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やっぱりやらねば  作者: Anastasia
Part1-出会い
14/215

その3-02

「なんだろうな」

「怪しいな」

「二人の結論はそれですか?」


 廉はちょっと大仰におどけてみせた。

 二人はその廉を無視して、ふーむ、と考え込んでいる。


「怪しいな」

「怪しいな」

「なぜ?」


「名前が、()()()、だし。名字を言わなくて。青森の公立から転校してきた割に、青森弁もないな」

「方言くらい直すのは簡単でしょう?」

「まあ、そうだが」


「でも、俺は、怪しい方に乗るな。知らない男の家にいるあの動作が、女子高生の割には反応が薄いな。ああいう反応をするのは、珍しいほうだ」

「二人はおモテになりますからね」


 からかったように言った廉の前で、二人は澄ました顔である。さすがに、進学高校のトップをいき、トップを収めていて、容姿も悪くはなくて――実は家柄も悪くはなくて――となれば、花形スター並に人気はあるのである。


「生徒会に目をつけられたら、この学校でも生き伸びられないでしょう」

「俺達はそこまでひどくないんだが。ただ、学校内の運営を任されているから、ちょっと気になることは気をつけていたほうがいいな、とね」


 大曽根の横で井柳院が少し自分の眼鏡をかけ直しながら、ふと思い出したように向こうの方を見やった。


「菊川はどこまで行ったんだ? もう、食べ終わるんだがな」

「龍ちゃんは寄り道が好きだからねえ。あの子も、困ったものだね」



* * *



 昼食を買いに来ていたアイラは、そこらの団体を見て、一瞬、怯んでしまっていた。


 食堂は混雑していることが多いので、食堂を避けてパンを買いにやって来たはいいが、そこでも、生徒達が連なって、固まって、あれやこれやと争奪戦が繰り広げられているのである。


 満員電車もそうだが、昼の買い出しまでも混雑と喧騒に囲まれて、その輪に無理矢理押し進んでいく勇気もなければ、やる気もなくて、アイラは怯んだままその場で立ち尽くしていた。


 ふと、その争奪戦が繰り広げられる輪から、一人の少年が出てきて、その腕の中にかなりたくさんのパンを抱え込んでいた。


 相手も目の前に立っているアイラに気がついて、あれ? とその首を傾げてみせる。


「あんたさ――元気になったの?」

「ええ、まあ」

「そっか、良かったな。具合悪そうだったもんな」


 はあ、と曖昧な返事をするアイラだったが、この目の前の龍之介は会った時からそうだったが、感情の素直な、そしてそのままに感情を見せる少年だった。


 だから、にこっと、笑った本人も、アイラが元気になって良かったな、と本当に思っているようである。


 毒気も抜かれて、警戒する気も失せてくるというものである。


「あんたさ――って呼ぶの、あんまり好きじゃないんだ。“あいら”って呼び捨てするのも変だろ? 名字、なんて言うの?」

「柴岬」

「じゃあ、シバザキさ、パン買いに来たんじゃないのか?早くしないとなくなるぜ」


 はあ、と曖昧な返事を返すアイラは、スッとその視線を目の前の塊に向けてみた。


 おばちゃん――これが、あれが――と普段は騒ぎもしない生徒達が鷹のように群がっている。


 はあぁ……、と自然、溜め息がこぼれてしまった。



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