その13-01
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のんび~りと、プールに浸かっていただけの若者達は、泊っているビラからすぐ近くにある広場にやってきていた。
広場と言っても、ビーチ沿いに開けた場所があり、たくさんのパラソルやビーチチェアなどが並んでいて、海水浴用の場所として使用されている場所なのだろう。
ただ、今日は昼過ぎから“柴岬家御一行様”の貸し切り状態だから、枠組みを作る為に、簡単なパーティションポールが立っていたのだ。
まだ夕食には時間があったが、もう、かなりの数の親戚達がその場に集まりだしていた。
「おおおぉっ! すごい数の段ボールだな。これ、全部――あっ、ビールとかなんだ」
通り過ぎて行く龍之介達の横で、ドーンと陣取って、ものすごい数の段ボールが山積みになっていたのだ。
その箱の一つを覗いてみたら、箱一杯のビールの山が。
「こっちは、ジュースみたいよ」
「そうなんだぁ。さすが、この人数。でも、これだけの買い物だって、ものすごい額だと思うけどな……」
「人数多いからワリカンにしたって、大した金額じゃないわよ」
「まあ、そうかもしれないけどな……」
龍之介と廉はゲストという扱いなので、買い出し分にも何も支払っていない。
『アイラっ!』
通り過ぎていく龍之介やアイラ達の周囲では、ポータブルの小さなスピーカーも持ち込んだゲストが流している軽快な音楽なども聞こえてくる。
アイラが呼ばれて横を振り返ると、嬉しそうにに、こにこと微笑んだ女性が駆け寄って来た。
『ガブリエル~』
それで、アイラも駆け寄って来た女性を嬉しそうに抱きしめた。
久しぶりに会えて嬉しいわぁ、の挨拶時期は、もう過ぎたと思うのだが、アイラの一族は、会う度にみなで嬉しそうにハグを交わす。
『ねえ、アイラ、もう座る場所は決めたの?』
『決めてないわよ。今来たトコだもん』
『それなら、こっちにいらっしゃいよ。テーブルも設置したし、椅子もたくさんあるのよ』
『そうなの? じゃあ、行くわ』
二人で仲良さそうに抱き合っている場所に、背の高いブラウンの髪にブラウンの瞳を持った、なんだか紳士な男性も歩み寄って来た。
『アイラ、久しぶりだね。パーティではあまり話す時間がなかったからね』
『クリストファ! 久しぶり~。相変わらず、超美形で、現代版王子サマなのね』
ものすごい形容をされても、相手の男性はただおかしそうに笑っているだけで、アイラのハグを返し、アイラを抱きしめる。
挨拶を終えた三人が、龍之介と廉の方を振り返る。
『リューチャン』
先程から、にこにこと嬉しそうな微笑みを浮かべている優しそうな女性が、その嬉しそうな態度のままに龍之介に抱きついてきた。
「あっ……! あ、あの……」
『パーティーではお話できなかったものね。だから、今日はみんなに会えたらいいな、って思っていたのよ』
「あ、あっ……そ、そうですか。俺も、お会い、できて、うれしい、です……」
ペラペラ、ペラペラと、アイラに通訳されて、一応、理解はできたが、心構えができていなかった龍之介はしどろもどろで、まだ固まっている。
それで、その女性が次に廉にもハグをしていく。
『レン』
廉は普段通りで、落ち着いたまま態度も変わらず、挨拶程度に一応ハグを返しているようだった。
「こっちは、ガブリエル。そして、ガブリエルの恋人で、クリストファ、ね?」
「は、はあ……。よろしく、お願い、します……」
丁寧に、ぺこりと深く頭を下げる龍之介に、ガブリエルとクリストファの瞳がクリクリと輝いている。
「ついでに言うけど、ガブリエルは私のパパの妹、アン叔母さんの長女よ。クリストファはスペイン人ね」
「は、はあ……。それは、すごい、ですね……」
何に驚いているか良く分からない発言をする龍之介を前に、二人はにこにこと優し気な微笑みをみせてくれる。
ほんわ~かとしたカップルで、男性の方は白いシャツに綿パンと言ったカジュアルな格好をしているのに、なぜか、その醸し出す雰囲気が紳士っぽくて、洗練された大人の男性、という表現がピッタリの人だった。
アイラの従姉になるガブリエルという女性は、深い栗毛の柔らかそうな髪の毛が緩く肩を落ち、明るいブラウンの瞳が丸くキラキラとしていて、優しそうな女性の雰囲気が伺える。
そして、二人とも、間違いなく、美形の部類に入る。
“柴岬一族”の親族ではなくても、恋人まで“ハンサム”と言われるような美形で、なんともお似合いのカップルだろうか。
“ハンサム”一族が周りにい過ぎていて、目が慣れ始めてしまっているのだろうか。
チカチカ、と眩しさが感じられて、圧倒されまくっていた龍之介だったが、その傾向は大分落ち着いたようである。
「ガブリエル達がテーブルとか準備してるんですって。椅子もたくさんあるみたいだから、そっちにまずは参加しましょう」
「おっ、おう……。俺はどこでもいいんだけど」
『んじゃ、俺らは酒飲みだから、あっちに行くけどな』
『じゃあ、また後でな』
などと、颯爽とその場を去っていく双子。
その背格好を見ている廉の頭にも、逃げ足だけは早い、と密かに浮かんでいたなど露にも思わないことだろう。
あの二人、アイラの“一族”でしっかりと教育されているだけあって、自分の危機を感じると、颯爽と逃げ去っていく傾向があるのを、廉だって気がついているのだ。
もしかして、この新たに登場してきたアイラの従姉から――次の質問攻めだろうな、と廉もすでに諦めている。
龍之介は素直で人を疑うことを知らないから、興味津々で押しかけてくるアイラの親戚一同にも、丁寧に受け答えをしている。
だが、きまって、その質問の中には、
『アイラとどう知り合ったの?』
『アイラとの仲は?』
『今は何しているのかしら?』
などなどと、お決まりの身上調査が混ざっているのは否めない。
きっと、親戚一同が集まるパーティーと長期休暇の場所に、一族でも有名なアイラが連れて来た友達が男友達で、一族中の女性陣から――龍之介と(特に)廉は、興味津々で質問(尋問)されていることが多い。
今回もそうならないとは言い切れない。
皆、悪意があってやっているのではない。むしろ、(ものすごい)好意的で、素直な興味を見せて、久しぶりに会う日本人が嬉しいのと、アイラの関係を暴き出すのが楽しみなのと、まあ、色々だろう……。
ガブリエルに案内された場所にはパラソルが三本立っていて、その中央に、ビーチ用のテーブルも置かれていた。
『アイラっ』
そこでお喋りをしていた二人の女性が立ち上がって、アイラに駆けてくる。
『ジェンっ、ミシェル!』
きゃあぁ、と女性達は賑やかに、そして、仲良さそうに抱き合っていく。
あっ……、もしかして、女の子達の集まりだったのかな? ――と龍之介にしては珍しく、その場の光景を見て、その点に気が付いていたようだった。
『リューチャン』
『レン』
二人が嬉しそうに寄って来て、龍之介と廉にハグをする。
「あ、あの……えーと、初めまして……」
じゃないよな。
一応、パーティーで紹介された気がするが、その後は、話した機会がなかったように思えるから、一体、誰が誰なのか分からない龍之介だ。
それで、二人が交互に龍之介と廉を抱きしめていく。
まだ、ビーチにやってきて五分も経ってないのに、すでに、三人の女性からハグされてしまった……。
一番最初にこのリゾート地にやって来た時も、アイラの親戚一同からハグされてしまったが、その後はほとんどなかったので、今日の三度のハグは――ちょっとビックリである。
『ねえ、もう飲み物もスナックもあるのよ』
『みんなで、晩御飯までカードゲームでもしようか、っていう話だったのよ』
にこやかで、賑やかな二人の女性に促され、ビーチチェアに腰を下ろす。
「こっちはガブリエルの妹で、ジェネヴィーヴ。そして、その下の妹の、ミシェルよ」
「はあ……。それは、よろしくお願いします」
三姉妹だ。
そして、顔つきはそれぞれに違うが、美形三姉妹……。
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