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やっぱりやらねば  作者: Anastasia
Part2-マレーシア編
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その7-03

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「それより、ケードの彼女見た?」

「見たわよ」


「あれこそ、バリバリのビジネスウーマンって感じよね。維持費が大変よねぇ、あれは。あの水着だってシャネルだし、着てきたドレスだってグッチだったわよ。愛想笑いだけして、一般ピープルには目もくれない――ってね。ケードもよくあんなの連れてくること」


「まあね。でも、ケードの場合、何でもゲームだから、ああいうのがやる気を起こさせるんじゃないの? 自分の興味を刺激する、ってね」

「私は、あんなのはお断りだわね」


「ケードは結婚なんかしないわよ、まだまだ。あれも、今までの女達の一人でしょうよ。ホント、代わり映えしないのね」

「それは言えるわね」


「ミカの“人生の男”はどうしたのよ」

「私はいいのよ。今の所、仕事に生きる女なの」

「この間のはどうしたわけ?」

「あれとは、とっくの昔に別れてるわ。頭が固い奴ほど融通が効かないのよ」


「日本人はやめれば? ミカの性格じゃ無理よ」

「次は別のを探すわよ」


 そんな他愛無いことを話しながら、ボートの速度が落ち出して、岸が見える距離で、それでいて、まだボートが乗れる程度の深さのところでエンジンが停止した。


 すぐ横で、靖樹もアイラ達のボートの方に近寄ってきて、そのエンジンを停止させた。


「ギデオン、バスケット取って来てよ。お腹空いた」


 3番目の妹と楽しそうに会話していたギデオンがアイラの方に向いて、嫌そうに顔をしかめてみせる。


「自分で取ってくればいいだろ?」

「でも、そっちのレディー達だって、スナックがあったら食べると思うわよねぇ。それとも、そっちのレディー達に取りに行かせるわけ?」


 それで、益々、嫌そうに顔をしかめたギデオンが、仕方なさそうに立ち上がった。


 向こうに置いてある大きなバスケットを取りに、ギデオンが歩き出す。


「なあ、アイラ? ここで停まるのか? しばらくいるのか? それだったら、俺、飛び込んでもいいか? ここら辺、誰もいないじゃん。一人で泳いだら、最高かも」

「ここにしばらくいるから、どこへでも泳ぎに行っていいのよ、龍ちゃん。ギデオンがスノーケルのゴーグルとか持ってきてたわよ。借りちゃえば? 海も――きれいそうだし。なにかいるかもよ」


「そっか。じゃあ、弟さんに言って、スノーケルのやつ貸してもらおう。アイラは泳がないのか? 廉は? 美花さんは?」

「私はご飯」

「私はパスよ。いってらっしゃい」

「俺もパス」


「ええ? みんな、泳がないのか? せっかくこんな人気のないところまで来たのにさ。つまらないだろ?」

「後で泳ぐから、今はご飯よ、ご飯。龍ちゃん一人で行って来れば? 後で、私もスノーケルするかも」

「そっか。じゃあ、俺は行って来ようっと」


 スクッと、元気に立ち上がった龍之介は、バスケットを抱えて戻ってきたギデオンの所に走って行って、スノーケルの道具を借りるようである。


 あっちにある、と指さした方向に軽やかに走って行き、一人嬉しそうに身支度を整えながら、すぐに、ザブンっ――と海に飛び込んで行った。


『あの子、元気ねぇ』

『そうね。龍ちゃんだからよね』


 二人揃って、水しぶきをあげて海に飛び込んで行った龍之介の方を、感心したように眺めていたのだった。


『ほれよ。ここにひろげるから、自分で勝手に取れよ。皿――もバスケットの中にあるぜ。こっちは何だろ? ――ああ、ビールにワインもある。グラスもあるぜ』

『さすが、カイリとジェイド。いつでもどこでも用意万端ね。いいわぁ』

『もちろん、美しい女性の為なら、何でもしますよ』


 舵を安定させて、アイラ達の方に戻ってきたカイリが、気取った風にお辞儀をしてみせる。


『カイリ、いい男ねぇ。私にワインくれたら、キスしてあげる』

『はいはい、我が従妹殿はワインね』


 バスケットの中からワインボトルを取り上げて、小さなグラスに器用にワインを注いで行ったカイリは、そのグラスを美花に差し出すようにした。


「Thanks、Kyely」


 美花はグラスを受け取って、隣に腰を下ろしたカイリの唇に、ちゅと、軽くキスをした。

 片方の腕を美花の後ろに置きながら、カイリは自分のビールに口をつけ出していく。


『ねえ、Nana と Pop にあげなくていいの?』

『あっちには半分渡しておいたから、あっちはあっちで勝手にやるだろ』

『そう。じゃあ、これはうちらのね』


 アイラはそれを聞いて、嬉しそうにバスケットの前に屈んで、中のフードやスナックを、全部中から取り出し始めた。


『ちょっと、あんたの弟、一体、何やってるのよ』

『さあねえ。ジェイドの趣味だろ』

『趣味ね、趣味ぃ。ジェイドって、ああいう女が趣味だったわけ? 知らなかったわ』

『さあ、それは俺にも。ジェイドは、結構、好みが決まってないからな。昔から色んなタイプを連れて来たし』


『今度は、ああいう堅そうな女なのね』

『まあ、ジェイドが苦手ではありそうだな』

『随分、いじめて遊んでるようじゃない。ジェイドも暇人ねぇ――』


 そんな会話を頭の後ろで聞きながら、アイラはせっせと自分のプレートに食べ物を乗せていた。


 コールドチキンに、サーモンのサンドイッチや、チーズにクラッカー、コールスローのサラダに、フルーツサラダも混ぜて、おいしそうなパンを二つ取り上げ、次から次へと、食べ物を取り出すアイラの皿は山盛りになっていた。


『ちょっと、レン。私のジュース取って。持てないの』


 椅子に座っている廉は、そのアイラの山盛りの皿に、ちらっと、目を向けて、仕方なさそうに立ち上がった。

 それで、そこに屈んでグラスを取り上げて、用意されているジュースのビンも取り上げた。


 それをアイラのグラスに注いで行き、アイラに手渡そうとしたが、すでに、モグモグと忙しなく食べ始めているアイラの様子を見て、諦めたようにそのグラスを持ちながら、また座りなおしていくことにしたようだった。


「よく食べるんだな」

「いいじゃない。食べまくるわよ。来年に向けて、しっかり食いだめしておかないと」

「アイラ、少し無理し過ぎだぞ。食費くらい、俺が送ってやるのに」

「いらないの。別に無理してるわけじゃないから、世話しなくていいのよ」


 カイリは美花越しにアイラを見ているが、その顔があまり賛成できない、と言っているのは間違いなかった。


「アイラ、後で、あの女の前で海に泳ぎに行きなさいよ」

「――なんで?」


 モグモグと、忙しく口を動かしているアイラは、モゴモゴのままそれを美花に訪ねる。


「アイラ、ゆっくり食べろ。忙しない」


 呆れたようにカイリが口を出す。


 だが、アイラはまだモグモグと勢いを止めずに食べていた。


「あの高ビーの女、ムカつくから、あんたの水着姿出して、見せびらかしてやればいいのよ」

「面倒~」

「いいじゃない。やりなさいよ」


 ええ、と大した気乗りしないアイラは、せっせと自分のご飯を食べている。


「なんでアイラなんだ?」

「うちらの中じゃ、アイラの体がピカ一だもんね。ムカっだけど。だから、あのお高くとまってるケードの女に、見せびらかしてやればいいのよ。高いエステに行ってジムに行こうが、これだけ食べてるアイラの方がナイスボディー、っていうのは許せないじゃない。現に、アイラを意識して、パーティーの時だって、アイラとは一度も話してないじゃない」


 へえ、それは知らなかった――とカイリもかなり感心しているようである。


「よく見てることで。女を怒らすと怖いことで」

「君の身内を怒らせると怖い」


 珍しく意見が一致したようで、休戦している今は、仕方なく、カイリも廉の意見に賛成のようだった。

 アイラは全くその気がなく、一人、モグモグとご飯を平らげていた。


 後に、ご飯も食べ終えて、飲み物も飲んで、一息ついただけ一息ついたアイラは、美花の要望ではないが、食後の運動をかねて、海で泳ぐことにしたのだった。


 今度はジェイドも交えて、龍之介とアイラとジェイドの三人で、泳ぎの競争をする。


 ぶはっ――と、顔を出した龍之介は、はあ、はあ……と、荒い呼吸をしながら、髪から流れ落ちてくる水気を手で拭っていく。


「アイラ……すんごい、早いんだな。俺の負けぇ……」

「でも、またジェイドに負けたわ」

「タッチの差だ」


「二人とも早いのなんのって……。はぁ、俺、息切れしてるんだけど……」

「これでも水泳は習ってるから、これくらいはね」

「そうなんだ。ジェイドさんも? もしかして、兄弟みんな? みんなでやったら、みんな早いのか? すごいなぁ。競争し合ったらおもしろいだろうな。他の従兄弟・従姉妹とかは? みんなも早いのか」


 相変わらず質問攻めの龍之介に、ジェイドも少しおかしそうに笑って、


「それは、人それぞれだろう」

「そっか。でも、俺はもう競争しないぜ。こんなに早く泳いだから疲れちゃった。アイラ、スノーケルしないのか? 魚とは見えなかったけど、中もきれいだぜ。やっぱり、最高の休暇だなぁ」


 背泳ぎしながら、緩やかな波に揺られている龍之介は至福の様子で、かなりのご機嫌だったのだ。



読んでいただきありがとうございました。

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大人になってもはちゃめちゃ恋愛物語『やっぱりやらねば(続)』は大人の恋愛編です。
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