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やっぱりやらねば  作者: Anastasia
Part2-マレーシア編
133/215

その14-02

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「アイラのあの目がな」

「アイラの目? 瞳? なんで?」

「いかにも、「挑発してるの間違いありません」ってな。どうせ、あいつがけしかけて遊んでるだけだろうぜ」


 へえぇ、とこれは龍之介からだった。そして、そうなのか、とすぐにその眼差しが廉に向けられる。


「そんなところかな」


 相変わらず、廉の返事は淡々として、態度も淡々としているのである。


「なあ、リュウチャン達よ。ここに来てから、結構、毎日、遊びに出かけてんだろ?」

「そうだな。色々、回って見たぞ」

「へえ、それいいな」


「ギデオンはどうしてたんだ?」

「俺はジェイドの付き添いとか」


 それで、そのついでに、毎回、ご飯を奢ってもらっていたとか。


 退屈になると、久しぶりに会えた“お兄ちゃんs()”にねだって、飲みにも連れて行ってもらっている。


 観光の方は、適当に誰かの後についていくと、必ず、貧乏なギデオンに同情して、入場券などは買ってくれている親戚だ。


 そして、そうやって奢ってもらうのが(大)得意なギデオンは、皆から世話されても嫌な顔一つしないで、ただ、一緒に付いて回っている、ある意味、かなり器用で策略家の弟だった。


 それからすぐに料理が運ばれてきた。

 暑い常夏のしたで、湯気がホカホカと上がっている熱い料理。


 スパイシーではないらしいから、汗が噴き出ることはないかもしれないが、それでも、きっと、暑くて汗がでてしまうだろう。


「これ、皆でシェアしようぜ。色々食べれるから。ダメか?」

「いや、俺はそれでいいぜ」


 大抵、アイラと廉と旅行している時は、色々な料理を試したいから、と全員でシェアしていることばかりだ。

 余程、一人前の料理でしか食べられないような食事以外は、どのレストランに入っても、「シェアしたいんです~」って頼むと、気軽に小皿など持ってきてくれる。


「これってさ、中華料理なのかな?」

「そうじゃないか? メニューも中国語だったしな」


 確かに、漢字らしきものは羅列されていた。

 それでも、読むのが大変で、さすがに、龍之介はそこで簡単にギブアップしていた。


 でも、オーダーしてもらって運ばれてきた料理は、おいしそうだ。


 炒飯っぽいのが一皿、ヌードルの炒めたものが一皿、お肉と野菜が入った炒めものが二皿、その他にサイドで、マレーシア系の揚げた春巻き、手羽先のから揚げ(っぽいの)、それにシュウマイもでてきた。


「ハシもあるみたいだぜ」

「あるのか? ――あっ、でも、中華料理のお箸はツルツルだったから、俺は、今日はフォークで食べるよ」


 お箸には慣れていても、中華料理店で出て来たお箸は、長く、丸く、先が尖っていないプラスチックのお箸が多かった。


 使えないわけじゃない。

 ただ、細かいものを摘まもうとしたら、滑って上手くいかないから、ちょっとは苦手である。


 その点、アイラは器用に食べていたなあ。


 本人は、慣れよ慣れ、とは言っていたが。


「おっ、結構、上手いな」

「あっ、本当だ。おいしいな」


 炒めたヌードルは色が茶色であっさりして見えたが、入っている野菜と一緒に食べるとおいしかった。

 炒飯も、サラサラとしたお米の食感が中華料理には合っていて、おいしかった。


「やっぱり、マレーシアってご飯がおいしんだな。どこのお店に入っても、あまり外れがなかったような気がする」

「まあ、そうだろうな。マレーシア料理は、結構、どこでも安定してるしな」


「イギリスやドバイにもあるのか?」

「イギリスにはたくさんな。ドバイには何件かあるけど、そっちは、Arabic 用に、味が少し変わってるかな」

「そっかぁ」


 小皿に乗ったサイド料理も全部消えてなくなっていた。


 ギデオンはアイラと対張って、食べっぷりも良ければ、自称“成長盛り”で大食いだ。


 でも、靖樹も一人で黙々と食事を済ませているが、しっかり皿にある料理はほとんど食べている。


「靖樹さんは二日酔いじゃないんですね」

「あそこまでバカ飲みするのは、あいつらくらいだろ」


 バカ飲みしてたんだなぁ……。


 一緒に混ざらなくて大正解である。


「お前ら、確か、この旅行が終わっても、まだ旅行するってな話だったけど?」

「あっ、そうです。4日の朝にはここを発ちます」


「それでどこに行くんだ?」

「えーっと、確か、アイラがペナンに行くって言ってました。ご飯がマレーシア一、っていう話なんで」

「まあ、そうだな」


 ふうんと、靖樹は特別興味もなさそうなのに、一応、会話はしてくれているらしい。


 結局、4人で食べた料理はアッと言う間になくなってしまった。


「なあ、レンくん? 俺はぁ、ビンボー学生で、お金もないんですけど」


 支払いを済ませるのにレジにやってきた一行の前で、ギデオンが馴れ馴れしく、廉の肩を組んできて寄りかかるようにする。


「俺は知らないな。そこの靖樹さんに頼めば? 親戚だし」

「ヤスキは身内だけど、俺にはおごってくれそうにもないしぃ。レンくんだったら、少しは、ビンボー学生の俺にも同情してくれるかなぁ、って? ――どうでしょう?」

「俺は知らないな」


 澄ました顔で、全くギデオンを相手にしない廉に、ギデオンが、にこっと、笑ってみせる。


「レンくん~、一人でも味方につけてると、後が、結構、楽チンだよ。うちのオニイサマ達はしつこいからね。身内で、一人くらいは味方につけておくと、いいだろう?」

「そうかな。身内とはここでお別れだから、利益はないね」


「そうかなぁ? 友達だって、これからまだ友達でいるだろう? もしかしたら、次に会う機会もあるしさ」

「そうかな。当分はないだろうさ」


 ふうん、と全くギデオンの誘いに乗ってくれない廉は、本当に淡々としているのである。


 ギデオンは、廉の肩に乗せている腕に寄りかかるようにして、廉の耳元に顔を近づけていく。


『あんたさ、英語話せるだろ? なんで、喋れない振りしてるんだ?』


 廉が、少しだけ、ギデオンの方にその視線を向けた。


『アイラと話してるのを耳にしたんだ。今更、とぼけたってダメだぜ』

『別に、隠してるんじゃない』


 ギデオンは廉が喋った言葉を聞きながら、じっと、廉を見返した。


『アメリカンか。そいつは――カイリの領域だぜ。住んでるのもアメリカなのか?』

『まあ』


『それは、ご愁傷様。アメリカ広しと言えど、結局は、国内だもんな。カイリのテリトリーだぜ。やっぱな、俺を味方につけておく方がいいと思うぜ、俺はぁ。休みの度に、カイリにやってこられたら嫌だろ?』


 まさかそこまでするだろうか――と、疑い深い廉だったのだが、それでも、その場をちょっと想像して、嫌そうにその眉間がつい寄ってしまう。


『なあ? そうだろ? だからさ、俺を一人、味方につけておいた方がいいぜ』

『なんの味方なんだ?』


『うん? 俺が逐一、Mum 達に連絡してやるから、カイリも下手なことはできないだろうぜ。あんたさ、Mum 達に、結構、気に入られてるから』

『そうかな』


『まあな。あのカイリ達を相手にして生き延びてるのは、あんたくらいだろうし、あんたさ、見かけもそうだけど――全然、動じてないよな。あのアイラを相手にしてるくらいだから。Mum にしてみたら、アイラのボーイフレンドができて、大喜びしてるんだろうけど』


『アイラは男には困らないだろう?』

『まあな。でも、兄貴達の前じゃ無理だろうな』


『だから、今はNZだ』

『そうだな。NZでアイラが何してるのかは知らないけど、アイラにボーイフレンドができても、カイリは嫌がらせ程度で、殺したりはしなだろうさ』


 随分、危ない方向に話が進んで行って、廉はシーンと無言。


 靖樹は自分だけの会計を済ませたようで、さっさとその場をよけた靖樹は、龍之介にも自分で払え――というようなことを話している。


 根が真面目なだけに、靖樹に通訳されて、真剣に自分の分の金額を確かめている龍之介を見やりながら、廉はまた少しだけギデオンに向いて、

『仕方ないから、君の分を払ってやる』

『やったねん!』


『君達、姉弟はそっくりだな』

『まあ、仕方ないよな。血が繋がってるし。でも、あんたさ、アイラが日本にいた間、アイラにメシ食わせてたんだろ? ヤスキがそう言ってたぜ』

『毎回、タカってくるんで』


 ギデオンはくすっと笑って、

『あんたさ、冷めた顔してるけど、結構、面倒見がいいよな。全然そんな風には見えないけどさ、アイラの体心配してるんだろ? ここに来てからも、アイラに飯食わせてるようだし』


『タカられてるんで』

『タカられてようが、それでも、嫌がらないで、アイラにおごり続けてるんだから、あんたもさ、結構いい奴だよな。だから、俺を味方につけてるといいぜぇ。Mum に、ちゃんと口止めするように言っておいてやるからさ』


『それはどうも』


 大した感謝しているような口調ではなかったが、ギデオンは全く気にした様子もなく、また、くすっと、笑ってみせた。


『俺はアイラほどタカりはしないぜ』

『今回だけだから』


『ええ? 次に遊び行く時は? アイラ達に混じって遊びに行くぜ、俺も』

『さあ、知らないな』


「廉、次だぜっ」


 自分の会計を無事終えた龍之介は、ほっとしたような顔をして、廉とギデオンを振り返った。


「そうか」


 それで、結局、仕方なく、自分の財布から、自分の分とギデオンの分を支払う廉であったのだった。




読んでいただきありがとうございました。

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