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やっぱりやらねば  作者: Anastasia
Part2-マレーシア編
138/215

その15-02

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「あれ? あのオレンジの洋服着てる人がいる。もしかして――お坊さん、とか?」

「そうね。Monk よ。観光に来てるんじゃないの?」


 通り過ぎていく男性達は、オレンジ色の長いローブをまとい、裸足だ。そして、剃髪して坊主姿なのだ。


 お坊さんでも観光に来るんだなぁ、なんて感心してしまった龍之介だ(誰だって、観光くらいはすることを忘れてしまっている)。


「ここは、朝だけなのよね」

「そうなのか?」


 野菜や果物のお店もたくさんあって、ローカルがやってくるというのも頷ける。

 通りにはたくさんの喫茶店もあって、朝食にはピッタリだろう。


 龍之介は、朝食にコーヒーを飲むタイプではない。だから、コーヒーがないお店でも全然問題ないのだ。


「マーケット通りはカフェが多いわね。横道逸れたり、裏道は言ったら、Hawker Food があるわ」

「ホーカー?」

「龍ちゃん、携帯出してるんだから、調べなさいよね」


 今度は、面倒なので、廉の通訳もしないらしい。


 ピコピコと、また、〇ーグルサーチのお世話になってしまう。


「タカ使い――じゃないよなぁ」


 それは何でも、ねえ?


「だったら、行商人?」

「まあ、ストリートフードを売ってる人たちのことよ。それで、そのフードが、Hawker Food ね。ペナンじゃすごい有名なのよ」

「おお、そうか」


「あっ。カレーヌードルがある。あれにしようかっ」


 朝から、カレーヌードル。


 それで、通りの端にあるお店に並び、プラスチックのラーメンボールらしき器に入って来た、インドカレーに細い麺のカレーヌードル。


 でも、おいしいぃ。


 日本で食べるようなカレーヌードルとは全く違った感触で、カレーで、味覚で。

 でも、おいしいぃ。


「よしっ。腹ごしらえもしたし、仕方ない。別行動ね」

「そっか。アイラも廉も――その……な? 気を付けれよ」


 あんまり無茶なことするなよ、と暗黙に。


「大丈夫よ。ただの人探しなんだから」

「そっか……。いや、うん。それならいいんだけどな」


「じゃあ、後でね、龍ちゃん」

「おう。それじゃあな」


 そこで、アイラと廉、龍之介と靖樹の二組に分かれ、マーケットを後にした。


 龍之介と別れると、アイラが明らかにうざったそうに、長い溜息をこぼす。


『レン、地図覚えてよね』

『まあ、一応、今、見てるけど。一人で行動する際、勝手に走り出さないように』


 こんな混雑した場でアイラを見失ったら、廉だってアイラを見つけることなど難しくなってくる。そうなれば、護衛どころではない。


『わかってるわよ』

『それ、約束?』


 アイラの冷たい目が、ギロリ、と廉に投げられる。


 だが、廉は淡々とした態度も変わらず、

『アイラ、俺は、元々、この仕事は賛成していない。でも、君にそれを言っても無駄だから、言わないだけだ。護衛をする以上、俺だって本気だよ』


 ここは日本じゃない。

 危険な場所に連れ込まれ、危険な場面になってしまったら、味方など誰一人いないのだ。


『どうするんだい?』


 今回の仕事は全く余計な仕事で、廉にも、アイラにも、二人にとって無関係で、仕事をする必要さえない。義理さえない。


 だが、あの靖樹が()()()()と名指しで廉を護衛につけてきたのには、絶対に理由があるはずだ。


 あの隙の無い靖樹が、わざわざ、必要のない無駄をしてくるような男ではない。


 だから、今回の――あまりに最低な仕事の依頼だって、危険が伴うであろうことは、簡単に予想された。


 アイラは、その程度の――危険など、まあ、一人でどうともなるが、それでも、今回はホリデー中でアイラの一族全員が揃っている。

 そんな場所で、ちょっとアイラが怪我でもしたものなら、その全員からアイラは詰め寄られて、尋問される羽目になってしまう。


 そんな危険なことをしているなんて! ――と、最悪、これからの観光には、カイリ達の監視がついてしまうことだろう。


『――わかったわよ』

『じゃあ、約束?』

『約束、よ』


 渋々ではあるが、アイラから(今回は)約束を取り付けたので、今はそれで良しとするしかない。


『約束の場所は、ここから10分ほど歩く距離のようだ』

『そう』


 アイラ達は、これから、観光客を取り込んで、仲介役をしている男に会いに行く。

 その男と話を付けると、密輸犯のジョー・ペトリとの仲介をしてくれる、という情報らしいのだ。


 地図で確認した場所でも、混雑した通りに、混雑した人込みで、隠れ蓑には丁度いいのだろうが、そこに向かう二人には堪ったものではない。


 スッと、廉がアイラの肩を抱いた。


 観光客で、カップルで、それで――観光のついでに、ちょっとだけ、お遊びのお金儲けなんて?


『アイラ、しばらく地図を確認したいから、前はよろしく』

『いいわよ』


 これだけの人込みをかき分けて歩くのだから、携帯電話を見下ろしながら、前も見ずでは、簡単に人にぶつかってしまう。


 アイラが廉の腰に腕を回し、軽く腰を抱き寄せる。


 アイラも廉も、今は、リュックサックを前にぶら下げている。スリ防止に。


 通り過ぎて行くバイクや、自転車。一緒の方高に進んで行く行列。

 向かってくる行列。


 アイラの腕が廉の腰を押したり引いたりと、器用に、その混雑した場所を通り過ぎて行く。


『仲介役が案内する場所は、きっと、この当たりじゃないと思うんだ』

『そうでしょうね』


『タクシーで移動は、ちょっと困るな』

『それは、状況次第よ』


 結構な距離を歩いた気はするが、通りが開けて来て、ショッピングモールもあり、更に、たくさんのお店も並び、見上げると、スカイ・ウォークのタワーまで見える。


『こんな場所で?』

『人混みで、隠れやすいのかもね』


 だが、ショッピングモールのビルに近づいていくと、ほとんど人混みが失せていた。


『どういうこと? ショッピングモールって、こんなに暇なわけ?』

『さあ』


 さっきのマーケットに比べ、人混みが一気に減って、ショッピングモール付近も、ビルの中の様子も動きがなく、閑散としているようだった。


 日曜のショッピング時なのに?


 日曜のマーケットが有名で、ショッピングモールはそれほど利用されていない。

 観光客は、ペナンにやって来ると、ストリートマーケットを楽しむことが目的で、わざわざ、普通のショッピングモールに近寄ることはあまりない。


 ローカルの人間なら、ウェット・マーケットにも行ったりと、野菜や果物のマーケットで食事の買い出しに大忙しだ。


 指定された場所で、近くのお店からかったアイスクリームを片手に、バス発着所の近くで腰を下ろした。


 廉は携帯を見ている。

 アイラはアイスクリームを食べて、ただ、ぼうっとしている。


 暇そうで、これから何をしようか、なんて日曜の時間つぶしを探しているカップルだ。


 それから、三十分近く何もすることはなくて、座っている二人の前に、若い男が近づいてきた。


『ハロ~』


 Tシャツに、膝丈のショートパンツ。裸足でサンダル。

 どこにでもいるローカルっぽくて、黒い髪の毛に、黒い瞳。でも、肌は黒くない。


 これは、ローカル系のオリエンタル(東洋人)だ。インド系ではないらしい。


『ハロー』


 棒読みだったが、アイラもそんな返事をする。


 とことこ、とことこ、サンダルでゆっくりと若い男が歩いてくる。


『ハロ~』

『なに?』


『観光客?』

『そうだけど』


 にこにこ、と細い目を細め、若い男は笑顔を張り付けたままだ。



読んでいただきありがとうございました。

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Twitter: @pratvurst (aka Anastasia)

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