その15-05
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グッと、ジョー・ペトリがアイラを壁に押し付けてきて、壁に激突する間に、アイラが咄嗟に顔を横に向けていた。
その後ろからアイラを羽交い絞めするかのように、ジョー・ペトリが自分の体をピッタリと押し付けた。
『いい加減にしなさいよ。いい気になるんじゃないわよ』
『取り引きはいいのかあ?』
これを見逃せば、もう二度とモノは手に入らないになあ――なんて、今の状況が自分に有利だと思い込んで、高を括っているのだろう。
それで、グリグリと、更に嫌らしく、卑猥に、ジョー・ペトリが自分の腰をアイラのお尻に押し付けて来た。
『女を脅して犯すなんて、タダで済むと思ってるの?』
『なに言ってる。誰がお前の言うことなんか聞くんだよ』
『へえ。女を犯す気満々ね』
『さあな。だが、大人しくしておけば、その可愛い顔には傷はつけないぜ』
『離しなさいよ』
『黙ってろっ』
それで、ジョー・ペトリが強くアイラの体を壁に押し付けた。
この男、ぶっ飛ばすだけじゃ、アイラの気が済まない。
そろそろ頃合いだろう。
これだけの時間を置いたのだから、廉は、もう、アイラを見つけているはずである。
指名手配犯と同一人物。
すでに、廉がこの男の写真を隠し撮りできたはずだ。
アイラも、自分の携帯で、今までの全部の会話を録音している。
証拠なら、あり過ぎるほど揃っている。
アイラが、グッと拳を握り、ジョー・ペトリを殴りかかって――
『変態ヤローが、気安く触るんじゃねーよっ!』
咄嗟に後ろを振り返ったジョー・ペトリが――振り返る暇もなく、横に吹っ飛ばされた。
ドカッ――と、激しく壁に激突したジョー・ペトリが顔をしかめて、起き上がりだす。
『ふざけんなよ、じじぃ』
ザッ――と、アイラの後ろをその気配が素早く駆けて行って、起き上がり出したジョー・ペトリの顎下から殴りつけた。
『ぐわぁっ――!!』
アグっ――と、殴られた反動で、また、ジョー・ペトリが激しく壁に激突する。
『ギデオンっ、やめなさい』
振り返ったアイラが、鋭くそれを言いつけていた。
それで、地面に這いつくばっているジョー・ペトリを蹴り上げたギデオンが、ゆっくりとアイラを振り返る。
『やっぱり、兄弟だ』
そこに静かな声が割って入ってきて、パッ――と、ギデオンがアイラの後ろの横道を睨み付けた。
その視線の先で、ゆっくりと影が動いて――廉が姿を出した。
アイラの横に並ぶようにして立つ廉と、そして難しい顔をしているアイラとを、ギデオンが交互に見返しながら、
『なんだよ、これは』
剣呑な目を向けて廉とアイラを睨んでいるようなギデオンの前で、廉は、まず、隣のアイラに向き直った。
そして、サッとアイラを確認して、いきなり、ぱっ、ぱっ、とその両手でアイラの肩や腕などを払ったのだ。
まるで、あまりに汚い雑菌でも払いのけるかのような仕草で。
『怪我はないようだ』
『そうね』
『無事で良かった。君の弟が来たから、丁度、良かったかもしれない』
アイラはまだ難しい顔をして何も言わない。
『これは、一体、何なんだよ』
『その説明は後にして、まずは、この男を拘束しないといけないんで』
廉はスタスタとギデオンを通り過ぎ、そこでへたばっているジョー・ペトリの側で屈み出した。
スッと、自分の背中のバッグから取り出した手錠をジョー・ペトリの右腕にはめ、ゴロン――と、無造作に男をひっくり返して、その反対の腕にも手錠をはめて行った。
『お前――こいつが目的か?』
廉の様子を見ているギデオンは、無言で、スタスタとアイラの元に歩いてくる。
そして、乱暴にアイラの顔を上げさせ、その顔をチェックすると、次は肩や腕を触り出して、アイラの体も確認しだした。
『怪我はないわよ』
パン――と、ギデオンの手を払いのけたアイラに、ギデオンが腕を組んで斜めにアイラを見下ろし出した。
『アイラ、これは一体どういうことだ? うちのオニイサマ達に告げ口されたくなけりゃ、しっかり説明してもらおうか』
アイラは嫌そうに眉間を寄せるが、まだ何も言わない。
『仕事だよ』
『仕事?』
ジョー・ペトリがノされて動く様子がないので、廉はまたアイラの方にゆっくりと戻ってきた。
『仕事? なんの――ちょっと待てよ。ヤスキか?』
『ご名答』
『なんで、あんたまで関与してるんだよ』
『俺はアイラの手助け役――かな』
『手伝いか?』
『それもある』
ギデオンは今話された内容を聞いて、何かを考えているようだった。
『――アイラが日本に行ってる間、ヤスキの仕事してたはずだよな。あんたらさ、一体、どこで会ったんだよ。友達――って、一体、どこで会ったんだ?』
『日本でだよ』
『そんなことは判ってるよ。一体、どこなんだよ。友達連れてくる――ってんで、すっかりそこら辺の事情が省かれてたな。レン、あんたさ、この状況に、随分、馴染んでないか? アイラの手助け役――ってな。日本でもそうだったんだろ? あのヤスキが、ただの男をアイラに付けるわけないからな』
『この男はいつでもどこでも動じないのよ』
『また、この男扱いだ』
『そうじゃない』
『そうやって誤魔化すなよ、アイラ。オニイサマ達に告げ口されたいのか?』
『君もやっぱり兄弟だな』
ギデオンは嫌そうに口を歪めてみせるが、まだ、そのきつい眼差しをアイラに向けている。
『アイラ、お前、ヤスキの仕事って言ってたな。毎回、こんなことしてたのか?』
『仕事を選択するのも、決めるのも、アイラの意思だ』
『あんたは黙ってろよ。アイラが決めたことだろうが、随分とまあ、うちのオニイサマ達の知らない所で、危ないことをやってるようで。このまま告げ口したっていいんだぜ。カイリだったら、血管ブチ切れてるかもな』
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