その10-01
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全員日焼け止めを塗ってはいても、さすがに、炎天下の真夏の日差しの下、海でのアクティビティをしたものだから、日焼け止めなどでは効き目が薄いほどに、全員いい色具合に日焼けしていた。
龍之介など、このリゾートにやって来て以来、毎日、毎日、外で遊びまくっているだけに、今では真っ黒の“黒んぼちゃん”になっているほどだ。
だが、その自分の姿を鏡でチラッと見た時に、に焼け顔がやめられない。
日本に帰ったら、寒い真冬の雪の中で、龍之介一人だけが真っ黒に日に焼けているなんて、面白い話だ。
「廉も、結構、焼けてきたよな」
「そうだね。これだけの日差しだからね。龍ちゃんは――すごい日焼けだ」
「そうなんだっ! これで、日本に帰ったら自慢できるよな」
「確かにね。そんなに焼き過ぎて、肌とか痛くなってないの?」
「いや、ないぜ。俺って、昔から日焼けしても結構大丈夫な肌なんだ」
「そうか。それは楽だね」
よくよく考えてみたら、龍之介を抜かした全員はサングラスをかけている。
廉だって帽子の下でサングラスをかけている。
アイラもそうだ。
「やっぱり、皆、サングラスかけてカッコいいよなあ」
「いや、格好の為じゃなくて、これだだけ日差しが強いと、目にも刺激が強いから。UVから守らないと、目も日焼けしまうしね」
「えっ、そうなのか?」
「そうだね。それに、俺は日本人だからそれほどでもないけど、西洋人がサングラスをかけているのは、目の色素が薄いから強い日差しを許容できない時が多いからなんだ」
「えっ? そうなのか?」
そんな話は初耳で、龍之介が廉を見上げる。
「そう。特に色の薄い目をしている人とかはね。青い瞳とか。そういう人は、光線に敏感なんだ。眩し過ぎて見えなかったり、それで頭痛の元になったりしたりする時もある」
「へえ、そうなんだ。外人がサングラスかけてるとカッコいいなあ、って思ってたけど、ちゃんと理由があったんだな」
その話を聞いて、アイラが龍之介の顔を少し覗き込んでくる。
「……なに?」
「龍ちゃんってサングラスかけてなくても平気なんでしょ?」
「俺は全然問題ないぜ」
「そうよね。一日中こんな日差しの強い中、外で遊びまくってるものね」
「アイラも眩しいのがダメなのか?」
「そうね」
「そう言えば――アイラの瞳の色って何色だっけ? あんまり気に掛けたことがなかったや」
「――明るい黒? 茶色?」
それで、その視線が廉に向けられる。
「薄茶色?――かな」
「だって」
「そうなんだ。ギデオンの瞳の色も違ってたもんな」
なるほど。
やっぱり、日本人以外の人と一緒にいると、自分の知らない知識が、ひょんなことから上がってくる。日本にいては、きっと、気づかなかったり、知りもしなかった知識や雑学だろう。
ちょっと物知りになった気分だ。
「よしっ、明日はParasailing に挑戦ね」
「あっ、それいいかもっ」
今日のウォータースポーツをかなり満喫した龍之介は、明日もアドベンチャーができて大喜びである。
ビーチで泳ぎまくるのも楽しいものだが、やはり、旅行に来ているのだから、挑戦できるものはなんでも挑戦したいものだ。
まして、旅行に来ているからこそできるアドベンチャーがあるではないか。
「明日の分はミカに値切らせればいいわね」
「美花さんに? なんでだ?」
「他のみんなにも誘うんだから、ものすごい数じゃない。だから、ミカに値切らせるのが一番ね」
「美花さんに? ――美花さんって、ねぎるの上手なのか? ――あっ、そう言えば、ここのリゾートに来るときもすごい安くなったって言う話だし、やっぱり、美花さんがねぎったから? 旅行会社に働いてるから、やっぱり、そこら辺も上手なんだな」
相変わらず、ぽんぽんと、質問と自分で納得している会話が両方である。
アイラもなんとはなしに口を上げていた。
「そうね」
「へえぇ、そうなんだ」
「さあ、一回、ホテルに戻って休憩ね。今晩は違うホテルでBaffet (バフェイまたはバフェット、ビュッヘは少々日本語英語)だもんね」
「あっ、そうだった。レストラン予約してくれたんだもんな。やったっ!」
「龍ちゃん、遊びまくるわよ。それには、食べまくんなくちゃね」
「もちろんっ」
ホテルの部屋に戻った一同は、昼間の炎天下の熱さから逃れ、エアコンの聞いた室内で、夕食まで時間を潰す。
アイラは帰ってきてすぐにシャワーを終えていた。
常夏のリゾート地にいるだけに、着替えて来たアイラは夏らしい白地のサマ―ドレスだ。艶やかな花柄の模様が夏らしく、それでいて、フワフワと足首まで届きそうなほどの長いドレスが揺れている。
「ああ、スッキリ。龍ちゃんもレンもシャワーしてきていいわよ」
「レン、俺は後でいいぜ」
「そう。じゃあ、先に入らせてもらうかな」
ウォータースポーツは満喫したが、さすがに、海の飛沫をじゃんじゃん受けて、体は潮臭い。肌も少しだけザラザラしている。
「何見てたの、龍ちゃん?」
「うん? 今夜の夕食食べる場所のホテル。メニューが載ってるみたいだけど、どんなんかなぁ、って思ってさ」
「写真を見る限りじゃ、結構いけそうよねん~」
「そうそう」
このリゾート地に来てから、毎日、おいしいホテルのご馳走をいただいている。
クリスマスパーティーの時のご馳走もおいしいものだった。
それでも、他のホテルで出されるレストランの食事にだって興味が出てくるものだ。
今夜はマレーシア料理、インド料理、中華料理が混ざって、その上、西洋料理もかなり出てくるらしい。
写真を見ただけでも、レストラン内が豪華だぁ!
どの席に通されるのか、今からでも楽しみだ。
「あら、やっと帰って来たのね」
部屋の入り口から美花が顔を出した。お洒落なサングラスをかけ、お洒落なハットを被り、お洒落なサマ―ドレスを着ている。
年上の美花はいつもお洒落な洋服を身に着けていて、きっとブランド物だろうけれど、見せびらかしているような暑苦しさがない。
元々、容姿が清楚さを思させるような大和撫子風なだけに、しとやかなお嬢様っぽいイメージがある。
アイラ曰く、その外見に騙される男が大勢いるらしいが。はは。
「あれ? どこ行ってたの?」
「暑いからホテルのラウンジで軽く一杯。あんたら、この暑い中、よく外で遊びまわってるわね」
「今日はウォータースポーツしてきたのよ」
「ウォータースポーツ?」
「そう。それで、ミカが残りのメンバー分予約してやって」
ふうん、と美花の反応はそれだけだ。
驚いている様子もなく、それだけで会話の内容を理解したんですか? と聞きたくなってしまうが、美花は困っている様子もない。
「龍ちゃんがシャワー浴び終えたら、また出かけるのよん」
「どこによ」
ふふふふふふ、となぜか不敵な笑みを浮かべていくアイラだ。
まあ、龍之介も今夜のディナーはすごい期待しているだけに、アイラの意気込み分からないではない。
「ラッツ・キーリトンのランカヴィ・リッチンってとこ、予約したのよ。Buffet(バフェイまたはバフェット。ビュッヘは日本語英語に近い)で食べ放題~!」
「あら、いいじゃない。じゃあ、私も一緒に行くわよ」
「あら、そう」
それで、二人の会話が簡単に成立しているのだ。
龍之介が少々困惑気味に、二人の会話に割って入った。
「あの……」
「なに、龍ちゃん?」
「予約したから――あのさ……、美花さんは、いいのかなって……」
美花が龍之介の心配を軽く笑う。
「あらぁ、そんなこと心配してたの、龍ちゃん。たかが一人くらい増えただけで問題になるわけないじゃない。これが10人近くも増えたら大問題だけどね。それに、偶数だとテーブル分けで座りやすくなるから問題ないわよ」
そうあっさりと言い切られると、はいそうですか……と素直に頷くより他はない。
そして、龍之介もシャワーを終え、残りのメンバーも拾って、さあ、今夜の食べ放題にレッツゴー!
読んでいただきありがとうございました。
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