その11-02
この作品はフィクションですので、本文に出てくる企業・店名・商品名などは実在の名前ではありません。トレードマークなどでは、文字伏せなどもしてあります。
地名や料理名は一般的で商品名でなければ、そのまま使用しています。
「まずは、トップまで行って、そこで360度のパノラマ全景も一望できるらしいから、色々見ながら、PieBridge にも行くわよ。PieBistro は展望台にあるから、散歩し終わったら丁度いい時間に昼じゃない?」
「そうだな」
「もしかして、レストランの予約してくれたとか?」
「ううん、予約はないけど。60人近く11時半から1時くらいにかけてゴッソリやって来るわよ、っていう話になってるらしい」
「それで、席が取れる?」
「大丈夫だって、向こうは言ったみたいなの。別に、1~2時間、60人分くらい予約して空席でもいいじゃない。ねえ?」
「そうだね。でも、向こうが大丈夫と言うのなら、席は空いているんだろうし」
「俺は、少し遅くなってから、下に降りて来てからでもいいんだぞ。さっき、ケブンキレブンあったの見たもんな。リゾート地でケブンキレブン。はは。もしかして、純日本食あるのかな?」
「それは、ないと思うわよ。似たようなのはあるかもしれなけど。でも、ここまで来て、ケブンキレブンなんて味気ないじゃない。いつでも行けるくせに」
「そうだけどさ。でも、外国に来てもケブンキレブン行けるなんて、面白いだろ?」
「日本にいる時だけでいいのよ。そりゃあ、便利で、コンビニ無しじゃ生きていけなくなるけどね」
なにしろ、ニュージーランドなど、24時間のコンビニなどありはしない。24時間で空いているお店も、極たまにあるが、滅多にない。
日本にいる時は、アイラだって、コンビニに入り浸りだったのは、あまり知られていない。コンビニを通り過ぎる度に、必ず、何か一つは買い食いしていたのである。
「結構、緑に囲まれた島だったんだなぁ」
「そうみたいね。ジャングル並みの森林って書いてあるから、山の中の森林浴もあるみたいね」
「それも楽しそうだな」
「ええ? 私は別にいいわよ。自然と一緒になって、なんてやらなくても、全然困らないもん」
「俺は好きだけどなあ。北海道でも、結構、ドライブで色々な場所行ったんだぜ」
「それは楽しそうだけど、ニュージーだって自然があり過ぎるじゃない。どこでも、Bush ウォークだし」
「ああ、そうだったな。そっか、自然が身近にあるから、慣れたら、新鮮味はちょっと薄れるかもな」
パイ・キャブのゴンドラを下りると、展望台に続く通路がある。
「展望台は、帰ってくる時に登りましょうよ」
「ああ、そうだったな。まず、パイ・ブリッジな」
「そうそう」
それで、ミドル・ステーションから次のパイ・キャブに乗り込む。
「なんか、緑で囲まれてあんまり高さ感じないけど、下を覗いたら、段々、標高が高くなってくるよな」
「ほら、龍ちゃん? 写真撮るわよ」
「おお、オッケー」
龍之介が少し背伸びして廉に合わせるようにポーズを取る。
「そんなことしなくてもいいじゃない」
「いいじゃんか。アイラも撮ってやるぞ」
「撮って撮って」
携帯を渡すと、アイラは廉の隣に並ぶ。
「後ろの森と、向こうの――海も入るな」
「あら、そう。それはいいわね」
「なあ、ご飯食べてから、地上に降りるんだろ?」
「そうね」
「やっぱりさ、3Dアート行こうぜ」
「面白い写真撮れそうだもんね」
「そうそう。自慢できるぜぃ」
パンフレットに乗っている3Dアートで面白おかしく自画撮りを決めて写真を取れば、面白い思い出になるはずだ。
今の所、アイラと龍之介のお目当ては、VRユニバーサル!
ヴァーチャルリアリティでゲームが存分に楽しめる。龍之介はまだ、VRをつけてっゲームをしたことがないから、今からでも楽しみだ
双子だって、VRの場所で対抗試合しようぜ、と龍之介と約束をしている。
オリエンタル・ヴィレッジとか、ペットランドとかは、散歩なんかしててもつまらないわよ、というアイラの意向で、今回は参加しない。
ペットランドにはちょっと興味があったが、
「毎回、毎回、牛やら、馬やら、家畜もゴソッと触って、おまけに、毎日動物に触れてるくせに、なんでマレーシアに来てまで同じことするのよ」
と指摘されてしまった。
動物好きな龍之介は、場所も国も関係なく、動物にはすぐ目が行ってしまうのだ。
午後からは、VRゲームで熱戦して、3Dアートで写真の撮りまくり。時間があったら、6Dシネマも行くかもしれないなあ。
ビデオで見る限りじゃ、日本でもああいったアトラクションはありそうだから、一応、最後のリストには加えているけど、空き時間次第。
トップ・ステーションに到着すると、島の全景が見渡せる。
「おおぉっ! 地図で見た島は小さかったけど、でも、おっきく見えるぜ」
「龍ちゃん、あっちの出口からパイ・ブリッジにいく通路に出るわよ」
「おっ、そうなのか? 真っすぐ行けばいいのかな」
「そうよ。パイ・ブリッジのプラットフォームまでただ歩いていけばいいのよ。迷うことなんてないから」
「そっか。じゃあさ、アイラの叔父さん達が来たら、俺も歩き出すな」
「今行ってもいいのよ」
「いいよ、そのくらい。叔父さん達だって、結構、俺達のすぐ後ろでゴンドラ乗ってたから、すぐに上がって来るだろ」
それを言っている間に、アイラの叔父と叔母も外に出てきていた。
「ほらな?」
『アイラっ』
アイラ達を見つけて、アイラの叔母が嬉しそうに手を振って来る。
外は暑いから、アイラの叔母はかなりツバの大きい帽子を被っている。そして、叔父も叔母の二人とも、やはりサングラスをかけていた。
今日も日差しはサンサンと輝いていて、目に眩しいほどだ。
「じゃあ、俺は行くな」
「そうね。途中で、グライドから龍ちゃん歩いているの見えるわね」
「そっか」
それで、スキップしていきそうな勢いで、龍之介は徒歩道に直行。
『アイラ、待たせちゃったかしら』
『全然よ。さあ、グライド乗りましょうよ、叔母さん』
『あら? リュウチャンは?』
『一人で徒歩なの』
『こんなに暑いのに、元気な男の子なのね』
『そうなのよぉ』
パイ・グライドに乗り込んだアイラ達は、一番真ん前の窓側に陣取っている。
そのグライド内は全員アイラの一族や、一緒にリゾート地にやって来た知り合いばかり。
でも、アイラが一番前を陣取ることができたので、残りは横の窓側だったり、後ろの窓側だったり。それぞれが、ゆっくりと動き出し、下りの坂を下りていくグライドから下の方を覗き込んでいる。
『結構、傾斜があると思ったけど、ゆっくりだからあんまり刺激がないのね』
『さすがに、このグライドがジェットコースター並だったら、子供にもお年寄りにも危険だろう』
『まあね。――あっ、龍ちゃんだ』
一人、グライドに乗らずに、10分ほどの徒歩道を歩く龍之介が、長い階段を下りて行っている。
おおおぉーいっ! とアイラ達が乗っているグライドが通り過ぎていくと、それに気づいた龍之介が、ブンブン、ブンブン、と両手を大きく振っている。
『龍ちゃんって、ホント、この暑さでも元気よねえぇ。あれだけはしゃぎ回ってるのに』
『確かに』
その点は、廉も感心してしまう。到着したその日からずっと、こんな炎天下の外で遊びまくりだ。
まだ大きく両手を振っている龍之介に、アイラも笑いながら手を振り返す。
『君は――英語が話せたんだね』
アイラと廉のすぐ隣にいる双子の両親の一人、アイラの叔父がそんなことをポツリとこぼした。
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