その12-02
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タクシーに乗って、街の中を通り過ぎ、ショッピングモールにやって来ていた。
結構、普通のデパートっぽく見える建物で、ここでも、一応、そんなお店があるんだなあ、と龍之介は感心する。
賑わった通りにはモダン的な建物のお店もあるが、それと同時に、隙間もなくコンクリートの二階建てが立ち並んだローカルっぽい建築物のお店もよく目にしていたから、近代的なデパートを見て、ちょっと感心してしまったのだ。
「龍ちゃん、昨日もここら辺来たでしょう?」
「え? 昨日は、ランカヴィのナイト・マーケットだろう?」
「すぐここの近くよ。大通りを真っすぐ行って、曲がった場所よ。5分くらい歩けば着くんじゃない」
それは知らなかった。
少し薄暗くなってから、タクシーでナイト・マーケットの通りで下ろしてもらったから、このショッピングモールは知らなかったのだ。
昨日は、ランカヴィで有名な木曜日だけにあるナイト・マーケットに行った。
ローカルフードの屋台がたくさん出るわよ~、とアイラに説明されていただけに、全員がお腹を空かせて夕食を食べなかったのだ。
やはり、島一番のナイト・マーケットは有名なだけに、アイラの親戚全員も参加していた。
それに、きっと、この島に観光に来ている観光客も全員だったことだろう。
ナイト・マーケットは賑わっていて、狭い通りも行列でごった返していたほどだ。
所狭しと並んでいるテント型の屋台からは、たくさんの電球がぶら下がっていて、暗くなり始めて、当たりは煌々と照らされた灯りで明るいものだった。
長いサテイもたくさんあって、片っ端から、アイラと龍之介は買い食いをしたものだ。
日本のござ――ではないが、カーペットが敷かれた場所で、座って休める場所もあった。
一応、記念として、正座した場面を写真に撮ってもらった。
揚げ物もたくさん食べたし、パンで包んだようなものをあった。色々、アイラが説明してくれたが、その名前はすでに忘れてしまった龍之介だ。
やはり、観光客用に、Tシャツなどもたくさん売っていて、龍之介はカラフルで面白そうなTシャツを二枚買った。
Temoyong Night Market は面白かった。お腹も一杯になった~。
「まだ時間も早いから、買い物し終えたら、ここら辺でランチでも取らない? ここら辺なら、レストランとか多いしね」
「そっか。俺はそれでいいぜ」
「龍ちゃん、あっちの方、お土産用のコーナーあるみたいよ」
「そうなのか? じゃあ、俺はそっちの方色々見てみるな」
「私は付き添わな~い」
「いやいや、それくらいは大丈夫だって」
英語がそれほど喋れなくても、Duty Free のお店だし、店員だって親切にしてくれることだろう。
いざとなれば、グーグル・トランスレートに頼ればいい。
「私はコスメの方にでも行ってるわ」
それで、龍之介はアイラ達と別行動。
双子達もふらりとどこかに行くようで、廉はただそこら辺を見て回るらしい。
『ねえねえ、そこの可愛いお嬢さん』
香水の棚を眺めていたアイラの後ろで、明らかにマレーシア人ではない外人の観光客らしき男が三人寄って来た。
『ねえねえ、お嬢さん、可愛いねえ。旅行? お正月だもんね』
『俺達もさ、なにかいいモノないか、買い物なんだよね』
『そうなんだ。お嬢さんさ、欲しいものあるなら買ってあげるよ』
アイラは三人の男達を相手もせず、完全に無視をする。
それで見向きもしないで、香水の棚を眺めている。
『ねえねえ、お嬢さんさ、どこから来たの? 暇なら、今日、一緒に年末パーティーに参加しない~?』
しつこい男達だ。
アイラはリゾート地だから、肩を出したり、短めのサマ―ドレスを着たりしているが、マレーシアは基本イスラム教を基本とする国だ。
ヒンドゥ教も結構いるが、イスラム教が独占している国家でもある。
だから、外国人や観光客だからと言って、肩だしや、派手に体の線を見せるような洋服は好まれない。
それで罰せられることはないが、ローカルの女性とかは、“はしたない女”だと見られることが多い。
だから、マレーシア本土でなら、服装も少し落ち着いたものや、Tシャツを着たりして、裸を見せつけてる、などと見られないような洋服を着るかもしれないが、リゾート地はそこら辺の規律がそこまで厳しくはない。
さすがに、ヨーロッパなどからリゾート地目当ての観光客なども多くやってくるので、服装を制限するような言動や行動は観光業に痛手を下す。
それで、アイラは綿一枚のキャミソール型のサマ―ドレスを着ている。
たぶん、普通の女の子が着たら、ストンと落ちた綿のドレスがシンプルで可愛いな、と見られるのだろうが、アイラはそうではない。
その容姿からして、超絶美人で、スタイル抜群だ。
だから、シンプルな綿のサマ―ドレスだろうと、細身なのに女らしい柔らかな曲線が布地にしっとりと馴染んで、体の稜線がきれいに映し出されている。
モデル並みのスタイルに、容姿が揃い、背の高いアイラが歩くだけで通りの注目を一手に集めてしまうほどの美貌である。
3人の男達の視線が嫌らしそうに、アイラのドレス越しの身体を凝視しながら、その口元に下品な笑みが上がっていく。
『なあ、これから一緒に遊びにいかないか? 買い物だって買ってあげるぜ。なんでも好きなの』
『そうそう。俺達、貿易してるから、金持ちなんだぜ』
『香水も宝石も買ってあげるよ。俺達と楽しいことしない?』
ああ、なるほど、とアイラもすぐにこの男達が何なのか理解していた。
差別するわけではないが、よく、西洋人の男達は、東南アジアに女・子供を買いにくる奴らがいる。
お金があるんだからいいだろ、なんて道徳観念も皆無、ただ弱い立場の女・子供を侍らせ喜んでいるバカ男達だ。
タイでは、まだ10~14歳の少年・少女が白人の男達に買われていることはよくあることだ。
貧困の村から出て来た子供は、出稼ぎと一緒に、都会で食い扶持を探さなけならない。
だから、お金を投げてくる白人の男に組して、それで、男達がステイしている間、男達の云わば“セックス奴隷”だ。
それで、まだ子供の少年・少女を3人も4人も侍らせ、あたかも自分が偉くなったキングであるかのような下衆がいる。
タイではそれが結構公で行われているが、マレーシアはそこまでひどくなかったはずだ。
ただ、無知な白人の男達にとっては、タイだろうと、マレーシアだろうと、違う東南アジアの国だろうと、大した違いはないのだ。
ここはリゾート地だ。
どうせ、リゾート地の雰囲気に呑まれ、気が軽くなった女達と乱交でもしようと考えているのだろう。
『ねえ、そんなに冷たくしなくても、楽しませてあげるからさあ』
一人の男が気安くアイラの肩を抱いてきた。
アイラの眉間が揺れ、その凍り付いたような冷たい瞳が男を睨め付ける。
パチンッ――
手加減もせず、アイラが男の腕を叩き落としていた。
『汚い手で触るんじゃないわよ』
『いっ――! いてっ。なにするんだよっ』
『何か用?』
グイッと、アイラの腰がいきなり引っ張られて、気が付いたら、アイラは廉の腕の中に抱かれれていた。
『何の用?』
『何の用? ――って、お前には別に関係ないだろ。そこの生意気な女に用があるだけだ』
『嫌がる女性に手を出す方が間違ってるだろ。品性がないな』
かっ、と男の目が吊り上がった。
『なんだとっ――! クソガキがっ――』
『クソガキ呼ばわりされる謂れはないな。恥ずかしい行動している奴には、特にね』
『貴様っ――』
『おい、やめろよっ。問題起こすなよ』
咄嗟に、隣にいた男が止めに入ったようだが、顔を赤らませた男はそれで許す気はないようだ。
『うるせーよっ。どうせ、この女だって、男と寝ること目的でここに来てるんだろ? 今更、いい子ぶるなよ』
『下衆の基準で話すなよ』
『――ぅおわっ――!』
突然、男が前のめりに膝をつく。
『てめーら。こんな店で騒ぎを起こして、警察に突き出されたいのか?』
『そうそう。くだらねーことしてんじゃねーよ』
双子が男達のすぐ真後ろに立っていて、どうやら、ウィリアムが男の膝裏をド突いたようだった。
マイケルが自分の携帯を上げ、そこに写っているビデオをわざわざと見せつけるようにした。
『てめーらの顔は記録してるぜ。ここで悪さしてみろ。すぐに、SNSを世界中に飛ばして、てめーらの悪さを暴露するからな。外歩けなくなってもいいのかよ』
『そんなことしてないだろっ』
3番目の男が膝をついてしまった偉そうな男の肩を押さえているようで、真ん中の男が苦虫を潰したような顔をして吐き出す。
『だったら、失せろよ』
『俺達の前に顔を出すんなら、覚えておけよ。俺ら、はっきり言って、一撃で瞬殺できそうな強面の兄貴分がいてな』
『そうそう。あいつらに告げ口してやってもいいんだぜ』
『可愛い妹分が下衆共に襲われた、ってな』
『お前ら、暗闇で殴り殺されるぜ』
そして、双子はあまりに物騒なことを、さらっと、態度も変えず、むしろ、その光景を楽しんでいるかのように皮肉気に言い捨てる。
ちっ、と男が舌を鳴らす。
『別に悪さなんてしてないだろ。――いくぜ、ほら』
それで、まだいきり立って噛みついてきそうな男を無理矢理押し返し、不貞腐れたままその場を立ち去っていく。
『くだらない男達ね』
『下衆だろ』
『下衆だな』
三人共、侮蔑も露わな眼差しを投げて、さっきの男達がこの場をちゃんと去っていったのを確かめる。
スッと、廉の腕が離れて行った。
その際に、一瞬だけ、サッと――アイラの肩をその手が払っていったのだ。まるで、さっきの下衆が残した手垢でもこすり落とすかのような態度で。
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