6の6話
2話続けての衝撃発言で、各話賑わせながら締めてくれたエルダさん。
しかも前話の発言では、もうただの賑やかしではない。
この6章の根幹に関わる情報、いや、イベントかもしれないのだ!
とは言え、思春期真っ只中の隊員たちには更に刺激が強すぎた。
髪と瞳は、深紅の中に漆黒がいく筋か入った模様で、情熱的なマグマを連想させる。
その長い髪を丸く束ねて上げた、うなじの解れが艶っぽい。
エルダさんは一口に美女と言っても、色香の匂い立つような美女なのだ。
そんな肉感的美女には夫が2人もいて……
それが兄弟でドワーフ、しかもオッサン。
そりゃあ妄想しない訳がないだろう。
ダイヤ先輩なんか、タラリ鼻血が一雫。
腐女子の彼女がBL以外でそんな反応は珍しい。
それほどインパクトが強かったのだ。
「エルダさん!
その口ぶりだと……」
それでもダイヤ先輩は、鼻血拭き拭き質問の声を上げた。
そう、今はそれよりも聞く事がある。
もうひとりの夫、ドワルドンを助けてちょうだい──
エルダの口ぶりでは、ドワルドンの現状を彼女は知っているという事か。
そしてその情報は、あまり良い内容ではなさそうだ。
「その口ぶりだと……
上位のドラゴンは夫を複数持てるのか!」
先輩は思いっきり煩悩にシフトしていた。
まったくこの人は……
話には優先順位があるでしょうに。
あ、そうか。
さっきエルダさんは、のんびりドワルゴと痴話喧嘩をしていたくらいだ。
そう切羽詰まった状況でもないんだろう。
さすがダイヤ先輩。
基本、この人は頭の回転が速いのだ。
「ちょっと! そんな事より!」
おっと、ヒトゥリ様が先輩を制止する。
本来ならヒトゥリデは根が真面目なクセに、それを人に見せようとはしない。ツンデレだから。
そんな彼女に先輩を止めさせるとは。
ナツキ! お前は何をやっている!
お前の仕事は、そうやって頬を赤くして、モジモジする事か!
……クソッ、可愛すぎやがる。
「エルダさん!」
ヒトゥリデは続けた。
「それ変化魔法ですか?変化ですよね?変化しましたよね?魔法でですよね?魔力感じましたですもんね!魔力ヤリっと出しよりましたですもんね!教えて下さい!変化魔法ば知りたいとです!チカッパイ知りたいとです!」
そうでした。
ヒトゥリデにとって最も重要なのは、エルダが目の前で変化魔法を使ったという事実。
探しても探しても見つからなかった禁呪の様な魔法が今、手に入るかもしれないって事なのだ。
そりゃあ、目の色も変わるだろう。
因みにチカッパイはとてもの最上級。
「ちょ、ちょっと、どうした、うぬら……」
「ちょこーっと! ほんのちょこっと、ヒントだけでも!」
「おいヒトゥリデ! そんな事とは何だ!
私が先に質問している。順番を守れ!」
「何言ってんの!
第一、よくナツキ君の前で聞けるわね。この浮気者!」
「ええ! ボ、ボク!?」
「んなっ、ち、違うぞ、ただの、興味本位でだ」
「じゃあ黙ってなさいよ!
これは私の人生がかかってんのよ!」
「んむむ……」
ヒトゥリ様がダイヤ先輩を気迫でねじ伏せてしまった。
「教えてっ、エルダさんっ」
詰め寄るヒトゥリデ。
「こ、これね。
すまぬが、これは魔法じゃないぞ」
「へ?」
「我は違う姿に変わった訳ではない。
今も我、今しがたも我。
うぬらで言えばパジャマに着替えた様なものだ」
「で、でも、さっき膨大な魔力を感じて」
「うむ。
体を一度、うぬらの間で言う、マナだかマソだかにして、再構築しとるだけだな」
エルダさんによると、変化魔法はこの段階までは一緒らしい。
そこから自分ではない者に作り替える為、非常に難しいのだとか。
自分の姿に戻すだけなら簡単で、回復魔法はそれと基本変わらないそうだ。
それだけ個々各々には、自らの情報がしっかりと記憶されているという事だ。
「そ、そんなあ……」
へなへなと、その場に崩折れるヒトゥリデ。
「そもそも、うぬの方が変化しておるではないか」
「いやあ、言わないでえ」
うずくまったまま両手で耳を塞ぐヒトゥリデ。
そう。彼女の姿はドゲン爺ちゃんだった。
騒ぎに駆けつける直前に、もう一度杖を使っていたのだ。
まだまだたっぷり1時間、爺ちゃん姿のヒトゥリデであった。
「あ、ついでにうぬの質問」
言ってエルダさんはダイヤ先輩の方を向く。
「我の様な原初に近き存在には寿命がない。
うぬらの出現前から存在し、滅亡以降も存在するであろう我が縛られる事か?」
「ううっ……」
などと嘯きつつも、エルダさんは優しく答えてくれた。
本当は寿命が無いので子が出来にくいそうだ。
同じエルダークラスの竜相手だと特に難しく、何万年経っても妊娠しない夫婦はざらとの事。
最初の夫は自分と同じ黒龍種で、1億年一緒に暮らしても授からなかったとの事。
何だかんだで大喧嘩して別れ、龍種はもうこりごりだ、との事。
「一応の寿命がある、エルフだってそうなのよ。
ハイエルフ同士だと妊娠しないわよ~」
その通りの話で、現にミィンナデさんのあと、ヒトゥリデが誕生するのに4千年以上かかっている。
「ドゲンちゃんとこにナンちゃんが出来たのも1万年近く経ってたんだゾ」
「えっ? おじいちゃんの事、知ってるの?」
驚くヒトゥリデ。
つーか、エルダさん、話し方……
まあ、いいけど。
「ププッ、その格好で言う?」
「もおおう! やめてえ!」
「アハハハハ…………ハ?」
ジーッとエルダを見詰める探検隊一同。ヒトゥリデ以外。
みんなも彼女の雰囲気に気がついた様だ。
ヒトゥリデ以外。
「わ、我が言いたいのは、だな、小さき者よ。
自らが幸せにする事の出来る伴侶の数なら、誰に文句を言わせよう!」
ジーッと見詰め続ける探検隊一同。
「王様に何人も妻がいたって変じゃないのに、ナンで女王に夫が複数いるのは白い目で見られんのよっ!
納得いかないわっ!」
つい、本音を漏らすエルダさんでした。




