その16-02
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『大人しくついてくれば、痛い目遭わなくて済んだのに』
残念~、なんて呟いてるが、全く態度は逆を示していた。
ドシンッ――
後ろから、突然、ド突かれて、龍之介が振り返ると、若い男(少年?)二人が龍之介を取り囲んでいたのだ。
『黙ってついてこいよ』
そして、腰に鋭いナイフの感触。
こいつら三人がかりで、追剥もどきの犯罪でもするっていうのか?
龍之介が大人しくなったのを見取り、後ろの少年二人が、両脇から龍之介の腕を取り、しっかりと腕組してきたのだ。
ここで大声を上げるべきか、投げ飛ばすべきか。
人通りが多いから、通り過ぎるローカルや観光客には、今の龍之介の状況なんて目に入っていない。
グイッと、両方から引っ張られて、仕方なく、龍之介は足だけは動かした。
『観光客?』
『日本人』
『へええ。じゃあ、金持ってるんだろうね』
『たぶんね。こんな子供残して、親は、一体、どこに消えたんだか』
『ええ? 迷子? ラッキー』
龍之介が英語を話せないと分かっていて、わざとに、ペラペラ、ペラペラと、ものすごい早さで英語の会話をする三人だ。
右手には、明らかに外で白人の少年。左手には、褐色の肌だが、どこの国の出身か見分けがつかない。
前には、明るい金髪の若い男。きっと、少年に近いのかもしれない。
だが、『ラッキー』はしっかりと聞こえたぞ。
いいカモでも見つけた、なんて会話をしているんだろう。
『結構、肉付きいいね、この僕』
右手にいる少年が、いきなり、自分の右手を伸ばしてきて、龍之介の腹をなでなでしてきたのだ。
「おいっ――!」
ぞわっと、一気に龍之介の体に鳥肌が立ちあがった。
「触るなよ」
気持ち悪い触り方するなっ。
なんなんだ、こいつらっ――!
スッと、三人が通りを曲がった。
そこから一気に駆けだして、手を払いのける瞬間を見逃してしまった龍之介は、両腕を引っ張られたまま、一緒になって走り去る。
またも、三人が通りを曲がった。
曲がったと言うより、コンクリートの建物と建物の隙間に入った、と言った方が正解か。
狭い路地裏を真っすぐ進んで行くと、建物の影になり暑い日差し入らない。辺りが段々と暗く翳っていく。
向こうの方には通りが見えるから、行き止まりではないらしい。
二人の少年に囲まれたまま、龍之介は壁に押し付けられていた。
左手の少年はまだナイフを龍之介の横腹に当てている。
『スリ防止はいいけど、これだったら、前から斬り落とせば簡単じゃん』
金髪の少年が自分のナイフで、龍之介の胸側にぶら下がっているリュックサックの肩紐に手をかけた。
ジョギ、ザクザクっ、ジョギ――
小さなナイフを、かなりの動きで左右に動かしながら、切り落としている。
「これで正当防衛だな」
全く、ふざけやがってっ!
『怖い? 大人しくしてれば、優しくしてあげるからさ』
『そうそう』
ははは、と三人は龍之介の目が据わってることに気付かず、高らかに笑っている。
ジョギ、ジョキ、ブツッ――
やっと、リュックサックの肩紐を切り落としたようである。
金髪の少年がもう片方の肩紐を掴んだ瞬間、龍之介の左足が素早く動いていた。
手加減なし、左手にいる褐色の少年の足を踏みつける。
『あっ、いてっ……――!!』
その隙を逃がさず、左腕を捻って、絡まれた腕を外す。
空いた左手で、正面の少年の顔面を真っすぐぶん殴りつけた。
『うわぁ――ぁっ……!』
予期せぬ攻撃を受けて、咄嗟に金髪の少年が両手で顔を押さえつけていた。
呆気に取られている右手の少年の腕も払いのけ、その空いた手で、胸倉を掴み上げた。
「ふざけんなよっ!」
そのまま、両手で少年を強く引っ張り寄せて、思いっきり前方の少年に投げつけた。
『うわぁっ――!!』
勢いのまま投げつけられて、金髪の少年い突撃し、二人はそのまま地面に吹っ飛んでいた。
『きさまっ――』
「うるせーよっ!」
バッと、咄嗟に位置を変えた龍之介は、褐色の少年の胸倉を掴み上げ、そこから一気に背負い投げをしていた。
ドシンッ――
乾いた地面に、あまりに勢いよく投げ込まれ、衝撃をモロ受けた少年が息を詰め、その後、痛さで――動けない。
ザッと、一歩前に出た龍之介は、地面に吹っ飛ばされ、金髪の少年の上に乗り上げている少年の首元を手刀で殴りつけた。
『あっ……!』
悲鳴を上げる間もなく、少年が気絶していた。
「よしっ」
龍之介はその場を去り、さっきの通りに向かって走り出した。
「Police! Help me! Police! Help me!」
英語が喋れなくても、これだけ大騒ぎに騒げば、誰か一人くらいは、助けに入ってくれるはず。
そう願って、龍之介がまた叫んでいた。
「Police! Help me――」
龍之介の叫びで、そこらにいる通行人が全員ストップしていた。
「――おいっ! 龍ちゃんっ!」
向こうから走り込んでくる人影を見て、龍之介がホッと安堵の息を漏らしていた。
「おいっ、龍ちゃん。何やってんだよ!」
「靖樹さん……。一体、今までどこにいたんですか?」
「それはこっちのセリフだ。――それよりも、何叫んでたんだ」
「あっ、そうだ。あっちに、追剥がいて――」
「追剥?」
「そうです。三人に襲われて――」
「大丈夫なのか、あんた」
「俺は、大丈夫です。間一髪なので」
サッと見渡す限りでは、龍之介に怪我はなさそうなので、靖樹が周囲にいる通行人に向かって何かを喋り出した。
『警察呼んでくれ。今すぐに。あっちに暴漢がいる』
『えっ――』
『それは、大変っ――』
『警察を呼んでくれ。できるか?』
『そ、それは、もちろん――』
『じゃあ、頼んだぜ』
靖樹が龍之介を振り返り、
「龍ちゃんよ、ちょっと一緒に来い」
「えっ? なぜですか?」
「一人きりで残せるはずもないだろうが」
「あっ、そ、そうですね……」
靖樹が慎重に裏道を進んで行き、龍之介も仕方なくその後についた。
「こいつらか?」
「そうです」
一人は完全に伸びていて、一人は鼻を折って顔面出血。
地面に寝そべっていた褐色の少年が悔しそうに起き上がり出そうとしていたが、靖樹が少年の手の中にあるナイフを蹴り上げた。
『くそっ――!』
『ふざけんなよ。テメーらのような腐ったガキは、しっかりと仕置きされろ』
靖樹の拳が手加減なく振り落とされる。
ガツッ――!
顔面直撃で、その少年も即座に気絶していた。
(靖樹さんも、パンチできたんだ……)
その光景を見やりながら、密かに、龍之介もそんなことで感心してしまっていた。
読んでいただきありがとうございました。
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