5の3話
「うわああ~! カワイイのじゃ~!」
運んできたパンケーキのひとつを眼前へと置かれ、ランコの瞳がキラキラと輝いた。
確かに一瞬「あの、うちら、フルーツ盛り、頼んでないですけど?」と言いそうになる位、パンケーキ本体が隠れるほどのミックスフルーツ。
そりゃあ、お子ちゃまランコがテンションMAXになるのも仕方がない。
作戦会議は始まるや否や、即方針が定まった。
が、注文したコーヒー6杯とパンケーキ3皿、パフェ3杯は食べねばなるまい。
今さらキャンセルは出来ないし、一応この店も調査対象だし。
キャンベル・アイリーン──
コウカ駅の駅ビル内にあるオシャレなカフェで、パンケーキとパフェが女の子に大人気。
季節のフルーツをふんだんに使用してて、inスター栄えする~とか言って評判の店なのだ。
「噂には聞いておったが、これは贅沢だなあ」
「師匠! パフェのフルーツもいっぱいですよ」
「ふわわわわ~っ!」
なつきとランコの声が弾んでいる。
チッ! 女子か!
『あんた、ホントなつき君に当たりきついわね』
イヤですねえ、演出ですよ。
いやあ、可愛いですねえ。
いやいや、実に結構。
『はいはい。嫌々言ってるって言いたいのね』
冗談ですよ。
さあ、食べましょう。
パンケーキはイチゴ、バナナ、ミックスフルーツ。
パフェはイチゴ、ミックスフルーツ、旬のフルーツ。
人気の3種ずつだが、どれも高価い!
ほとんどが1000イエンを超えており、イチゴのパフェなんかは2000イエンに近い。
因みに1イエンは僕の世界の1円と同価値。
イエンはこの国コウカが所属している極東連合の通貨である。
他にもドウルやヨウロなど、なんか聞いたような通貨単位が存在するがそれはその時に。
「ヒトゥリデちゃん、全然食べておらぬが、口に合わぬかの?」
しばらく欲望に正直な行動をとっていたランコは、ちょっと落ち着いたのか、やっと主の方へと意識が向いた様だった。
そう。ランコの言うように、ヒトゥリデはそれぞれ6種のスイーツに一口ずつ手をつけただけ。
急に心配になって、ランコは隣の主君に顔を寄せる。
「うふふ、ランちゃん、まだ先は長いのよ。
ランちゃんこそ、そんなペースで大丈夫?」
微笑みながらヒトゥリデはそう言うと、口のまわりベッタリの生クリームをナプキンで拭ってあげた。
「妾は大丈夫なのじゃ。
甘い物は別腹なのじゃ~!」
満面の笑みを見せ答えるランコ。
不安を解消し、安心して残りのパフェにスプーンを入れる。
せっかく拭いてもらった頬に、またホイップがトッピングされて行くのだった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
キャンベル・アイリーンを出る前に、ここの点数を50点として他店への採点の目安に決める。
この店のスイーツは見映えはいい。満点に近い。
だが、クリーム等の甘味とフルーツの酸味が少し合っていない気がする。
甘過ぎるのと、酸っぱさの調和が取れていないのだろう。
もっとフルーツ自体の甘さも考えて欲しいものだ。
コストパフォーマンスの悪さは今回考慮に入れないが、それも本来なら大きなマイナスポイントだ。
あくまでこれは僕だけの感想だ。
先輩やヒトゥリ様はまた違った意見を持っているだろう。
良くも悪くも、まあ、基準は必要だと思うので。
「ではそれぞれに手分けして、もっと美味しいスイーツを見つけましょ」
「うむ。一応は食べた品全部に評価しておいてくれよ」
「オッケーです」
「分かったのじゃ」
チームは無難にダイヤ先輩師弟、獣臣ズ、僕ら主従の3チーム。
検索でクチコミの星が多い店を目指して、別方向に向かって行く事に。
さて僕ら主従は「クイル・フェボン」というケーキ屋さんに入った。
ここは超有名店で、連合のいろんな都市にチェーンを拡げている。
チェーン店かあ、と思ったけれど星が4つを超えていたので寄るしかない。
中は洒落たケーキ屋さんにカフェスペースがあるって造り。
メインはタルトらしく、季節の2種、マンゴーのレアチーズタルトとイチジクのタルトを頼んだ。
前の店と違って、調理しないので待たされなくていい。
さすがに人気店だけあって、味のバランスが丁度いい。
タルトの風味が絶妙なアクセントになっている。と思う。
これは個人の感想であり、効果効能を示すものではありません。
『しょーもな……
まあ、あんた的に美味しいって事ね』
このタルトの生地だが、実に良くコーヒーと合うけれど、ホントは口の中で混ぜるのは下品なんだと。
先に食べ物を食べた余韻にコーヒーを一口。ってのがいいらしい。
いやいや、絶対口の中でモチャモチャやった方が美味いに決まっている。
『フン、それでよく執事執事って言えたものね』
むぐぐ……
返す言葉も御座いません。
『うふふふ、素直でよろしい』
上機嫌のヒトゥリ様は、やはり此処でも一口ずつだけ手をつける。
そして口の中でモチャモチャやって満面の笑みを浮かべた。
ランコに負けない位の幸せいっぱいな笑みを。




