その9-03
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残りの青年達もアイラに付き添ってくるらしく、サンサンと照り輝く日差しの元、澄み切った青い空が目に眩しいほどの外では、日本の真冬とは考えられない常夏だ。
特に、龍之介なんか、北海道の真冬からやってきているのだ。
クリスマス前だって、かなりの大雪で雪跳ねが大変だった。
まさか、大雪警報などで飛行機がキャンセルされるだけではなく、空港まで閉鎖されませんように! ――と毎日必死で願をかけていたほどである。
全員がしーっかりと昼食を満喫すると、いざ、次の目的地へレッツゴー!
目的のお店にやってきた場所で、受付にいた良く日に焼けた男性の前にアイラがスタスタと進んで行く。
『ウォータースポーツやりたいんだけど、今日は空いてる?』
『もちろん。今すぐにでも行けるよ、お嬢さん』
『そう。このメンバー、7人でも問題ない?』
『問題ないよ。ただ、アクティビティによっては、6人までとかのもあるけど』
『それは、二回に分ければいいだけじゃない?』
『そうだね』
『この7人で全部やりたいんだけど、それなら、どんなプライスにしてくれる?』
『全部?!』
それは予想していなかったらしく、受付にいた男性が目を丸くする。
『そう。今日は、半日だから、そうねえ――ジェットスキーに、ボナナビート、クレイジー・ドルナツ、サファー・ライドってとこかしら? でも、面白かったら、明日も来るけど』
『そうだなぁ……』
目の前に、かなりの儲け話が上がってきて、受付の男性も頭の中でその儲けを計算している模様。
『それから、うちらは“一族”で来てるのよ。お正月過ぎてまで滞在してるの。豪華ホリデーにしたから』
『一族?』
『そうよぉ。今のトコ、60人近くいるんじゃない? リゾート地での~んびりはいいけど、でも、やっぱり、そろそろ退屈してくる頃だから、みんな、ウォータースポーツの一つや二つしたいんじゃないかしら?』
『へえぇ……。60人なんて、すごい大家族だねっ』
『お年寄りもいるけど、でも、60人なんて一気にやってきたら、無理かしらね?』
『60人――一気にだと……、ちょっと無理があるかなぁ……? 時間を空けたり、日にちを空ければなんとか調整できるんだけど。もし、そうなったら、いつくらいを予定で?』
『明日すぐに。うちらの場合、きっと、1日中貸し切り状態になるわね。年配組は、きっと、ボートツアーなんて参加するんじゃないかしら。半数近くは年配組だと考えた方がいいわよ。どう?』
『そうかぁ……』
そして、更なる大儲け話が舞い込んできて、キラリン、と受付の男性の目が輝いていたのは見逃せない。
『いやあ、ちょっと待ってくれるかい? 予約分とか確認して来るからさ。すぐに終わるから』
『いいわよ、別に』
それでにこやかな笑顔を投げた男性が、そそくさと、後ろの部屋の中に入っていた。
その間、ついてきた男性陣はただ店の中でアイラと受付の男性の会話を、ただのんびり観察しているだけだ。
口も挟んでこない。
要は、値切りをする時の女性には、一切、口出ししない、近寄らない、とでも言ったルールがあるのだろうか。
龍之介は英語が分からないので、ただ、アイラの会話を見ているだけだ。
『明日は、二組ほど、ボナナビートの予約が入ってるんだけど、その他のことなら、順番で良ければ、予約できるよ』
『そう。その予約は、ホテルに戻ってからするわね。でも、心配なら、前払いで100RMくらいはしてもいいけど。現金で』
『それは助かるよ。本当に60人くらい?』
『参加しない人がいても、軽く40人は来るわね。暇だから』
『そうか。準備とかがあるから、少し早めに連絡くれたら助かるんだけど?』
『これ遊んで帰った後でいい?』
『もちろん。どこに泊まってるの?』
『Jarbebe Langkawi Resortよ』
『ああ、あそこね。あそこなら、そんなに遠くないね』
『そうね』
『じゃあ、今日のアクティビティは――4つ、かな?』
『そう。7人分』
『570RMくらいになるんだけど――そうだなぁ……。500RMくらいでどうかな?』
アイラはただ薄っすらと弧を描くように口元を上げるだけだ。
『明日も大儲けにしてあげるでしょう?』
『そうなんけどね……。――じゃあ、マケて、400RM?』
『350RMは?』
うーん、と男性は渋顔だ。
『暇だから、別に、今日・明日だけじゃないじゃない』
『お正月――いつまでいるの?』
『一応、4~5日までよ』
『せめて、帰る前にまた予約してくれたら、今日は300RMでいいよ』
『予約はしてもいいけど、何人分?』
『全員――なんて、無理かな?』
『無理ね』
『まあ……、そうだろうね。それなら、せめて、団体分は?』
『団体分って何人?』
『12人なんだけど』
『いいわよ』
『そうか』
一応、この後すぐに予約の詳細などで名前を分ることだし、ホテルの場所も分かっているので、前払いまではしなくても、連絡先があれば大した問題でもない。
受付の男性も、明日の多忙な一日を想像して、ホクホク顔が止まらない。
『じゃあ、このアクティビティの参加要項と、それに関するルールの承認もあるから、記入してもらえるかな? 一人ずつね』
『いいわよ』
手渡された紙を受け取って、アイラが全員の元に戻って来る。
『300RMよ。帰る前に、もう一回は予約するっていう前提で』
『まあ、暇だからいいけど』
『そうそう』
『ちょっと、感謝が足りないわね』
『いや、ミカに続き、感謝~』
『アイラにも、感謝~』
全く誠意が感じられない双子の返答に、アイラも剣呑な眼差しを向ける。
『あんた達二人は除くべきね』
『なんだよ、差別するなよ』
『差別反対』
『暑苦しいのよ』
『アイラ、書類』
そして、暑苦しい双子の態度も会話も毎回なので、さっさと無視して、ジェイドがアイラの手から書類を引き抜いた。
「龍ちゃん、300RMでいいのよ」
「いいのか? すごいな、アイラ。本当は、もっとするだろ? 今――このパンフレット見ながら、計算してみたら――えっと……」
「570RMよ」
「そうだろ? そんなにするだろ? それなのに、300だけでいいのか? すごいなぁ、アイラ。値切るの上手いんだな」
「そうよ。感謝しなさいよ」
「もちろん、するぜ。すごい大感謝だっ! ありがとなっ」
「龍ちゃんはいつでも素直でいい子よねえ。ホント、なんで、私の周りには龍ちゃんのようないい子がいないのかしら?」
「日頃の行い、だから?」
「なによ」
「いや、ディスカウント、ありがとう。さすがだ」
そして、こっちもなんだか真剣さが欠けて聞こえるのは、アイラの気のせいか?
いや、気のせいなはずはない。
読んでいただきありがとうございました。
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