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やっぱりやらねば  作者: Anastasia
Part2-マレーシア編
132/215

その14-01

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 賑わった昨夜の年末パーティーで、新年おめでとう、を終えた一行は、朝を迎えて――ものすごい静かだった。


 若い組は、かなり遅くまで飲み明かしていたようで、そこまでのお酒は遠慮したいなあ、と龍之介とアイラ達は、あれから少しして、部屋に戻って来ていた。


 それで、新年初めの朝なのに、アイラ達が泊まっている場所の当たりは閑散と静まり返っていた。


 これが日本なら、これから、「明けましておめでとう」の挨拶があって、お年玉などももらえて、お節料理の準備がされたりと、結構、朝からでも忙しい。


 今回は、全員が寝坊しているようで、ビーチでもほとんど泳ぎに来ている観光客もいない。

 あまりに静かな午前中だった。


 女性陣は、朝食を終えてから、アイラの祖母の部屋に行っているらしい。

 皆で買った振袖を祖母にプレゼントするというので、今頃、女性陣が集まって賑わいをみせていることだろう。


 それで、残された男性陣はそれぞれにお正月をのんびりと過ごしている(たぶん、グ~タレ状態)。


『なあ、ヤスキ。腹減った~。なにか食べに行こうぜ』


 カウチに、だら~んと寝そべっているギデオンは、朝から暇を持て余して、カウチの端からはみ出ている足を、ぷらんぷらんとさせていた。


『俺は知らね』


 対する靖樹は、お正月明けであるというのに、キッチンのカウンターに自分の持ってきたラップトップを開き、何かをしているようである。


 ギデオンの兄二人は、他の身内や従兄弟達に混ざって、昨夜は派手な酒盛りをしていた為、今朝はベッドからまだ浮上してきていないのである。

 ギデオンも、最初の方は男性陣の酒盛りに参加していたが、長居はせずに、そのまま部屋に一人戻ってきたのである。


『なあ、ヤスキぃ。お腹空いたよ~。なんか食べに行こうぜ』

『一人で行けよ。ホテルに行けば、なんかあるだろ』


『ホテルのご飯も飽きてきたから、どっかローカルのトコ行こうぜ、ヤスキ。離れ島でも、ローカルが食べるトコくらいは開いてるだろうからさ。行こうぜ、ヤスキ』

『お前一人で行けよ。なんで俺を誘うんだ?』


『だって、俺は貧乏学生だもん~』

『お前、アイラにそっくりだな』

『まあ、それは仕方ないよな。あんなうるさいのでも、姉弟だし。――ねえね、ヤスキぃ、ご飯食べに行こうぜ~』


 小さな子供が駄々とこねるように、ギデオンが、うるさくカウチの上で足をバタバタさせだした。


『うるさいな、お前。あっちいってやれよ』


 やはり、うるさく思っている靖樹は迷惑顔で、しっ、しっ、とギデオンを追い払うようにする。


『ヤスキぃ~、行こうよ、ねぇ。行こうぜ。行きましょう? 行かない? 行こうってばぁ』


 バタバタ、バタバタと、その足をバタつかせて、でかい図体の割に、カウチの上で、器用に動き回っているようだった。


『うるさいな。あっち行けよ』


 しっ、しっ、と追い払ってはみるが、全く動く様子を見せないギデオンのうるささに閉口して、靖樹は結局自分のノートパソコンを、バチンっ――と、閉める羽目になっていた。


『やったぁ~! さすが、ヤスキ』

『お前、休みの間くらい、俺を一人にさせてくれないのか?』


『いいじゃん、ご飯くらい。それに、暇そうなのも他に誘えばいいし』

『俺は払わないからな』


 そこをしっかりと強調する靖樹は、うんざり、と明らかに顔をしかめて、椅子から立ち上がっていく。


 それを見て、ギデオンが、スクッと、元気にカウチから起き上がった。


『なあ、きっと、あいつらも暇だから、誘おうぜ』

『あいつら?』

『アイラの友達。どうせ、部屋で暇潰してるだけだろうしさ』

『俺は払わないぜ』


 まだ執拗にそこだけを強調する靖樹の横に並んで、ギデオンがその肩に腕を伸ばして行く。


『まあまあ。もしかしたら、おごってもらえるかもしれないだろう? 話はつけてみないとな』

『へえぇ』


 大した信用もしていなさそうな相槌を返すヤスキと、身軽に動いているギデオンが、部屋から出て歩き出した。


 暑い砂場を通り抜けて、風もなく、日差しだけが強くて、昼前だと言うのに、もう最高潮の暑さに達しているようだった。


『暑いなぁ。さすが、トロピカル』

『お前、暑いからくっつくな』


 うんざりと、外に一歩出ただけで、靖樹は一人だれている。


 二人が目的の部屋の前までやって来ると、ギデオンは部屋のドアを軽快に叩いていく。


 しばらくして、中からドアが開けられて、龍之介が顔を出した。


「あれ? ギデオン。どうしたの?」

「これからご飯食べに行くけど、あんた達も来るか?」

「ご飯? どこに?」


「どっか、ローカルの所。ホテルのご飯は飽きたから」

「ローカルの所? どこ? 歩いて? それとも、タクシーかなんか?」


 いつもの質問攻めの龍之介には全く気にした様子もなく、ギデオンは、その質問の一つ一つに、返答を用意しているようだった。


「ローカルのどこか。歩きは暑いから、もちろんタクシーな。タクシーの運転手に聞けば、ローカルの場所でも、いい場所あるかもしれないし」

「そっか。だったら、俺も行く。ちょっと待っててくれな。今、財布、持ってくるから」

「どうぞ、どうぞ。急いでないぜ」


 ドアを開けて二人を待たせている龍之介は、タッと、また奥に戻っていく。その後ろ姿も元気で、ギデオンと龍之介の二人だけが、パワーが有り余っている感じだった。


 龍之介が廉も一緒に連れて来て、ギデオンは、にこっと、笑んで行く。


「さっ、行こうぜ」



* * *



「暑いのに……熱いお茶なんて、飲めないけどなぁ……」


 タクシーの運転手に聞いた、ローカルのチャイニーズの食堂に着いた一行の前で、木だけの何もないテーブルの上に、4人分の湯飲みと、お茶のポットが運ばれてきた。


 そして、少し大きめのボールに、なぜかスプーンとフォークが入って、熱いお湯に浸かっているのである。


「水もらおうぜ。俺も、お茶はダメ」

「俺はビール」


 靖樹も熱い飲み物は避けるようで、ギデオンがちょっと手を上げて、向こうのウェートレスに合図するようにした。


 すぐに、お盆を持ったまだ若い――少女が、テーブルに走ってきた。この食堂の娘なのだろうか。休みの間は、やっぱり手伝いもあるのだろう。


『水も欲しいんだけど、お願いできるかな? それと、ビールが一つね。ヨロシク』


 うん、と簡単に頷いた少女は足並み早く、向こうの厨房の方に駆け込んで行った。


「これ――なんで、スプーンとかフォークが、たらいに入ってるんだろ? おまけに、お湯の中に浸かってるし」

「それね、消毒だぜ。なにしろ暑い場所だから、気をつけてないと、簡単に食中毒とか起こすかもしれないからな。その熱湯で、スプーンもフォークも消毒、ってなわけだ」


 そうなんだぁ、また新発見をして、龍之介はいたく満足そうだった。


 きちんとしたレストランは何度か行ってみたが、そこでは、きれいなテーブルの上に、ナプキンや紙ナプキンが置かれ、その上に磨かれたフォークとナイフが並べられていた。

 こういった、ローカルの食堂に来てみたら、全く違う習慣が珍しくて、嬉しくなってしまう。


 消毒の為に、お湯のたらいごと出してくるんだなぁ。


「今日は、女性陣はNana の所だから、暇だろ? おまけに、遊べそうな男共は、全員、二日酔いで寝てるしな」

「二日酔いじゃないの?」


「ないぜ。俺はほとんど飲んでないし。リュウちゃん、飲まなかったのか?」

「俺は一杯だけなんだ。そんなに強くないし」

「日本の学生の割に、酒に弱いのか? 日本の学生は、飲むことだけしかしないんじゃないのか?」


 はは、と龍之介もそれには笑ってしまって、

「まあ、飲む奴はたくさんいるけどな。俺は――うーん……、ちょっと口つける程度かな」


 ふうん、と相槌を返すギデオンは、龍之介の隣の廉にその視線を移していく。


「あんたは? あんたも飲んでないのか?」

「そうだね」

「なんで?」

「別に、それほど興味がないから」


 ふうん、と良く判らない相槌をするギデオンは、ちょっとテーブルの上に肘をつくようにして、それで、その上に顔を乗せて、まだ廉を眺めている。


「あんた、アイラにキスしてただろ? 昨日」


 廉はそれには答えず、ただその視線だけを動かして、ギデオンを見返す。


「よくやるよな、あんたも。死ぬ気じゃないと、アイラに手なんか出せないよなぁ、ホント。よくやるよ、あんたも」

「君は反対しないんだ」


「俺? 俺は、別に、あのうるさいアイラに構う男は気にしてないぜ。いつまで続くか見物だし。まあ、あんたもよくやるよなぁ」


 妙な感心を見せて、他の二人の兄上とは違って、ギデオンはかなり廉に友好的である。


「廉はただの友達だぜ」

「そうだけどよ」


 全く、それを信じないのがいるのも、事実なのである。


「あいつらもよ、いい加減、やめればいいのに。全く、熱血しまくりだな」


 うんざり、と靖樹は運ばれてきたビールに手を出して、一人、勝手にそれを飲み始めてしまう。


「大体、お前らが男、女がどうの――ってな間柄な訳がないだろうが」


 それは初耳――と、龍之介とギデオンが興味深そうに靖樹を見返す。


「なんで?」

「そうそう。なんで? 兄貴達にそれ言ってやりなよ」


「言うか。耳だって貸すはずないだろうが」

「それもそうだけど。でもなんで、男、女の関係じゃないんだ?」


「そんなの、見てりゃ誰でも判るだろうが。こいつら二人、男、女――ってな色気が足りないんだよな。ジャレ合ってるガキ――って言われた方が、まだ納得できるな」


「ジャレ合ってるのは、当たってるかもなぁ」

「そうか?」


 うん、と素直に同意する龍之介に、ふうん、とその場を自分で想像してみて考えるギデオンである。



読んでいただきありがとうございました。

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大人になってもはちゃめちゃ恋愛物語『やっぱりやらねば(続)』は大人の恋愛編です。
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