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やっぱりやらねば  作者: Anastasia
Part2-マレーシア編
140/215

その15-04

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『戻って来たわ』


 その合図で、廉はアイラの隣に立つようにした。


『Rakan (友)が会うって』

『そう』


『だから、残りの支払いね?』

『わかったわよ』


 リュックサックから、もう一つの紙袋を手渡すと、即座にそれを確認した男が、にやり、と口端を大きく上げていく。


『じゃあ、ボクはこれで』

『ちょっと、中にいる奴の顔だって知らないのよ』


『一人しかいないから、ダイジョウブ』

『じゃあ、私のボーイフレンドに見張らせて、確認を終えたら、帰してやるわよ』


 若い男がかなり嫌そうに顔をしかめてみせた。


『ここまで来て裏切らないよ』

『口だけじゃ、何とも言えるのよ』

『そういうことで』


 廉は、無造作に、男の腕のTシャツを掴み上げる。


『おいっ! なんだよ』

『確認するから』


 淡々と言い返されて、若い男が廉を睨み付けるが、廉は態度を変えない。


『なんだよっ。さっさと、確認して来てくれよ』


 さっきとは打って変わって、ぶっきらぼうにアイラに言いつけて来た。


 今まで、アイラのように、ここまで(しっかりと)確認してきた客はいなかったのだろう。


 アイラは店に方に向かい、老婆の横を通り過ぎると、中にはテーブルが三つほど置いてある狭い店内があった。

 その一つに、よく日に焼けた男が座っていた。


 仲介人の言う通り、お客は一人だけだ。


 にやにやと、嫌らしそうな顔を向けて、アイラを舐め回しているような感じだ。


 アイラは店内には進まず、また外に出ていた。

 こっちを見ている廉に頷いてみせると、廉は掴んでいた男のTシャツを放していた。


『まったく、なんだよっ』


 捨て台詞を吐いて、若い男は腹を立てたまま、さっさとその場を歩き去ってしまった。


 その男の後ろ姿を追い、男が通りから消え去ると、廉もアイラに合流する。


 二人で店内に入っていくと、男がじーっとアイラ達を眺めていた。


 派手な柄の半袖シャツに、白いショートパンツ。裸足でサンダル。

 金髪にも見えるが、日に焼けて赤くなった髪の毛が、薄い色になっているだけかもしれなかった。


 アイラと廉が近寄ってきて、自分の前にある椅子を指さす。


『それで?』

『それはこっちのセリフよ』


 アイラの口調に、男の瞳が上がる。そんな強気の態度でやってくるとは、予想もしていなかったのだろう。


 だが、すぐに、また、にやにやとアイラを見返し、

『Ratan が、カップルを紹介するって言うんでな』

『へえ。二人揃って、Ratan なの。変な名前』


『まあ、俺は、ジョー、って呼んでいいぜ』

『ニックの言った通りね』


『ああ、ニック君。彼、元気?』

『さあ。知らないわよ、そんなこと』


『でも、ニック君の紹介だろ』

『そうよ』


『どこで会ったのさ?』

『NYのナイトクラブでよ。あそこ――多いのよね』


『へえ』

『でも、本当に――あるんでしょうね。わざわざ、こんな場所までやって来たって言うのに、空振りなんて、訴えてやるから』


『それは困るなあ。それに、そんなことしたら、君達だって、困るだろう?』


 アイラは、ふんと、笑い飛ばし、

『さあ、どうかしらね? 無理矢理、誘い込まれて、脅された、って言えば、なんの問題もないじゃない。うちらは、ただの観光客だもんねえ』


 確かに、アイラの言う通りだ。


 アイラ達は外国人で、観光客で、それで通る立場だ。

 無理矢理脅されたと虚言しても、それを証明する人間など他にいない。


 対する、ジョー・ペトリには、うるさく警察などに尋問されるわけにはいかない。


 嫌そうに眉間を揺らしたジョー・ペトリが、少し真顔になる。


『いいだろう。支払いは?』

『あるわよ。でも、ちゃんとモノを見ない限り、しないわよ』


 警戒が強い奴が来たよ~、とはさっきの仲介人からも聞いていた。

 だから、アイラの行動が慎重で、警戒しているのだろうと、左程、驚くことではない。


 まあ、お互いに慎重なら、バレる可能性は少なくなってくる。

 足を掴まれる可能性も、少なくなってくる。


『いいだろう。だが、女一人でだ』

『ふざけないでよ』


『俺は、一人だけしか取り引きしないんでね。特に、男は別だ』

『ニックだってしてたじゃない』


『あいつは、一人でやって来たからな。あんたらは違う。二人組みでいると、調子に乗って、ぼったくるかもしれないからな』


 だから、ジョー・ペトリは複数相手の取り引きはしない。

 カップルだろうと、女が取り引きをしている間、男の方が何をするか分かったものではない。


 金も払わず盗むだけ盗んで、ジョー・ペトリに危害を加えられたんじゃ、笑い話にもならない。


『どうする、オジョーサン?』

『わかったわよ』


『じゃあ、男はこの場所で動くなよ』

『――わかった』


 ムッとしたように、廉もただ冷たく言い返すだけだ。


『じゃあ、こっちだ』


 ゆっくりと椅子から立ち上がったジョー・ペトリが、アイラに視線を送る。

 ムッとした様子を隠さないアイラが、ジョー・ペトリの後についていった。


 店を出ていき、来た方向は逆の方向に向かい、ジョー・ペトリがのんびりと歩いていく。

 だが、すぐに、後ろを振り返り、廉が尾けてきていないことを確認するのは止めない。


 通りを歩いていく度に、ジョー・ペトリは後ろを何度も確認する。


 一画を通り過ぎ、曲がり、のんびりと進み、また曲がり。


 段々と、混雑した住宅街の奥に入っていったようだった。


 廉とは離されて、アイラは一人でジョー・ペトリの後ろを歩いている。

 だが、どうせこんなこともあろうと、廉は、今、廉の携帯電話でアイラの携帯電話の居場所を追っている。


 靖樹の仕事を引き受けて、昨日、アイラ達は互いの携帯で、GPS探知ソフトをインストールした。

 だから、引き離されたとしても、ある程度の場所や位置は掴めるように、その対策はしてあるのだ。


 今は、廉はまだ店の中にいる。

 ジョー・ペトリが警戒して、廉がアイラを追ってきてしまったら、きっとその場で取り引きはオジャンになってしまうだろうから。


 もう、昼を過ぎた時間になってきているはずなのに、向かっている先の住宅街は閑散としていた。


 ジョー・ペトリがまた曲道を曲がる。

 その狭い横道は家と家の間の隙間なだけで、このままだと、家の裏側に引きずり込まれる可能性が大だ。


 また曲がると、そこは完全な行き止まりだった。

 それも、四方に民家が連なって、その間にできた隙間だ。


 大声を出しても、こんな閑散とした場所なら、誰一人やって来ないだろうし、気づかないことだろう。


 アイラは、曲がった先で、すぐに足を止めた。


 ジョー・ペトリは気にした風もなく、のんびりとした様相で、アイラに向き直る。


『カバンを地面に置けよ』

『なんでよ』


『武器を所有してないか確認だ』

『そんなの、見れば分るじゃない』


 それで、ジョー・ペトリの口元が卑しく曲がる。


『女は、どこにでも武器を隠せるからなあ。嫌ならいいんだぜ』


 アイラはジョー・ペトリを睨み付けたまま、自分の抱えているリュックサックを地面に落とす。


『壁に手をついて、後ろを向け』


 仕方なく、アイラは両手を壁につけるようにして、立った。


『じゃあ、確認しようか』


 ジョー・ペトリがゆっくりとアイラの後ろに寄って来て、その両手をアイラの肩に置いた。

 それから、アイラの肩を撫でまわし、今度は、両手の平を押し付けるように腕から、背中へ、腰を掴んで、お尻を撫でまわす。


『いい加減にしてよっ』

『黙ってろよ。大声上げても、誰一人、助け何て来ないぜ。それに、取り引きはいいのかよ』


 そう言ってる間にも、ジョー・ペトリは、いやらしく、ベタベタと、アイラの体を撫でまわす。


 この男っ!


 一発、殴って気絶させても足りないわね。



読んでいただきありがとうございました。

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