魔法少女ジューシーみかん! (短編)
ずっと魔法少女ものを書きたいと思って書いてみました。
わたしの名前は日向みかん。小学5年生の女の子。
日向でみかん、なんてそのまんまだよね。でもわたしはこの名前結構気に入ってるんだ。
だから好きな食べ物はみかん。因みに嫌いな食べ物は人参、みかんと同じ色だけど味がちょっと苦手。
そんなわたしの10歳の誕生日、わたしはパパとママからとっても可愛いワンちゃんを貰ったんだ。
でもそのワンちゃん、なんと人の言葉を話したの!
なんでもバラバラに散らばった不思議なカードを探しに異世界っていう所から転移してきたんだって。
さらにそのカードを追って悪い魔法使いまでやってくる始末。
大変! もし悪い魔法使いの手に全部のカードが渡っちゃったらこの世界が悪に乗っ取られちゃう。
だからわたしは不思議なカードの力で魔法使いに大変身!!
待っててね! その不思議なカード、全部わたしが取り戻してあげるんだから!!
--------------------------------------------------------------------
「はい雪丸、お昼ご飯だよー」
6月中旬の日曜日、梅雨空なので今日のわたしは雪丸と留守番。
あ、雪丸っていうのはペットのワンちゃんのことで、純白でふわふわした雪玉みたいだから雪丸。人の言葉を話せるの。なんか元々は人間だったんだって。
「おい、なんだこれは!?」
「何って、骨だよ」
「じゃあお前が食ってるそれはなんだ?」
「これ? ステーキだよ。あ、Tボーンステーキだよ」
「そういう事を聞いてんじゃねーよ!! なんで俺はこんな質素な犬の餌でお前は高級ステーキなんだよ!!」
「え? だって雪丸はワンちゃんじゃない。Tボーンなんて食べたらお腹壊すよ」
「くそう、馬鹿にしやがって!!」
雪丸はなんか怒って家を飛び出していった。
--------------------------------------------------------------------
仕方がないのでわたしも雪丸を追いかけて家を飛び出す。Tボーンはとりあえずお預けだ。
すると見慣れた純白のふわふわ犬はすぐ目の前にいた。
「なあ、これなんかおかしくねーか?」
「おかしいって何が? 何かおいしいお菓子でもあったの? わたしも食べたい」
「違えーよ! 雪が降ってるんだよ雪が!」
「あ、本当だ! 雪だー! ねえ雪丸、雪だるま作ろうよー! どっちが大きいやつ作れるか競争だよ!」
「よっしゃぁ! スノーアートの天才と言われた実力見せてやるぜ!」
わたし達は雪だるまを作り始める。やがて小さい雪だるまと大きな雪だるまが並んだ。勝負は明白だ。
「さすが雪丸! 名前は伊達じゃないね」
「言っただろ? 俺様はスノーアートの天才だぜ! って今は遊んでる場合じゃねーんだよ! 今は6月! 雪が降ってるのはどう考えてもおかしいだろうが!」
「あーなるほど。じゃあこれってもしかしてカードが関係してるってこと?」
「お前、本当は分かっててやってんだろ」
その時、通りすがりのおじいさんが話しかけてきた。
「ほお、これはまた立派な雪だるまですね」
「雪丸がつくったんだよ!」
「わんわん!! (おい! 俺が作ったことにしたら色々まずいだろうが! ここは何としてもごまかす所だろ!)」
雪丸がわたしの足に嚙みついた。何言ってるか分からないけど後で覚えてなさいよ。
「ほお、そうですか。おや、こちらはまた小さくて可愛いらしい」
「こっちはねー。わたしがつくったのー」
「いやあ、これは良い物を見せてもらった。じゃあ、良いものを見せてもらったお礼に私も一つお見せしましょう。そりゃあ!!」
おじいさんがなんか気合を入れると、雪丸が一瞬で氷漬けになった。
--------------------------------------------------------------------
わたしは氷漬けになった雪丸に抱き着く。
「雪丸ー!!」
「ふふふ、どうですかな? 私のとっておきの魔法は!」
「雪丸ー!! このまま一生氷漬けのままだったら博物館の冷凍マンモスの隣に並べてあげるからねー!」
「さあ、その犬を助けたかったらお嬢さんが持っているカードを渡しなさい」
わたしはおじいさんから距離をとる。
「嫌! あなた悪い魔法使いでしょ! あなたにこのカードは渡さない! それに、雪丸はわたしが責任を持って冷凍マンモスの所まで持って行くって決めたの! 変身!!」
わたしはカードの力で魔法使いに変身した。
「交渉決裂ですか。だったらあなたも氷漬けになりなさい!!」
おじいさんから青白いビームが飛んでくる。
「うわあ! これはさっき雪丸が食らったやつだー! 当たったらわたしも冷凍マンモスの仲間入りになっちゃうー!」
わたしは顔すれすれで避けた。
「ちっ避けましたか。でもビームは何発でも撃てるんですよ!!」
ヒュンヒュンヒュンヒュン――!!
連続ビームが飛んでくる。
わたしは走って跳んでしゃがんで避ける。でもやがて躓いてしまった。
「隙あり!!」
ヒュンヒュンヒュンヒュン――!!
またビームが飛んでくる。
「まずい!」
わたしはとっさに積もった雪に陣を描く。周りの雪が集まって固まると、わたしの目の前で大きな壁に変わる。
ドゴォーン!!
雪の壁はビームを防いだのと引き換えに粉々になった。
因みにわたしを変身させたこのカードは『錬金術のカード』。これを持つ人はあらゆる物を瞬時に錬成できる魔法、『錬金術』が使えるようになるんだって。
「素晴らしい! やはりその力、ますます欲しい!」
おじいさんがめっちゃ早いスピードでこっちに走ってくる。ある意味で中々の恐怖だ。
「キャー! 助けて―! わたしやられちゃうー!!」
「さあ、今度こそ氷漬けに――」
その時おじいさんの足元が光る。そして大きな穴がぽっかり空くと、おじいさんは穴に飲み込まれていった。
よし、決まった!!
わたしは穴に近寄る。
だいぶ深く穴を掘ったのもあって、穴底にいるおじいさんはもう虫の息だった。
「もしもーし。どう? わたしの落とし穴トラップは? 踏んだら穴が空く陣を描いておいたんだ。おじいさんの足腰にはだいぶ堪えたんじゃない?」
「く、今の……老人を……なめるなよ。毎日……ジムにだって通って……いるんだ」
「あ、そう。じゃあ埋めちゃおう」
「あー! 待て待て! 私のカードはくれてやる。だからこのか弱い老人を引き上げてくれんか?」
異世界からきた悪い魔法使いもこの世界ではカードが無いと魔法が使えないみたい。
穴の底からわたしの手元にカードが飛んでくる。
「氷のカード」
わたしがカードに書かれた文字を読むのと同じくらいで、雪がやんだ。きっとおじいさんの手元からカードが離れたからだ。
わたしは匿名でレスキューを呼ぶと、その人たちにおじいさんを連れて行ってもらった。色々面倒くさいもんね。
--------------------------------------------------------------------
沸騰したお湯を浴びて、雪丸は復活した。
「ギャー! 熱い熱い熱い!!」
「やったー! 雪丸大復活だー!! わーパチパチパチ」
「パチパチパチじゃねーよ! あちーよ!」
雪丸はぶるぶると身体の水滴を払う。
「じゃあ、今度こそお昼にしよう。じゃーん、骨に不服そうだった雪丸さんの為に、今度こそとっておきのご飯だー!」
わたしは戸棚の奥から高級ドッグフード未開封を差し出した。
「なんだよ、あるんじゃねーか。しょうがねーなあ。あ、でもちゃんと皿には盛ってくれよ?」
わたしは金ピカのお皿にドッグフードを盛ると、テーブルに着いた。
「さーてそれじゃー、わたしはお待ちかねのTボーンを……あー!!」
「どうした!?」
「わたしのTボーンが、冷めて硬くなってる」
「それはご愁傷様」
雪丸は高級ドッグフードをむしゃむしゃ食べる。とてもおしいそうな表情だ。ちょっとムカつくかも。
「もう! 雪なんて大っきらーい!!」
外はもうすっかり雨模様だった。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
評判が良かったら、連載を考えてみようと思います。