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やっぱりやらねば  作者: Anastasia
Part2-マレーシア編
136/215

その14-05

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* * *



「ペナン?」


 アイラに呼び出されて、ホテルのバーの方にやって来ていた廉と龍之介の前で、アイラが(あまりに)簡潔な説明をした。


「これから行く場所だろう?」

「そうね」


 それで、アイラだって、かなり嫌そうに溜息をついてみせる。


「あのヤスキのバカがね」

「また仕事、っていうわけ?」


 昔から、頭が切れて抜け目がないだけに、話が早い廉だ。


「仕事? えっ? また、靖樹さんの――仕事……?! それって、マズイんじゃないのか……?」


 わざわざ、アイラに呼び出された状態だったから、何かあったのかな? とは身構えて来た龍之介でも、さすがに、今の話を聞いて、少し顔をしかめてしまっている。


「あのヤスキのバカがね。全く、休暇に来てまで手に負えない男だわ」

「それで、またアイラが協力してやるんだ」


 どうも、今回は、廉もこの話に賛成しかねている口調だ。


「もう、あのバカ(おとこ)、放っておくと、ホント、ロクデモナイことするからね」

「随分、寛大だね。休暇にまで来てるのに」


「まったくよ、もう」

「それで、俺達に何をして欲しいわけ?」


 アイラが一人で靖樹の仕事を協力してやるのなら、わざわざ、龍之介と廉を呼び出す必要などなかったはずだ。


 それも、いかにも、密談をします、みたいな設定で。


「私の護衛?」


 ふうん、と廉は驚いた様子はない。


「龍ちゃんは、別だけどね」

「別なのか? なんで俺だけ?」


「大勢で固まったら、動きが丸見えらしいから。でも、一人きりで残されたら、退屈でしょう? それに、私と一緒にいなかったら、怪しまれるし。それで、ヤスキと一緒で、裏で隠れてるらしいわよ」


 その言葉も、どれだけ信憑性があるかどうか分かったものではないが。


「俺は――まあ……、アイラがするって言うなら、反対はしないけど……。でもさ、靖樹さんの仕事って、あんまり――いい仕事、じゃないんだろ? 日本にいた時だって、あんな危ない仕事を女の子にさせてたくらいだし……」


「さあね。今回は人探しだそうだから、それほどでもないんじゃない?」

「そう、かぁ……?」


 龍之介だって、その言葉を信用していいのかどうか迷っている。


「別に、二人共ここに残ってればいいじゃない。ホリデーなんだから」

「でもさ……アイラ一人きり、っていうのもなあ。――なあ、そう思わないか、廉……?」

「そうだね」


 やはり、一緒に遊びに来ているのに、アイラ一人だけ――危険? な仕事をさせて、万が一にも怪我したら――とは考えてしまう龍之介だ。


「どうせ、ここを発ってペナンに行くんだから、明日じゃなくてもいいじゃない」

「そうだけどさ……」

「まあ、今回は仕方がないね」


 それで、廉は簡単に、簡潔に、そう締めくくっていた。


 だから、龍之介も、うんうん、と頷いている。


「ヤスキには倍額払わせてやるわ。それで、うーんとおいしいご馳走食べましょうよ」

「そう、かぁ……?」


 そこまでしなくてもいいんだけどなぁ……、とは龍之介も遠慮がち。


 だが、アイラは絶対許す気はない。


 せっかくの休暇中に、あのヤスキのせいでくだらない仕事をさせられるのだから、しーっかりとその支払いはさせてやるつもりだ。





 自分達の泊まっているビラに戻り、明日が早いということもあり、龍之介はシャワーを浴びている。


 美花は、当初は、アイラと一緒になって遊ぶつもりだったらしいが、アイラは龍之介と廉と毎回出かけてばかりいるので、今は、大抵、他の親戚と一緒に遊んでいるらしい。


 だから、部屋の中にはアイラ達が三人だけだった。


『アイラ』


 大したテレビも見ていないのに、テレビをつけている場で、廉がアイラを呼んだ。


 ソファーにお行儀悪く寝そべっているアイラが、その視線だけを上げる。


『なに?』

『今回の仕事は何だい? 龍ちゃんには聞かせられないような、汚い仕事なんだろう?』


 やはり、廉には誤魔化しは効かないようだった。


 今回は、三人の旅行の邪魔もされるし、全く無関係の廉がアイラの護衛役までさせられるので、アイラもそこで仕方なく嫌そうな溜息をこぼす。


『タイ政府が賞金を賭けているBounty(バウンティー、賞金首)よ』


 その話を聞いて、廉も嫌そうに顔をしかめる。


『罪状は?』

『麻薬密輸犯。インターポールの指名手配犯でもあるわ。捕獲した場合、引き渡しで賞金が出るわ』


『また、君はそんな危ないことに首を突っ込んで』

『仕方がないわ、あのヤスキのせいだもの』


 身内とは言え、このアイラなら、嫌なことを押し付けられようが、本人が嫌なら、速攻で断っているはずだ。


 それなのに、なぜかは知らないが、()()()、あの靖樹の危ない仕事を手伝ってやるらしい。


 アイラも一体何を考えているのか。


『だから、俺が護衛役?』

『そうね』


 廉はあの事件でも全くの無関係だった。


 ただ自分の興味があったから、なんてあまりにくだらない理由でアイラに近づいてきたくせに、結局、事件に巻き込まれても、最後まで、アイラと一緒にいた男だ。

 頭が切れて、動じず、いつも、淡々としている割には、嫌な顔せず、アイラの護衛をしていた。


 だから、今回も、腕っぷしの強い龍之介ではなく、廉をアイラの護衛役につけさせたのだろう。


 あの靖樹は、廉なら、ある程度、咄嗟の判断も可能で、冷静で、怖気づくようなこともないだろう、と知っていたからだ。


『明日、一日で終わらなかった場合はどうするんだい?』

『期限は明日一日だけよ。それで無駄骨に終わったんなら、私には関係ないわ』

『その言葉は、一応、信用しておこうかな』


 アイラが嫌そうに廉を睨め付ける。


『わざわざ、ヤスキの為に、残りの休暇を棒に振るわけないじゃない。こっちはね、遊ぶ為にやってきてるのよ』

『でも、明日は?』


『一日だけよ』

『護衛に回される、ということは、またアイラを囮に使うんだ。あの人も懲りないね』


 それで、益々嫌そうにアイラが苦虫を潰したような顔をしてみせる。


 廉には、靖樹の画策などお見通しなのだ。ほんの少ない情報だけで、すでに、ほとんど説明されない裏の事情も策略も、廉が簡単に予測しているのは明確だ。


『だから、嫌ならいいわよ、って言ってるじゃない』

『嫌とは言ってないよ。ただ、予防対策として、現状把握をしているだけだ』

『よく言うわよ』


『アイラ』

『なによ』


『俺は靖樹さんの親戚でもなければ、義理もなにもない。だから、護衛をするなら、アイラが万が一になる前に、邪魔をするからね。それが最低限の条件だ』


 だから、靖樹の仕事がオジャンになろうが廉の知ったことではない、と言い切っている。


『私だって、そこまで肩入れする気はないわよ』

『じゃあ、護衛役をするよ』



読んでいただきありがとうございました。

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Twitter: @pratvurst (aka Anastasia)

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