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やっぱりやらねば  作者: Anastasia
Part2-マレーシア編
130/215

その13-05

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「龍ちゃん、おめでとう~。Happy New Year!」


 アイラが龍之介の首に腕を伸ばし、抱きつきながら、龍之介の唇にキスをしてきた。


「えっ?! あの――ちょっと……!!」


 かあぁ……と、真っ赤に顔を染めた龍之介は、どう反応してよいのか、その場に硬直してしまっている。


「龍ちゃん、たかがキス一つで硬直してるなんて、男が廃るわよ。しっかりしなさいよ。今夜は全員にキスされるんだから。それでぶっ倒れないでね」

「え?! 全員にキスされる? ――なんで? え? ――いや、その……でも……だって……そんな……アイラにキスされて……俺、キスしちゃった、アイラと……えぇぇぇっ!? ――どうしよっ……だって、俺は……」


「たかが、挨拶じゃない」

「挨拶? ……挨拶って、そんな……いや、そうじゃなくて、挨拶なんて……あの――だって……俺は……」


 またしごろもどろに、大焦りをする龍之介を放っておくことにして、アイラは少し横を向く。


「してくれるの?」

「お正月だから特別よ」


「唇がいい」

「嫌よ」


「即答だ」

「当たり前じゃない。私のね、キスは高くつくのよ」

「そうか」


 そんな納得したような相槌を返した廉が、スッと、腕を伸ばしアイラの頭の後ろに回して、そのままアイラの頭を引き寄せるようにした。


 そして躊躇もなく、アイラにキスをしていく。


 それを目の前で目撃してしまった龍之介は、目を飛び出さんばかりの形相っである。おまけに、唖然としたように、ポカンと大きく口を開けて、立ち尽くしていた。


「気安く触らないでよ」

「これくらいはもらわないと、本当に割に合わないな。ここに来てからと言うもの、あらぬ誤解を受けたまま、どこに行くにも監視され、根掘り葉掘り訊問されて、休暇に来た意味がない」


 廉はまだアイラの頭を支えたままだった。


 だが、ほんの少し動かした視界の向こうに、じぃっと、廉を睨み付けている双眸がある。

 そして、背中に感じる、ヒシヒシとした敵意が、棘を刺すように投げられている。


 アイラはおもしろそうに口を曲げ、

「まあ、趣味だからねぇ」

「その趣味に付き合わされる身にもなってもらいたいな」

「別に、私には被害はないしぃ」


 そう言いながらも、アイラがチラッと向こうに目をやり、そしてその瞳がまた廉に戻された。


 少し嫌そうに眉間を寄せた廉は、

「本当に、君は懲りないんだな」

「なんのことよ」


「その目が妖しいんだ。以前から言われているだろう?」

「なんのことよ」


 アイラはすっ呆けたままだ。だが、その瞳がいたずらっぽく輝いて、口元に妖しげな微笑が浮かんでいく。


 アイラが、スッと、腕を伸ばして廉の頭をゆっくりと抱えていく。

 そして、自分の体をピッタリとくっつけるようにして廉を抱き締め、アイラがその唇に自分の唇を重ね出す。


 隣の龍之介の口が、顎が外れる勢いで、更にまた大きく開いていた。

 またも、龍之介の前で濃厚なキスを見せつけられ、龍之介の頭は爆発状態だったのだ。


「君も懲りないな」

「嫌だったら止めればよかったじゃない」


「うん、まあ、ここまでされたら、もう生きて帰してはくれないだろうから、しっかり払ってもらわないと、本当に割に合わない。それに、君は抱き心地がいいから」


「触らないでよ」

「触ってないだろ?」


 その言葉の通り、アイラが勝手にしがみついてきている間も、廉はアイラを抱き返していない。

 アイラがキスをしてきた時点で、アイラの頭を押さえていた腕を、スッと、下げているのだ。


「しがみついているのは君の方だ。どうして、そこまで俺に悪さをしたいのかな? そこまで嫌われるようなことをした覚えはないんだが」

「キスされてるんだから、文句言うんじゃないわよ。私に抱きつかれて、これ以上の得はないじゃない」


「でも、次の日は殺されてるだろうから」

「まあ、人生は試練よ、試練」

「試練ね、試練。そのまさに試練を課しにきた本人が、君の後ろにいることを、気がついていないのかな」


 それで、アイラが廉にぶら下がったまま、後ろを振り返った。


「いつまでくっついてんだ」

「カイリ、やめなさいよ。お正月なんだから」

「お前は黙ってろ」


 無表情で、スッと、アイラを睨み付けたカイリが、アイラの腕を取って、廉の首からそのまま離すようにした。


()()()()とやら、あれだけ忠告をしたのに、まだよく事情を理解してないようだな」

「してますけどね、こっちの妹さんがね。懲りもせずによくやるもので」


「お前、今回はやる気だな。丁度いい――」


「アイラ、明けましておめでとうっ!」

『アイラ、あめでとうっ!』


 突然、アイラの前に、アイラの伯母と母親が割って入ってきて、そこにいるアイラだけでなく、廉やカイリ、龍之介を手早く抱き締めて、ちゅ、ちゅっと、ほっぺたにキスを落として行った。


「アイラ、ニューイヤーよ」

「ハルカ伯母さん、おめでとう~」

「そうよ~、アイラ。新年ね。おめでとう」


『アイラ、ハッピーニューイヤーよ』

『Mum、ハッピーニューイヤー』


「ほらほら、カイリも、おめでとう。こっちの僕もね」

『そうそう。あなたもおめでとうよ』


 さっきもほっぺたにキスをし終えたばかりなのに、二人は龍之介と廉を捕まえて、また抱き締めながら、ほっぺたにキスをしていく。


「さあさ、そんな所で固まってないで、みんなの所にいらっしゃいな。もう、新年ですものね、みんなで挨拶しなくちゃ」

「コッチよ、コッチ。ミンナで、イラッシャイ」


 アイラの伯母と母親にしっかりと腕組みされて、龍之介と廉が、二人に颯爽と連れて行かれている。


 じろっと、カイリがその二人を無言で睨め付けたが、アイラの母親はにこやかに笑って、

『ニューイヤーから、そんな辛気臭い顔しないのよ。さあ、いらっしゃい。みんなでお祝いよ』


 そう言って、反対の手で、グイッと、カイリを引っ張って、しっかりとアイラから引き離す。


『アイラもそんな隅っこにいないで、みんなに挨拶でしょう? さあ、いらっしゃい』


 左手に廉を、右手にカイリを引き連れて、アイラの母親は、しっかりと、二人を引っ張っていくのである。

 その行き際にアイラをちょっとだけ振り返った母親は、軽くアイラにウィンクして、颯爽とその場を去っていく。


「Mum に救われたかしら?」

「アイラったら、アイラのボーイフレンドだからって、あんまり刺激しちゃダメよ。お正月なんだし、何事も揉め事がないようにね」


「伯母さんにも救われたかしら?」

「もう、ダメよ、アイラったら」


 ふふと、おかしそうに笑っているアイラの伯母がアイラにも手を伸ばし、アイラがその手を取って、伯母の肩を抱くようにした。


「伯母さん、龍ちゃんねぇ、今夜、みんなにキスされたら卒倒しちゃうかも。ウブなのよ、龍ちゃんは」

「あら、そうなの? でも、日本男児なら、そうかもしれないわよね。――そうでしょう?」

「いえ……あの……いや……その……」


「あの二人はMum に任せて、Nana の所に行こうよ、ハルカ伯母さん。Nana なら、龍ちゃんもショックが少ないだろうし」

「あらあら、そうかしらね。じゃあ、Nana の所に先に行っちゃいましょう?」


 うふふと、随分、楽しそうに龍之介を引っ張っていくアイラの伯母と、全く反省の色なしのアイラの二人に囲まれて、未だ茫然自失している龍之介は、あの山のような群の中にどんどんと連れられて行かれたのだった。




読んでいただきありがとうございました。

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