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5の10話

 ヒトゥリデは先ずランコに連絡をとった。


 先程入った店からの情報で「ドワーフの洞穴」という名店があった、と。

 今は閉店しているが、私はそこのケーキが食べたいのだ、と。

 話し合うために一旦集合しましょう、と。


 次いでダイヤ先輩に連絡をとった。

 似たような報告とあわせて、ランコ達との集合場所は大堀公園の正門前にした、と伝える。


「おおっ、丁度私達は今、大堀公園の噴水前にいるのだ」


 と、ダイヤ先輩。

 まあ、狙ってそこにしたんだけど。


「じゃあ、ランコちゃんと合流したら、そっち向かうわね」


 そうすればスムーズにソフトクリームを売っているドワーフおじさんとコンタクトを取れますからね。


『そ~ゆ~こと』




 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




「と言う訳でな、あのアイス屋のオヤジの兄貴が原因で、店を閉めてしまったのだ」


 ランコとワンタロウが公園入口に現れ、噴水広場にてダイヤ先輩、ナツキと合流。

 6人揃ったところで、先輩からドワーフ兄弟の話を聞いた。


 先輩の話によると、ドワーフ兄弟の兄ドワルドンは職人気質しょくにんかたぎな性格で、味を落としてまで店をやるつもりはない! と家を出て行ったらしい。

 兄貴の性格からして「魅惑のカカオ」を自ら採りに行ったのだろう、という事だ。


 兄の抜けたまま店を続けるという選択肢もあった。

 だが、そんな不十分な状態では「ドワーフの洞穴」とは言えない。

 この弟ドワルゴもまた、十二分に職人気質だったのだ。


 ドワルゴは考えた。

 兄ドワルドンを追って「魅惑のカカオ」が自生するといわれる、秘境へと向かおうかと。

 だが、秘境に入った者を何の手がかりもなく捜し、中で偶然合流出来るとは思えない。

 それよりは再起に向けての準備を行った方が現実的だ。

 情報収集も兼ねて、極東連合の各地をクリーム売り回って早10年。

 て話だった。


「ところでヒトゥリデちゃん」


 ダイヤ先輩の話を聞いた後、恐る恐るランコちゃんが発言する。


「ん? なあに、ランちゃん」


わらわもあのソフトクリーム、食べたいのじゃ」


 先程からランコはチラチラチラチラよそ見をしていた。

 ドワルゴ自慢のソフトクリームを売っている「ドワーフのアイス屋さん」と、周囲で美味しそうにそれを堪能しているその客達を。


「うふふ、そうね、一緒に行きましょ」


「やったのじゃー!」 

 

 取り敢えずお店の営業時間が終わってから、詳しい話をおじさんに聞きましょう。

 それまではのんびり、ソフトクリームでも食べながら待つとしましょうか。


「ランコ、ちょっと待て」


 今にも店に駆け込もうとするネコミミのじゃっ娘を、ダイヤ先輩が呼び止めた。

 何なのじゃ? と振り返るランコ。

 ホントは1秒でも早くソフトクリームが食べたいだろうに、キョトンとした表情。

 なんて可愛い反応だ。


「あれはソフトクリームだがアイスクリームだぞ!」


「ええっ!」


 そうでした。

 失念しておりました。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 夕方5時には店は看板になるので、僕らは木陰のベンチで歓談して待った。

 いやいや、今後の打ち合わせをしつつ、まあ、くっちゃべっていた。

 おそらく秘境に行くと思うので、その辺りの話題は多かった。


 閉店までにランコは5個もソフト……あいすクリームを食べた。

 確かに美味かった。

 そりゃ美味かったけど、食い過ぎだろう。


 でもランコちゃんの気持ちも分かる。

 世間にはシャーベットに近いものや、ゼラチンを混ぜたりしたものもあるが、これはホンモノだった。

 厳密に言えば、こちらがニセモノなのは間違いない。


 本来はソフトクリームマシンを使い、冷やしながら空気を入れて作る。

 ここのはドワルゴおじさんが早朝に冷凍庫内でホイップして作った物を保存し、それを店で特製マシンに入れて提供する。

 ドワーフ職人の技術で作ったアイス菓子は、まさに本物の旨さだった。

 これをソフトクリームと一緒くたに、されたくはないのだろう。


「とは言え、アイスクリームと言い張っても……

 今度はアイスクリームと一緒にするのが勿体無いですよ」


 雑談でワン太がそんな事を言い、


「じゃあ愛するクリームで、愛すクリームとか?」


 小首をかしげてナツキが提案した。チッ。

 満場一致でダジャレの名前がつけられた。

 もちろん、ドワルゴがOKすればの話だが。





「どうも、待たせちまって」


 5時を待たずに1時間ほど早く、商品を完売してドワルゴがやって来た。


 いきなりダイヤ先輩は、

「愛すクリームはどうだ!」

 と切り出した。

 頭にはてな? のおじさんに説明するナツキ。

 絶対脚下だろうと僕は思ったのだが。


「おっ、洒落てやがんな」


 結構ノリ気。


「でも看板があれだしなあ」


「なあに、言い出しっぺは私だ。

 看板はうちで作らせて欲しい」


 てな感じで話は進み(ホントはそいつは悪い、悪くない、と一悶着あったが割愛)、看板はダイヤ先輩がプレゼントする事に。

 序盤は本筋から思いきり外れてしまった。


「私達がお兄さんを連れ帰ったら……

 ショートケーキとガトーショコラの誘惑、食べさせてくれる?」


 今度はヒトゥリデが単刀直入に切り出した。

 

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