その8-03
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龍之介はおかしそうに、くすっと、笑って、
「みんなアメリカなのか? カイリさんは、マリーンなんだろ? アメリカ海軍だし。アイラも、アメリカからニュージーランドに行ったんだろ?」
相変わらず、質問攻めは治らないらしい。
アイラは、そんな龍之介を呆れたような顔をして見やりながら、
「カイリだけアメリカよ。後はイギリス。Pop もNanaもイギリスだから。他の身内も結構イギリスよ」
「へえぇ。じゃあ、アイラもイギリスから来たのか?」
「色々ね」
「色々? なんの色々? なにが色々?」
「色々は色々よ」
「それって、なんの色々?」
ふふと、意味深な笑みを浮かべてみせるだけで、アイラの説明はない。
焦らさなくても、説明してくれないのかなぁ? なんて考えてしまう龍之介だったが、根っからが素直で明るい性格なだけに、「まっ、後で話題にでもでてくるかな」ともすぐに切り替えが早い。
タクシーの中から見える景色は、リゾート地ではあるけれど、ホテルから離れると、結構、“ローカル”っていう表現が似合いそうな、のんびりとした、田舎道や家の造りなどが視界に入って来る。
通り過ぎていく人達は、肌の色が濃く、モカ色の人種だってたくさんいるようだった。
「なあ、あの人達ってどこの国の人なんだろうな」
「どれ? ――ああ、あれはきっとインド人ね。マレーシアに移住してきたインド人ってたくさんいるから」
「へえええぇぇ、そうなんだ」
「ついでに、インドネシアからの移住民も肌の色が濃いわよ。でも、顔立ちがアジア人って分かるから、インド人とはすぐに区別がつくけどね」
「へええええぇぇぇ、そうなのかぁ」
でも、きっと、龍之介にはそんな区別はつけられないだろうな、と思ってしまう。
日本人ではないことだけははっきりしていてるけど、中国人と中国系マレーシア人だって、区別がつかないのに。
ホテルから出てすぐに、小さな商店っぽいお店に着いていた。日本で言えば、近隣の住民が出入りするなんでも商店のようなお店だ。
龍之介にとっては、そんな普通のお店でも目新しい。
缶のジュースがお店のすぐ前に並べられていて、読めない文字が派手な色の缶の上で光っている。
「えっ? これ、もしかして――くどそうなジュース――ん? 炭酸系なのかな? 俺、試してみたいなぁ」
「試せばいいじゃない。それで写真でも撮って、後で友達に自慢して殺ればいいのよ。「これ、マレーシア産のジュース飲んだぜ!」ってね」
「ああ、なるほど。じゃあ、やろうっ」
緑、オレンジ、真っ青なブルー、黄色などと色々な種類の缶を取り上げて、龍之介の腕の中は埋もれている。
「龍ちゃん、中にも色々あるみたいだ。それ一種類じゃなくて、違うのも試してみたらいいんじゃないか? それに、一種類だけ買って、あまりにまずかったら飲み干せないだろう?」
冷静な指摘である。
「そうだな。じゃあ、これ半分にして、あっちのも取っていこうっ」
「ああ、ここにカゴがあるよ」
腕一杯の龍之介を見て、親切に廉がカゴを渡してくれる。
それからと言うもの、普通のお菓子でも珍しそうに、訳の分からないものも興味津々で、龍之介の持っているすぐに山のよう。
「あれ? アイラ――え? それ、箱で買うのか?」
もう、レジに並んでいたアイラの後ろを通り過ぎ様、アイラの買い物に目を向けて、龍之介がギョッとする。
それも、箱詰め買い物をしたようで、レジのテーブルの上ではなく、床に何箱も積み上げている形だったのだ。
「そうよ。3箱は、ただの水のボトルだもん。重くてかさばるけど、一日中お水飲んでたら、こんなの数日でなくなるわよ」
「そっか」
「あとは、スプライトの箱が二つ。炭酸も飲みたくなるわよねえ」
「そうだな。スプライト――って、マレーシア産? 字が、英語と混ざってるっ!」
「地元の味、って感じじゃない? 私は興味ないけど、龍ちゃんなら喜びそうだもんね」
「ああ、もちろん。じゃあ、俺もスプライト買ってこよう。廉は何買ったんだ?」
「水のボトルと炭酸が何本か」
「おやつは?」
「別に、そこまで興味はないから」
そうなんだぁ、と龍之介は納得する。高校の時から、廉は出されたスナックは食べていたが(あの事件で生徒会室にいる時は)、だからと言って、自分からおやつやスナックなどを買い食いしたりするタイプでもなかった。
「よう、リュウチャン。そのでっかい箱、チョコレートだぜ。持ち帰ってる時に溶けるぜ」
後ろから双子の一人がやってきた(でも、龍之介にはどっちの双子なのか分からない……)。
「あっ、そうなんだ。でも、プケモンの絵がついてたから、マレーシア産でも、結構、大丈夫かなぁ、と思って」
「別に、普通のチョコレートだぜ」
「そうそう。棒のな」
そして、もう一人の双子も参加する。――更に、どっちか、どっちだが分からなくなってしまう……。
外に出る時は暑くて帽子を被っているせいで、髪の毛だけで(かなり苦労して)双子の区別をつけていた龍之介には、帽子を被られたら一苦労……。
「食べたことあるのか?」
「空港着いた時」
「暇だったから」
「おいしかったか?」
「別に普通のチョコレート」
「“ChokiChoki”ってチョコレートの略かなんかなんだろ」
「でも、普通のチョコレートなんだ。それなら良かった。――あっ、でも、さすがに常夏の温度の下じゃ熱すぎて溶けちゃうかな? やっぱり、チョコレートやめた方がいいか? プケモンの絵が入ってたから、ついな? 日本っぽくて、マレーシア産で面白そうだから。ドロドロになったら食べれるどころじゃないもんな」
そして、一気に質問が出て来て、一気に一人で納得している龍之介。
双子の方も、随分、面白そうに龍之介を見やっている。
「まあ、すぐにタクシーに入れて、ホテルに着いても、速攻で部屋に運べば持つんじゃないのか?」
「ええ? この後、昼飯でも行かないのか? 腹減った」
「荷物が重いから、先にホテルに帰るわよ。こんな大荷物でタクシーなんて乗り回したくないもの」
もうすっかり会計を終わらせたアイラは――弟のギデオンを買収したらしく、重い荷物をタクシーに運ばせている(さすが、アイラだ……)。
「じゃあさ、一回、ホテルに戻ったら、昼飯食べに行くのか?」
「ホテルで食べたいなら食べれば?」
「いやいや。俺も一緒にいくぜ。廉は?」
「そうだね。一緒に参加するよ。そろそろ、少し飽きて来たからね」
「そうだな」
それで、買い物の後の用事も決まって、今日も休暇が最高だ!
ホテルに着いた龍之介は、双子に提案されたように、速攻でチョコレートの箱をホテルの自分の部屋に運び込んでいた。
残りの荷物は、アイラ達のと一緒にポーターに頼んで運んでもらうことにした為、お願いしてきた。
この炎天下の中、ホテルのロビーから海辺沿いの部屋に元気に勢いをつけて走り込んでいく龍之介に、全員が――無言。
『アイラの友達、パワーあるなあ』
『ホント、ホント。見てるだけで汗かきそう』
『龍ちゃんって……、あんなに毎日張り切って、ぶっ倒れないのかしらね』
『うーん、どうだろ』
さすがに、パワーのある龍之介は知っていても、この炎天下で、龍之介一人だけ一日中外にいる機会が多いし、海に入って日焼けしてばかりだし、マレーシアに着いてからも時差ぼけを吹っ飛ばして、遊びまくりだ。
張り切り過ぎて――パワー切れ? ――なんてことにはならないといいが、などと、つい、廉も少しだけ心配してしまう。
読んでいただきありがとうございました。
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