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やっぱりやらねば  作者: Anastasia
Part2-マレーシア編
139/215

その15-03

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『暇そうだね』

『暇よ。日曜だし。これから、すること探してるの』


『そうなんだ。じゃあ、観光は?』

『もうしたわよ。今は違うこと』

『そうかあ』


 それで、口元が大きく弧を描き、ニコニコ顔から、ニヤニヤ顔に変わる。


『面白いことしたい?』

『したいわ』


『ふうん。でも、ちょっと高いよ』

『別に、いいわよ。その程度』


『そうかあ。ボクねえ、面白いこと知ってるよ。案内してあげようか?』

『知らない人間についていくなんて、バカがすることじゃない』

『そうだねえ』


 それで、なぜかは知らないが、突然、若い男が近寄ってきて、アイラの隣に、ストン、と腰を下ろした。


 廉がアイラの肩に手を乗せる。


『ああ、そんなに警戒しなくて、ダイジョウブ。ボクね、彼氏持ちに、手出す趣味じゃないから』


 廉は何も言わず、帽子のツバ越しに、若い男を黙って見返している。


 この口調から言って、まだ20代前半と言ったところだろうか。


『二人だけで、楽しいことしたい?』

『そんな話じゃなかったわ』

『どんな話?』


 それで、わざと、アイラがギロリと若い男を睨め付けた。


『用がないんなら、あっち行ってよ。忙しいんだから』

『あれえ、でも、さっき、暇だって言ったじゃないか』

『あんたには忙しいの。人を待ってるんだから、あっち行ってよ』


 それで、益々、若い男の口音が上がり、にやーっと顔も、目元も崩れていく。


『ボクもさあ、人を待ってるんだけどなあ? カップルを』


 アイラと廉が顔を見合わせた。


『その証拠は?』

『君たちこそ、証拠は?』

『ニックが――簡単にできるって』


 その名前が出て来て、若い男が、また、口元を大きく上げる。


『じゃあ、ボクだ』

『胡散臭いわね。本当に、そうなの?』

『そうだよ。ひどいな』


『全然、そんな風になんて見えないじゃない』

『じゃあ、どんな風に見えたらいいわけ?』

『知らないわよ。でも、ニックは、普通にしてたらバレないって言ってたわ』


『そう。だから、ボクだよ』

『本当なの?』


 あまりに疑わしそうに、あからさまにアイラが猜疑の視線を向けるので、ほんの少しだけ、若い男がムッとする。


 ポケットに手を突っ込んで、手の平をアイラに見せるようにした。

 その手の平の中に、指で挟まれたビニール袋が。


『ただの大麻? それだけの為に、わざわざ、こんな場所まで来たんじゃないのよ』


 緑の草だけが入っていて、大したモノには見えない。


『これはただの挨拶代わり。他のモノは、もっと別』


 それで、一応納得したのか、アイラも渋々了解した。


『わかったわよ。でも――本当に、簡単に手に入るの?』

『そうだよ。お金は』


『あるわよ。現金で、言われた通り』

『それなら、ダイジョウブ』

『本当なの?』


 それでも、未だに、疑わしい眼差しをやめないアイラだ。


 はっきり言って、“ニック”という前回の購入者を通して紹介された形のアイラ達は、この仲介人を信用している気配がない。


 もっと――秘密裏の方法でも予想していたのか、期待していたのか、若い男が寄ってきても、随分、拍子抜けで、二人共、その態度を見る限り、騙された、と思いこんでいるようだった。


『じゃあ、これからバスに乗って、移動しようか』

『その前に、聞きたいことがあるわ』

『なに?』


 男は警戒した様子もなく、アイラに気軽に話しかけてくる。


『本当に――簡単に手に入るの』

『そうだよ。難しく考えるようなことじゃないよ。こっちじゃ、この程度の()()()()()()なんて、普通だから』


 だから尚更に、アイラ達が信用していない気配がありありだ。


『君達、アメリカ人?』

『それが?』

『だったら、持ち帰る時は、気を付けた方がいいよね』


『ニックは、簡単にできる、って言ってたわ』

『ニックは、メキシコから帰ったからね』

『私達だってそうよ』


『あれ? そうなんだ。それなら、簡単かなあ』

『本当に? ――嘘なんかついてないでしょうね』

『ついてないよ』


 ただ、メキシコまでは、若い男の責任でもなんでもない。

 マレーシアを発った後は、勝手にしろ、と気にも懸けていない――が、それはお客の前で口にしない。


 観光客は、簡単に手に入る()()()()()を買って、国に持ち帰る。簡単に売りさばくことができるからだ。

 だから、わざわざ国外にまでやってくる渡航費を入れても、自国で稼げる額が倍になるので、()()()()()()小金稼ぎには丁度いいのだ。


 そして、()()()()()()スリルもあり、悪いことをしていると自覚していても、見つからなければいいじゃないか、なんていう背徳感と優越感にはまって、堕ちて行く客ばかりだ。


 まあ、若い男にとっては、仲介料をしっかり払ってくれるのなら、別に、観光客が危険を犯そうが、どうなろうが、知ったことじゃない。


『じゃあ、移動しようか』


 そのまま、バス発着場からバスを待ち、三人はバスに乗り込んだ。

 ほとんど乗客もいなく、バスはガラ空きに近い。


 廉とアイラは一緒に座り、その二人堰の前に、若い男が座った。


 バスが動き出すと、若い男がアイラ達を振り返る。それで、手を背もたれにかけて、顔を寄せて来た。


『じゃあ、支払い』

『半部だけよ』


『なんで?』

『口約束だけでトンズラかまされたら、元も子もないわ』

『そんなことしないけどね』


『信用なんかするわけないでしょ』


 ふうん、とその時ばかりは不満だったのか、それでも、若い男はアイラの指示に従うようだった。

 手をブラブラとさせて、支払いを要求する。


 アイラは胸の前にあるリュックサックを開け、茶色の紙袋を男に手渡した。


 若い男が前を向いて、紙袋を少しだけ開くようにして、それで、指で素早く紙幣を数えて行く。


『本当に半分だ』

『当然じゃない』


 ふうん、と満足はしていないようだった。


『まあ、警戒してるし、宿題程度はしてきたんじゃないの?』


 今回の客は、簡単に騙されるような観光客ではないようで、一応、そういった(裏)取引には警戒しているらしい。


『どこに行くのよ』

『着けばわかるよ』


 まあ、最初から、目的地をベラベラと喋るはずもないだろうが。


 市内バスは街中を軽快に通り過ぎて行く。

 それでも、繁華街を過ぎようが、ジョージ・タウンは所狭しと民家や建物が並ぶ土地だけに、通りのどこを見ても、壁続きの建物ばかりが目に入って来る。


 バスは海岸沿いの方に向かったと思ったが、また、街の方に戻って来る。


 バス停で下り、若い男の後ろをついていく二人は、民家が立ち並び、所々にお店があり、屋台や街頭露店を通り過ぎ、ローカルの屋台の一つに近づいていた。


 お店はパラソルのようなテントが屋根になっているだけで、店の前には、たくさんのサテイが並べられ、その横にはインドカレーも何種類かならんでいる。


『ここで待っててね』


 若い男は慣れた風で、店番をしている老婆に手を振り、店の奥に消えて行った。


『レン、私の後ろで確認して』

『わかってる』


 廉はアイラと背中合わせするように立ち位置を変え、ジーンズのポケットから携帯電話を素早く取り出していた。


『マークしたから、今はいいよ』

『そう』


 本当に、テクノロジーの進化と進歩で、今の時代、なんでもオンラインでできるものだ。

 〇ーグルさんには、通訳もマップもお世話になりっぱなしである。


 素早く、廉が現在地をマークしたから、今は時間がなくとも、後で再確認ができる。



読んでいただきありがとうございました。

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Twitter: @pratvurst (aka Anastasia)

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