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やっぱりやらねば  作者: Anastasia
Part2-マレーシア編
116/215

その11-03

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『そうですね』


 そして、廉の返答はあまりに簡潔で、簡単だ。

 だが、それ以上の深い説明はない。


『そうなんだ。――それは、すごいね』


 にこにこと、優しそうな微笑みを浮かべているアイラの叔父だったが、今、何かの言葉を呑み込んだように見えてのは、きっと気のせいではないだろう。


 だから、廉もそれ以上深くは質問しない。


 きっと、廉が英語が喋れることで――更に降りかかるであろう()()が予想されて、アイラの叔父も言葉を呑み込んだに違いない。


 災難……。


 もう、この休暇中、ものすごい暗黙のプレッシャーと威圧感をビシバシと廉だけに向かって投げてくる、あの兄弟……。


 廉はあの兄弟を相手にはしていなくても、必ず、どこかで、アイラと一緒にいる廉は監視されまくり。ほんの些細な行動だって、鷹の目のように、しっかりと監視されている状態なのは、廉だって気が付いている。


 極力無視しても、必ず、視界の端にはあの兄弟の存在や影が見え隠れしているのだ。

 そんな廉の気苦労を知っていながら、全く手を貸さない。止めもしない(薄情な)アイラだ。


『エリザベス叔母さん~、一緒に写真撮ろうよ。もうすぐ着いちゃうから』

『あら~、いいわね』


 ものすごく若くく見える叔母は嬉しそうに上品な微笑を投げる。


『じゃあ、ヨシヒトに撮ってもらいましょう。3人でね? その後は、ヨシヒトと交代してあげるわ』

『いいよ』

『じゃあ、叔父さん、私の携帯でね』


 アイラは自分の携帯電話を叔父に手渡すと、叔母の方は廉の腕にそっと触れて、

『さあ、もう少し近寄って?』


 などなどと、しっかり、廉の腕を引っ張ってアイラにピッタリ寄せさせている。


 それで、一応、邪魔にならない程度に、叔母も一緒に混ざって、パシャリ!


 うふふふふ、とアイラの叔母はなんだかとてもご機嫌だ。


『じゃあ、ヨシヒトの分もね』

『ああ、ありがとう』


 それで、叔母と叔父がポジションを譲り合う。


 三人揃って、またパシャリ!


 アイラの一族では――一族内の女性陣の間では、今回の休暇は特別となった。なぜなら、今回は予定にない――アイラの()()が揃ってやってきたからだ。


 若い時からさっさと自立して家を離れてしまったアイラとは全く会う機会がない。


 それで、クリスマスなどにも帰省してくるのかと思いきや、ここ数年、毎年、クリスマス近くはニュージーランドが真夏ということもあり、夏の長期休暇があるから、アイラの友達と遊びまくっているという話だけは上がる。


 だから、こうやってアイラに会うのも久しぶりだし、可愛い姪のアイラの周囲で男の子――それも同年代の青年がいるなんて、初めてのことだ。

 アイラの母は廉がやってきて、ものすごい大喜びしている。「やっとボーイフレンド紹介してくれるのね」、なんて自慢していたくらいだ。


 一つ付け加えておくが、アイラと廉は全くそんな関係ではない。


 はっきり言って、恋愛感情どころか、恋愛に結びつくような甘酸っぱい雰囲気も上がらなければ、二人揃って恋愛事の色気もない。


 でも、アイラの一族の女性陣は、あの手強くて、手に負えないアイラの兄弟達の行動をあまりに知り過ぎている。

 だから、今回の休暇でも、あの二人の兄弟があまりに行き過ぎないように、陰でちゃーんと見守っているのだ。


 せめて、可愛い姪には楽しい恋愛ごとでもしてもらいたい!


 いやいや。

 アイラは遊びことに夢中で、一族の女性陣の懇願やら希望やら(ちゃんと全部知っているくせに)一切目もくれていない。


 それでも、今回はグライドが一緒で、これからパイ・ブリッジの散歩だって一緒だから、そのまま昼食だって一緒に参加させてもらうつもりだ。


 なにしろ、アイラは自分の友達と遊ぶことに夢中で、ほとんど親戚との会話を済ませていない。


 アイラの叔母だって、まだまだ(山のように)、聞きたいことはたくさんあるのだ。


 うふふふふふ。


 なんて、上品そうで、優し気な微笑を浮かべている叔母なのに、しっかりと、その辺は抜かりないのがアイラの一族である。


 グライドから降りて外に出ていくと、三角形のプラットフォームがある。

 そこから海側の全景が見渡せて、近隣の小島がたくさん目にすることができた。


 今日は晴天だから、かなり遠くまでも見渡すことができる。


「アイラ、廉、お待たせ」


 龍之介も徒歩から混ざって、さあ、パイ・ブリッジへ。


 幅は3人程が通れるくらいの広さで、今いるプラットフォームから向こうのプラットフォームには、真ん中にある地上から伸びた大きな主軸に吊られている吊り橋だ。

 風もなく、揺れることはなかったが、周囲の森を崩さずに、よくあんな長くて大きな鉄の主軸を建てられたんだなぁ、って感心してしまう。


 全員がのんびりと、ゆっくりと、パイ・ブリッジを歩いていく。


「ああぁ、やっぱり、高いなぁ! 山の上を歩いているよっ!!」

「真ん中くらいに来たら、いいわね。空に浮かんでるみたいじゃない」

「そうそうっ」


 三人は吊り橋から真下を覗いて見る。


「森林ばっかりね。せっかくの高さなのに」

「でも、こんな高さで吊り上げてるなんて、すごいなぁ。どうやって建築したんだろう?」

「下の場所があんまり削られてないみたいだから、機材を運ぶだけでも大変だったことだろうに」


 ふーむ、と三人揃って感心している。


「あそこのガラス窓、空くまで待ってたら時間がかかるかもね」


 真ん中よりには、そんなに大きくはないガラス窓が床にある。そのまま真下を覗き込めるようになっているものだ。

 やはり、もう頂上に上がってきていたアイラの親戚や他の観光客などが、ちょっと行列を作って、次の順番を待っている。


「戻って来る時に空いてたらいいけど、そうじゃないなら、俺は覗かなくてもいいぜ」

「まあ、東京スカイ・クリーの上から地上を覗けるから、ここでしなくても、問題じゃないわよね」


「あれ? 登ったのか?」

「当然じゃない。わざわざ日本に行ったんだから、回れる観光スポットは結構回ったわよ」


「そうだったんだ」

「バイトで忙しそうだったのにね」

「本当よ、もう。ヤスキのせいで、せっかくの休暇が台無しだったわ」


 あの時の――思い出は、あまりに鮮明に覚えている。衝撃的な出会い、でもあったから。


 でも、最後の方では、アイラも少し遊ぶ時間もできたようで良かったな、と思う。


『叔父さん、叔母さんは、ガラス窓覗くの待ってる?』

『あら、いいわよ、私達は。向こうまで歩いていきましょうよ』

『そうねん』


 のんびりと最終地まで歩いていくと、先に到着していたアイラの祖父母もそこにいた。


『Pop、Nana !』


 アイラの祖父母を見つけるとすぐに、アイラが駆け出して、二人に抱きついていく。


 二人も嬉しそうにアイラを抱きしめ返す。


「アイラの家族って、みんな、ああやって、いつも抱きしめてくるよな」

「そうだね」

「外国人ってみんなそうなのかなあ」


「それは、その家庭にもよると思うよ」

「え? そうなのか?」


「そうだね。アイラの家族は、ああいった愛情表現が素直だと思う。家族や身内が、皆そうやって育ったんだろうね。だから、皆が皆に会うたびに嬉しそうで、それで、親愛を示してハグをしているから」


「そうだな。日本にいたら、絶対しないと思うけど、外国に来ているから気にならなかくなったな。でもさ、親愛を見せる方法って、なんか、いいな」

「そうだね」


 あんな風に、家族や身内や親せきが揃って、皆嬉しそうにハグを交わし、そういった「大好きだ」とか「会えて嬉しい」という素直な気持ちが行動と一緒になって表れている。


 日本にいたら、恥ずかしいのに、なんて後ろ指さされそうなものだけど、親愛表現は恥ずかしいことでなんでもないはずだ。


 だから、それをとても自然にできているアイラの家族や親戚を見ていると、ほっこりと、気持ちが温かくなるな。



読んでいただきありがとうございました。

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