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やっぱりやらねば  作者: Anastasia
Part2-マレーシア編
121/215

その12-01

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 今日も、子供達は朝寝坊をきっちり済ませて、朝食の時間が終わる前に、レストランに直行。


「今日で最後よ。年末。信じられないわね」


 朝から食欲旺盛のアイラは、モグモグ、モグモグ、と忙しなく大盛りの食事を平らげている。


「ホントだよなあ。もう、年末なんだあ。アッと言う間だったな」


 そう言えばと、廉も思い出す。


「今年も、年末・年始は龍ちゃんとアイラと一緒だな」

「そうだな。去年も今年も旅行三昧だもんな」

「でも、ニュージーの年末・年始なんて、退屈なことこの上ないじゃない」


 アイラの文句は、同情しないでもない。


「いや、それは……」


 年末パーティーなどは、ウォーターフロントなどで催され、新年には花火を上がっていた。


 それでも、飲み屋のバーばかり開いていて、正月は一斉にお店が閉まる。

 開いているお店など、ほとんどないに等しい。


 だから、最高に天気のいい夏を満喫していたのに、お正月は特にすることもなく、のんびりと過ごした記憶がある。


 観光業だって、お正月は公休となってお休みしているお店も、アトラクションもそうだ。


 まあ、一般の人は、家族や友達などが集まって、昼過ぎからバーベキューでのんびり飲んで食べて、そういった時間を満喫するらしい。


 アイラは友達はたくさんいても、だからと言って、彼らの家族パーティーに参加する気もない。

 龍之介と廉が遊びに来ていて、ニュージーランドツアーの真っ最中だった三人は、モーテルで時間を潰し、暇なので外の散歩を楽しむより他はなかった。


 あれも、今思い返せば、いい正月の思い出になったものだ。


 日本にいたら、きっと、初詣だ、新年セールだ、などと忙しいことばかりで、音もなく、パーティーもなく、人混みや混雑もなく、ただのんびり時間が過ぎていく一日なんて、滅多に経験できなかったことだろうか。


「今日、なにか予定あるのか?」

「今日は、年末パーティーでバーべーキューよ」

「そうなんだ」


「だから、昼過ぎから、のんびり、ドリンクとスナックでブラブラするんじゃない? それで、夕食も早くなるわね。それからは、また年末最後のカウントダウンまで、飲みまくってのんびり~、だわ」


「そうなんだ。俺はそんなに飲めないんだけどな」

「そこまで飲む必要ないわよ」


 廉はもう自分の食事を終え、コーヒーを飲んでゆったりとしている。


「バーべーキューって、ホテル側がしてくれるやつ?」

「半分はね。お肉とか野菜とか、そういったのはホテルで用意してくれるんだって。まあ、うちらの場合、大量の食材が必要だから、ホテルが用意してくれるんなら越したことはないわよね。それからバーベキュー用のグリルとか」


 へえ、マレーシア風のバーべーキューってどんなんだろう、と龍之介もその光景を想像して、面白くなってくる。


「他のスナックとか、つまみとか、あとはお酒はそれぞれ自前よ。たぶん、割り当てされてるはずだから」

「割り当て? なんの割り当て?」


「買い出し係よ」

「それ、ってすごい数じゃないのか?」

「そうね」


 なにしろ、アイラの一族全員をいれてもものすごい数だ。


 その上、親戚のまた親戚だったり、親しい友人だったり、60人近くもいるのだ。


「ああ、でも、うちは若い男組がたくさんいるから、全然、問題ないわよ」


 その発言に、龍之介と廉はちょっと考えてみる。


 そうなると、まだ若い――きっと独身組の男性陣は、今日は買い出しに飛ばされる、ということなのだろう。

 ものすごい人数分のドリンクだから、ジュース一つだって、箱ごと買わなければならないだろうし、独身、それもほとんどが成人しているのだから、お酒など、かなりの量が消費されるのではないだろうか。


「もしかして、俺達も買い出しか?」

「それはないわよ。龍ちゃんとレンはラッキーなことに、ゲスト、って扱われてるからねん」


 だから、一緒にいる、アイラも買い出しには飛ばされないし、バーベキューの下準備にも取り掛かる必要はない。


 アイラ一人いなくても、張り切って準備や手伝いを仕切ってくれる女性陣だって、たくさんいるから全く問題ない。


「それ――旅行の費用代に含まれていないだろう? パーティーがあるのなら、少し払った方がいい?」

「あっ、そっか。それなら、俺も出すぜ」

「ああ、そんなのいらないわよ」


「いらないのか? でも、すごい人数だろう?」

「そうね。でも、男組でワリカンするんだろうから、心配する必要ないわよ。リゾート地にやって来て、ほとんど出費してないんだから、その程度の出費なんて大したことないじゃない」


「そう、かなあ? でも、すごい人数だからなあ」

「独身の男なんて、食事や遊び、お酒程度でしか使う場所がないじゃない。仕事で忙しいんだし」


「そう、かもしれないけど。だったら、独身――って、ほとんど全員、独身じゃないか。確か、靖樹さんのお兄さんだけが既婚者だったような?」


「そうね。ショウが一族の孫の中では一番初めに結婚して子供がいるわね。だから、残りは全員独身貴族なんだから、心配することないのよ」

「そう、かあ」


 いや、年末パーティーなら、龍之介も廉もエクストラの出費くらいは払っても構わないのだが。


「よう、リュウチャン」

「よう」


 もう三人の食事が終わり、そろそろ引き上げようとしていた場所に、双子がやってきた。


「よう。お早う」

「今日、何するんだ?」

「まさか、また海に浸かってるのか?」

「いや、今日は――まだ決めてないんだ」


 それに、まだ、年末パーティーの買い出しの話をしていたくらいで。


「そう言えば、マイケルとウィリアムは買い出しに行かないのか?」


 日本語発音で、おまけに、ニックネームではなくフルで名前を呼ばれて、二人の口元が笑いかけて上がっている。


 発音が全く違っている。


「俺らは買い出し組じゃないぜ」

「そうそう」

「そうなんだ」


 双子も独身ではあるが、まだ学生だから免除されたんだな、なんて龍之介が考えていると、アイラが呆れたような顔をする。


「なによ、ずるいわね」

「そんなことないぜ」

「ゲストのおもてなし、だろうが」

「そんな言い訳使うなんて、卑怯ねえ。よく叔母さんも許したこと」


 うん?


 アイラの会話を聞いて、龍之介が首を傾げた。


 ああ、なるほど、と廉はすぐに理解したらしい。


「なんだ、廉?」

「要は、俺達を名目に、買い出しをサボる言い訳に使われたようだ」

「使ってないぜ」

「そうそう。事実だろ」


 全く反省する気配もない双子だ。


「え? 俺達がいるから、買い出ししなくて良くなった、って言ってるのか? 俺達の世話するから? ゲストだからか?」


 龍之介は、出会った時から、質問が出てくるとバズーカー並みの勢いで、質問が羅列される。


 双子が呆れ交じりに、口元を更に上げていく。


「ゲスト、だろう?」

「そうそう。ちゃーんと、世話しないと失礼だろう?」

「ええ? そうかなあ」


 龍之介は双子と同い年だから、一緒に遊ぶと話が盛り上がって楽しいし、この休暇だけで会っていられるから、それは嬉しいものではあるのだが。


 買い出しの仕事があるなら、龍之介だって邪魔はしないのに。


「ご飯食べた後は暇だから、ショッピングモールでも行く?」

「ショッピングモールなんてあるんだな」


「そうね。それから、Duty Free のお店もあるわよ」

「あるのか?」


 へえ、と感心をみせる龍之介だ。


「アイラは買い物するのか? ジューティー・フリー(免税店)の店だもんな」

「それは、クアラルンパでもできるし、空港でもできるから、特別ここでは買わないわね」


「そうなのか?」

「荷物になるもんね。まだまだ休暇は続くじゃない。でも、龍ちゃんは買い物すれば? スーツケースなんて空じゃない」


 龍之介のスーツケースなど、着替えと水着、仕方なくスーツと革靴。後は洗面道具くらいだ。

 冬服は一着だけで、日本の空港に着いたら着替えるだけのやつだ。


 それで、今の所、スーツケースは結構空のままだ。


 面白そうなお土産でもたくさん買って帰ろう! との意気込みで。


「じゃあ、ちょっと見てこようかな。みんなも行くなら、他の場所の方がいいか」

「どこでもいいぜ。年末だしな」

「そうそう」


 文句がないようなので、今日は暇な時間の間、ちょっと免税店も覗いてみよう。




読んでいただきありがとうございました。

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