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オーブ!~fighting spirits~  作者: 天界音楽
チャプター6:再会 
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第4話

「で、どっちと戦う?」

「は?」

「とにかく戦おうぜ、せっかく揃ったんだからな!」


 グリセルダの提案は唐突だった。グレイルが思わず間抜けな声を上げ、いつもはマイペースなディールが異議を唱える程には。さすがジェレミアの姉と言えば良いのか、グリセルダも相当の戦闘ジャンキーのようだった。


「戦う前にこれからの行動を決めてからにしようぜ」

「そうそう。これからの目的も決まってないのに、遊びでなんて戦えない。全ての問題が解決してからにしよう」

「ん、仕方ねえな。でも、方がついたら絶対だぞ?」


 ディールとグレイルの言葉にグリセルダも頷くしかなかった。そういうわけで、かねてからの予定通り、リスタール宅へ向かうことになった。しかし問題は残っている。サイネールのことだ。


 未だグレイルが異世界人……つまりマレビトだとは気づいていないとはいえ、サイネールはそのマレビトを使って何かを企んでいるようなのだ。できればすぐにサエリクス、ディールと情報を共有したいと考えているグレイルにとって、彼は邪魔な存在だった。


 同じ現地人でも、すでにマレビトの存在を知っていて、かつ、グレイルの庇護者であるグリセルダとは真逆である。……ゴリラには下手に隠すより、きちんと話した上で黙っておかせる方が良いとグレイルは判断した。


「さて、眼鏡君よ。お前さんはこれからどうする? さっきも言った通り、別にもう俺たちはイスダールに用はない。このまま帰ってもらっても……」


 グレイルは途中で言葉を止めた。サエリクスが急に立ち止まったからだ。その視線の先、道路を挟んで通りの反対側に見知った姿を見つけた。サエリクスにとっては大聖堂で別れたはずの、グレイルにとってはつい数日前に出会ったエリーゼという女だ。


 彼女もまた、こちらには気づいたようだった。サエリクスを見、口を開きかけたエリーゼは、しかし何も言わなかった。彼女はひとりではなかった。


 エリーゼの横にいた男が、何事かを彼女に尋ねている。仲間は四、五人といったところか。どうやら彼らと一緒に行動しているようだ。結局、エリーゼはサエリクスを無視してその場を立ち去って行った。


「追わなくて良いのか?」

「あいつも、俺に無茶な無理難題を押しつけた奴の仲間だからな……、かかわらねえのが一番だよ」


 グレイルの言葉に平坦な声で答えるサエリクス。

グリセルダがなおも畳み掛ける。


「ほんとにいいのか? つっても、刺し殺しそうな目ぇしてたもんな、あのねーちゃん」

「…………」


 サエリクスの態度から、グレイルはこのアウストラル人二人には話したくないことがあると勘づいた。そこでグリセルダを止めようとするが、サイネールが意味深なことを言い出す。


「……一緒にいるのは、ノレッジの配下、僕の父親に雇われてるごろつきだ。関わらない方がいい」

「どういうことなんだ?」

「父のためなら平気で手を汚す連中ってことだよ」


(まずいな。聞きたいことが増えちまった。今この眼鏡君を帰すわけにはいかなくなったな……)


 さすがに情報が増えすぎた。

 まず、サエリクスにはエリーゼとの関係を問い質さないといけない。グレイルはグレイルで、消えた教授について話しておきたかった。しかし、追い払いたかったサイネール青年が何だか重要そうな情報を握っているときた。


「まずは、このゴリラの屋敷に行こう、話はそれからだ。眼鏡君よ、お前さんも死にたくなければ来れば良いんじゃないのか」

「こわっ!? どういうことなの……」

「言葉通りの意味だろ」


 どういうこともこういうことも、サエリクスと一緒の所を見られているのである。サエリクスが明確に「敵だ」と認識している相手である、何をしてくるか分かったものではない。警戒するのは当たり前だった。


 そしてサイネールはあちら側の人間と言えなくもない。とにかく、顔を知られているのは確かだろう。グレイルたち異世界人には土地勘がない……だからこそ限られた情報でしか戦えないし、こちらの情報はできるだけ隠匿しておきたい。サイネールが捕まるなりして情報が漏れるのは困るのだ。


「まあ、いいよ。とにかく僕もリスタールの屋敷に行く。さすがにこんな、ごろつきみたいな男が三人も女性ひとりの家に押し掛けるのはさぁ、あんまり外聞が良くないだろうから」

「ごろつき……」


 一応、地球ではその正反対の位置にいると自負していたサエリクスが心外そうな声を漏らす。するとグレイルが真顔でこう言い放った。


「三人いれば、ゴリラをチンパンジー並みに大人しくさせられるから無問題」

「……その発言も含めてやっぱり心配だからついていくよ」


 おのおの、言いたいことや聞きたいことを抱えたまま、とにかくリスタールの屋敷に向かうことになったのだった。

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