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やっぱりやらねば  作者: Anastasia
Part2-マレーシア編
123/215

その12-03

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『あんた、やっぱり英語喋れたんだな』


 廉が少しだけ双子に向く。


 じーっと、双子の両方が廉を見ていた。


『道理で、あんたの反応がリュウチャンとは違うと思ったぜ』

『英語喋る奴らを前におどおどしてないしさ。いつも淡々と動揺もしてない』


『ああ、これはいつものことよ。表情筋がなかなか動かないんだもん、レンは』

『ひどいな』


『それに、大したことで動じないし、驚きもしないし、あまりに淡々とし過ぎるのを地で行く男なのよ』

『ひどいな』


 毎回、あまりの言われ様だ。


 だが、アイラのせいでなのか、廉のせいでなのか、勝手に話が逸らされてしまい、双子が皮肉気に口を曲げてみせる。


『まあ、カイリ達には言わない方がいいだろうな』

『英語の分からない日本人、って気取ってた振りした方が無事だろうしな』

『振りはしていないよ』


 廉は、一度として、英語を話せないと口にした覚えはない。

 ただ、英語を話せるとも、話していないだけだ。


 廉の屁理屈に、双子を口元を歪めている。


『それにしても、淡々としてる見かけに反して、あんた、随分、好戦的だな』

『煽ってどうするんだよ。こんな場所で揉め事起こす気だったのか?』

『いや。あっちのガードマンが警戒していたから、揉め事になったら、すぐに飛んできたことだろう』


 それで、双子が後ろの方を向いてみると、Duty Free(免税)のお店のガードマンらしき二人が、まだずっと、こちらを警戒したように伺っていたのだ。


 なるほど。廉はガードマンにあの下衆共を押さえつけさせる算段だったようである。

 淡々としている割に、好戦的で、ああいった場でも尻込みもせず、おまけに、次の作戦を簡単に立てていたなど、随分、侮れない男だ。


 まあ、一族でも()()()あのアイラの兄弟達を相手に、毎回、毎回、のらりくらりと、無言と暗黙のプレッシャーや威圧感の攻撃を交わし、(ひる)みもしない男だから、そんじょそこらの男ではできない芸当だろうが。


『ここのリゾート地、結構、観光客が落ち着いてると思ってたけど、違ったみたいだな』

『ニューイヤーだから、変なのがくるんでしょ。お正月休みの間に』


 ふーん、と双子の返事はそんなものだ。


「おおいっ。みんな、もう買い物終わったのか?」


 にこやかな笑顔を見せながら、龍之介が駆け寄って来た。


 全員の視線が龍之介に、ただ無言で向けられる。


「なんだ?」

「いや。リュウチャンよ、あんたは平和だなあ」

「そうそう。あんたは、それでいいよな」

「え? 突然、なんだよ? どうしたんだ?」


 そして、全く状況を理解していない龍之介を前に、平和を感じる全員だったのだ。


 龍之介はお土産用の雑貨や小物を買ったらしく、紙袋を手にさげてご機嫌だ。


「ねえ、お昼にはまだ早すぎるわよね。ここら辺で観光? ――なにあったっけ?」


 それですぐに、マイケルが自分の携帯で素早く何かを打ち込んで行く。


「Under Water World があるぜ」

「ああ、それね」


 確か、アイラがランカヴィ・アイランドの観光をチェックしていた時に、見たような記憶があった。

 でも~、普通の水族館だったような? 時間つぶし程度にはなるだろうけど。


「それって水に関係あるやつか?」

「水族館」

「ああ、そうなんだ。近いならそっちに行ってもいいぜ」

「普通っぽく見えたわ」


 だから、今はそれほど興味が沸かない施設だ。


「俺はそれでもいいけどな」


 マレーシアに来て水族館に行った、と新たな話題ができる。普通っぽくても、外国の水族館だ。


「それでもいいけど――あとランカヴィでしていないメインの観光って、Dataran Lang よねえ。写真撮るだけの場所だけど。それこそ、観光スポット! 感じじゃない?」

「ダタラン? なんとかって、何だ?」


「Eagle Square よ。大きなワシが飾ってあるの。観光スポットで写真撮るなら、有名でしょうねえ」

「へえ。それもいいな」


「でも、ここからちょっと遠いのよね。それで、わざわざあっちまで回りたくないから、今までは行ってなかったんだけど」

「どのくらいだ?」

「ミック?」


 さっきの携帯でサーチをすでに上げていたので、仕方なく、またミックが確認する。


「車で40分くらい」

「そうなんだ。少し距離があるけど、大したことないぜ」


 その程度の移動は、結構、東京でも頻繁だった。

 札幌に移動してからは地下鉄が早いので、遠出以外は、そこまで時間をかけることはなくなったが。


「でも、まあ、行き帰りで1時間ちょっとなら、またこっちに戻って来た辺りでランチになりそうね」

「その場所に行ったら、お店とかないのか?」


「また違うDuty Free のお店があったはずよ」

「いや、免税店は、もういいかな」


「でも、あんまり目立ったレストランとかなかったような気がするわ。ランチ食べるなら、ここら辺の方が探しやすいわよ」

「そうなんだ」


 ふーん、と頭の中でドライブにかかる時間を計算し、写真だけでも観光スポットかあ?


「俺は行ってみたいかな? 廉もマイケルもウィリアムもどうする? 遠いからやめて、水族館にするか?」

「することはないから、どっちでもいいけどね」

「俺もついてくだけだから」

「そうそう」


 あんまり両方に固執していないような残りの三人だ。


 それで、アイラが勝手に決めてしまう。


「よしっ。やっぱり、観光スポットだから写真だけ撮って帰ろう。全員写真も撮りましょうよ」

「いいぜ」


「それなら、さっきのシャトル型のタクシー掴まえないとね」

「電話した方が早いだろ」

「じゃあ、して」


 それで、またもマイケルが予約役だ。


 まあ、この中で携帯でのサーチが一番早いのはマイケルだ。

 それで、予約係もマイケルになってしまう。


 少し待ち時間があったが、白いバンがやってきた。今日は5人なので、ホテルから出る時もシャトル型とアイラは言っていたバンだ。


 40分程のドライブは暇なので、アイラは今まで撮った写真を見せびらかす。


 結構、龍之介が知らない写真もあって、龍之介もアイラの携帯を覗いて楽しんでいる。


 後ろに座った双子は、椅子越しからお行儀悪く、アイラの携帯を覗き込んでいた。


 それで、やはり、廉は一番前の助手席だ。こうなると、大抵、廉がタクシー代を払わされる羽目になる。


「いいじゃない。年末だもん。そのくらい」


 年末じゃない時も、廉はアイラにいつもタカられている。


 龍之介は、大抵、廉に悪くて、半分出すぜ……と言ってくれるが、廉はそこまで気にしているわけではない。

 ただ、アイラが毎回タカって来るので、アイラに(だけは)文句をこぼすことを忘れないようにしているだけだ。


 それに、元々、廉が本気で嫌がっているのなら、アイラだって無理に押し付けて来ないことは知っている。

 だから、廉がアイラに(だけは)文句を言おうが、廉が本気で嫌がっていたり、怒っていないことを知っているアイラだけに、結局、また機会がある度に廉にタカってるのだった。



読んでいただきありがとうございました。

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Twitter: @pratvurst (aka Anastasia)

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