?」

「いや、それはないらしい。まあ、俺の連絡先を渡してあるから、また質問があったら、連絡するってよ」

「そうですか……。それは、良かったです……」


 観光にやってきてまでも、警察署でお世話になんかなりたくはない……。


「でも……、かなり怪我させてしまいましたけど……」

「ナイフで襲われて、必死で逃げ切った、って説明してある」

「そう、ですか……」


 かなり余裕はあったが、そういう事情説明なら、龍之介もそれに乗るだけだ。


 こんな場所で――自分が有段者で、ここにいる三人など、すぐにノすことができるとバレてしまったら、正当防衛の主張も怪しくなってしまう。


 追加でやってきた警察官に逮捕され、三人が連れ去られて行く。


「災難だったな」

「いえ、まあ……」


「後ろ振り返ったら、突然、いなくなってるんで、驚いたぜ」

「え? 俺も、靖樹さんがいなくなって、驚きました……」


「別に、俺はウロついてないぜ」

「はあ……」


 やっぱり、何かの拍子にすれ違いになってしまったのだろうか。


 でも、今は靖樹に見つけてもらえて、本当に一安心である。


「まあ、災難な目に遭ったようだし、もう、動かないで、喫茶店かどっかで落ち着いたほうがいいだろうな」

「はあ……、そうかもしれませんね」


 ドッと、疲労が出てきた感じだ。


 それから、靖樹と龍之介の二人は表通りを戻り、適当なカフェに入っていた。

 外は暑く、通りも乾いていて、おまけに、予期せぬハプニングに遭遇して疲労を感じている龍之介は、ジュースを頼んでいた。


 時計で時間を確認すると、もう二時近くにもなっていた。

 そんなに時間が経っていたなんて思わなかったが、朝とブランチをたくさん食べて、今でも特別お腹が空いたようには感じない。


 昼食でも頼めよ、と靖樹に提案されたが、それは断っていた。


 アイラ達からの連絡はまだない。


 それでも、靖樹にはメールが入っていたらしく、アイラ達も仕事を終えたようで、これからぼちぼちと靖樹と龍之介に合流するらしい。


 アイラと廉の仕事も終えたようで、ああ……良かった、良かった。


 それから、アイラと廉が合流するのに、更に二時間ほどがかかっていた。



* * *



「あっ、アイラ、廉っ」


 カフェの入り口から入って来た二人を見て、龍之介が座っている席からちょっと手を振ってみせた。


 アイラも廉も龍之介に気付き、テーブルの方に向かってくる。――が、そのすぐ後ろに、かなり背の高い青年がいて、龍之介が不思議そうに首を倒してしまった。


「あれ? ギデオン? なんで? もしかして、ギデオンもペナンに来てたのか? でも、なんで?」

「よう、リュウチャン」


 困惑している龍之介とは違い、ギデオンは気軽に龍之介に笑いかけてくる。


「ギデオンもペナンにいたのか? でも、なんで?」

「うん? まあ、ついで」


「ついで? ……って、なんの、ついで?」

「ついでは、ついでだ。リュウチャンは何やってんだよ」


「俺? 俺は――えーっと……、アイラと廉、待ってたんだ……」


 へえ、とギデオンの瞳は興味深そうに龍之介を見下ろしていた。


 カフェのテーブルは四人席で、アイラが勝手に龍之介の隣の席に座り込んで来た。

 それで、廉とギデオンは少しだけ間を空けた隣のテーブルに着く。


「龍ちゃん、暇だったんじゃないの?」

「いや、俺は――まあ、大丈夫だけど」


「なに、その変な間。それに、リュックサックどこにやったのよ」


 まだやって来て数秒もしていないのに、目敏いアイラだ。


「あっ……と、これな、まあ、うん……」


 いやまあ……、襲われたけど、殴り返したし、無事だし、あの追剥しようとしてきた少年達は逮捕されたし、警察が連れて行ったし……。


 色々あるけど、その説明をギデオンの前でしていいのかなぁ……なんて、龍之介もモゴモゴと口調が鈍っている。


「なによ。一体、何あったのよ」


 ギロリ、とアイラに睨め付けられて、龍之介も少々困り顔。


「いやなぁ……?――なんて言うかさ……」

「はっきり言いなさいよ。なんなのよ」


 キッパリ、スッパリ、口調もきつく、龍之介に言いつけてくるアイラに慣れているせいか、龍之介も、うん……と悩んでいる。


「龍ちゃん、はっきり説明しないさいよ。委細漏らさず、詳細によ。できないなんて言わせないわよ」

「いやぁ……、まあ、説明はできるけどよ。……別に、そこまで大袈裟にすることでもないかなぁ、なんて……?」


「それは、龍ちゃんが決める判断じゃないでしょ。説明を聞いた後で、私が決めることだわ。早く説明しなさいよ」

「ああ、まあ、いいけどな……。――いやあ、その、変な少年に掴まってさ……」


「変な少年? なんの少年よ」

「いや、なんか外人で、俺くらいの年齢で、それで、いきなり近寄ってきて、英語話せないって言ってるのに、無理矢理、引っ張っていくからさ」


「それで?」

「それで――ナイフを――あっ、でもな? ちっちゃいナイフで、大した危ないモンじゃないんだけどな、それで脅してきたから、手を振りほどいたんだけど、後ろから仲間の二人もやってきて、それで――まあ、路地裏っぽい場所に連れて行かれて。まあ――その……なんだ? 警察に逮捕されたから、俺のリュックサックも証拠品に貸してくれ、って頼まれたから、貸してやったと言うか、何と言うか……」


「その間、ヤスキは何してたのよ」

「いや、靖樹さんはさ……なんか、俺とはぐれたって言うか、お互いにはぐれたって言うか」


 へえ、とアイラのあまりにドライな返答が出る。


「でも、丁度、その三人を――そのだな……」

「ノしたんでしょ」


「そ、そう……」

「一々、隠す必要ないわよ。全部、しっかり、詳細に説明しないさいよ。説明省いてるじゃない。なにやってんのよ」


 それで、厳しく、冷たく、アイラに責められる。


 はい……と、龍之介は(つい)背筋を正して座り直し、大人しく頷いてしまった。


 説教モードを聞いてしまうと、つい、習慣で、龍之介のおじいさまの説教モードと重なってしまい、姿勢を正し、(いつもなら)正坐で説教を聞かなければならない癖が出てしまう。


 仕方なく、龍之介は初めからの出来事を、今度は省略せず、順繰りと順を追って説明し出した。


「その右手の男、ゲイじゃないの?」

「……え゛っ、マジかっ……!?」


 その一言で、龍之介の顔がひどく崩れ、微かに青ざめてしまった。


 もしかして――あの場で、龍之介は、カモにされただけでなく、あの少年――達? の遊び道具として、慰め者にされるところだったのか?


 ゲッ……と、つい、大声が出てしまった。


 最初から馴れ馴れしく腕を組んできたり、龍之介の体を触って来たりして、気持ち悪いな――とは、龍之介も思ったことである。



読んでいただきありがとうございました。

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