その9-04
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書類も書き終わり、代金も払うと、すぐ近くのビーチにやってきていた。
お店の中にも貴重品などを預けれる場所があるそうなのだが、7人揃ってアクティビティをするので、一人のインストラクターだけではなく、もう一人の付き添いもついてくるらしく、その人が預かってくれるというので、全員はビーチに直行。
さすがに、午後からだと日差しがきつく、肌をピリピリと突き刺すような強さに、暑さ。
そして、気温だけではなく、午前中から温まった空気も上昇して、青く広がるビーチの上をゆらゆらと空気が揺れているようだった。
「あれ? アイラの水着、違うんだな。なんでだ?」
それぞれに、Tシャツなどを脱ぎ始め出した中で、横にいるアイラのビキニが、水色のフリルがついているやつではなくて、龍之介がその不思議を素直に口にした。
「なんで?」
「え? なにが? ――なんで?」
自分の質問をそのままに返されて、龍之介もポカンとしたまま、また同じことを聞き返す。
「なんで? 水着が違うなんて当然じゃない」
「え……、でも、なんで? もしかして、わざわざ、新しいのを買ったのか? 前のを洗えば済むだけじゃん。すんごい暑いから、即行で乾くしさ」
「なんですって?」
ギロッと、理由も判らずアイラに睨め付けられて、理由が判らないだけに、パタパタと、瞬きしてしまうのは龍之介の方だ。
ポンと、廉が龍之介の肩を叩いていた。
「龍ちゃん、女性の買い物に関しては、口を挟まない方が賢明だ」
「え? なんでだ?」
「いや、いいから」
「え? でも――だってなぁ……」
「龍ちゃん、こんな常夏のバカンスに来てて、水着の一つや二つもないなんて、情けなくて涙もでてこないわよ」
「え、なんでだ? ――いや、だってなぁ……。俺は一つ持ってきただけだし……」
「龍ちゃん、だから、深く指摘しない方がいい」
なんだか、龍之介を諭すのではないが、廉はただ首を振ってみせるだけだ。
どうも、納得がいく説明をもらった訳でもないのだったが、廉に諭されたのか、龍之介も、それ以上、質問を繰り返す雰囲気ではないようである。
「リュウチャンよ、女のショッピングは女に任せておけばいいんだよ」
「そうそう。下手に口だすと、後でどんな目にあわされるか判ったものじゃないぜ」
いつもは、すぐに口を挟んでくる双子までも廉に賛同である。
それで、益々、理解し難そうに、龍之介は首をかしげてしまう。
「いや…、そうかもしれないけどなぁ……――」
実は、本人が全く納得していないもので、みなに寄ってたかって言いくるめられても、そう簡単に賛同できかねないのだ。
「――こんな暑い場所だから、水着くらいすぐ乾くと思うんだけどなぁ……――」
それをこぼした龍之介に、なんだか、そこにいる男組み全員から、奇妙な視線が送られた。
「な、に?」
「リュウチャンよ、それは俺達の一族の前で口に出さない方が身の為だぜ」
「一族? ――俺達――って、アイラの親戚のことか?」
「そう」
「一族だぜ」
「一族――なのか? それも――すごいなぁ……」
確かに、ものすごい数の親戚が揃っているから、“一族”と形容されても――多少の納得はいく。
それで、龍之介もかなり素直に感心している。
「だから、親切から言ってやってるんだから、水着のことは口に出すなよ」
「いや……その――」
「おい、少年よ」
ポンっと、年もさほど変わらないであろうマイケルが、龍之介の肩を囲んできて、なんだか、見知った風な様子で龍之介に頷いてみせる。
「俺達の親切心なんだから、しっかり聞いておけよ」
「はあ……」
「リュウチャン、双子の言うことはうるさいが、女性のショッピングに、洋服に、アクセサリーに、バッグに、至るもの全て、あっちに任せておけばいい。男には全く関係ない話だから」
アイラの兄のジェイドまで親切にそれを言ってくるので、なんだか、本当にそうなのかなぁ……――と、龍之介も考えずにはいられなくなってしまう。
「まあ、深く考えんなよ」
「はあ……」
結局は、全く理由の判らないまま、そこの男性全員に言いくるめられてしまった龍之介だったのだ。
だが、あまり納得していない龍之介が知らない事実がここに一つ。
そう。
ここに揃っている男性陣は、もう、年端も行かない小さな頃から、一族内の女性陣全員に、そこら辺のマナーをしっかりと叩き込まれているのだ。
下手に口出ししようものなら、一族の女性陣全員からものすごい勢いで、文句に、お叱りに、更なるエチケットやマナーの講義がされてしまう。
それだけに、すでに幼少よりそんな(疲れる苦労)経験をしてきた男性陣は、女性のファッションに関しては絶対に口出ししない。口を挟まない。
見て見ぬふり――もできない。
ちゃんと、「ああ、とても素敵だね」と褒めなければならない状況が待ち構えているのだから。
結構、個性の強そうな男性陣が揃っているのに、一族の女性陣には勝てない男性陣でした。
全員に配られたライフジャケットを着こみ、まず、最初はクレイジー・ドルナツ。4人乗りなので、3人と4人で二回に分ける。
アイラとアイラの兄弟が一緒になり、ドルナツの上に座ってベルトを締める。
エンジンが快適にうなり、クレイジー・ドルナツを引っ張り沖に出て行った。
スピードは快適で、早さもある。でも、なんだか、振り回されても怖くはない。初心者や子供向けの乗り物かな?
そんな感想をアイラに聞いて、そっかぁ、とは一瞬ガッカリしかかった龍之介だが、それでも、意気揚々と乗り込んで行く。
15分程のライドはすぐに終わっていた。
安全圏の乗り物かな、なんて?
よしっ。
次のボナナビートに期待しよう!
さっきと同じように、アイラ達がボナナビートの上に身軽に乗り上げていく。
岸からそれを見ている龍之介達の前で、グングンと勢いを上げたボートがボナナビートを引っ張っていき、それから少し離れた沖で、ボートが一気に加速した。
「おおぉっ! 結構、引っ張ってくれるんだなぁ」
今回のボナナビートは、全員が大人であるから、ボートをを運転しているインストラクターもかなりサービスしてくれているようだ。
それで、スピードをグングンと上げていき、そのスピードのままボナナビートを左右に振り回してくれている。
遠目からでも、一番前に乗っているアイラは随分楽しそうだった。
「結構、面白かったわ」
「見てても、面白そうだったぜ」
「そうねん」
「なあ、きっと、最初っからサービスしてくれたんじゃないかな?」
「きっと、そうねん。振り回されて、面白かったわよ~」
おお、とお楽しみの時間を期待して龍之介も気分が上がっていく。
「じゃあ、いってっらっしゃい~」
ひらひらと、アイラに見送られて、龍之介や廉、それに双子が次のボナナビートに乗り込んで行く。
それで、ボートがグングンと加速し、また沖に着いていた。
スピードのままに振り回されて、水飛沫が飛び跳ね、顔を濡らし、熱い日差しの下でのウォータースポーツは気分がリフレッシュする。
「良かったぜぃ!」
元気よくボナナビートから飛び降りた龍之介は満面の笑みを浮かべ、警戒に小走りで戻って来る。
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