5の2話
「スイーツよ!
超絶美味しいスイーツを食べたいの!」
ヒトゥリデはそう宣言する。
今回のお出かけのテーマはスイーツ探しなのだと。
まあ、そんな力説する内容でもないとは思うのだが。
「はい。ヒトゥリデ様」
「はい。なのじゃヒトゥリデちゃん……様」
「ランちゃん、様いらない」
素直な忠臣ふたりは、大した発言じゃないのに元気よく返答する。
若干あやしい部分は、あるっちゃあったが。
いやいや、若さがあって大変よろしい。
『ホント。お前のふてぶてしさに比べれば可愛いものだわ』
相も変わらず、僕にはツンデレ強目のヒトゥリ様。
「え~っ、ワン太だけズルいのじゃ。
妾も様って言いたいのじゃ~」
「だめよ。
ワン太は最初っから様って呼んでたからいいの。
それコミであだ名みたいに感じてんだから」
エッヘンと何故か胸を反らすワンタロウ。
何ひとつ褒めてもいないのだが。
その様を見てムギギギと歯ぎしりするランコ。
これまた何ひとつ悔しがる要素がないのだが。
「もう。
私はランコちゃんが大好きだからちゃん付けで呼び合いたいのっ。
ワン太はどうでもいいから様付けで充分なのっ」
ガーーン!
って顔のワンタロウに、
ぱわわ~ん
って顔のランコ。
「男にはツンデレ度アップだから気にするなよ。僕見りゃわかるだろう?」
「あ、はい、そう、ですね」
そっと肩に手を当てフォローしておいたのは、先輩執事としての優しさなのかもしれない。
『ちょっと、何勝手に執事増やしてんのよ。
先輩、後輩、従者だからねっ!』
とまあ、そんな下らない会話を続けつつ、我ら主従はコウカの街へ向かう電車の中に居た。
やはり4人向かい合うシートにして座っている。
今日はホー城からの出発で、イヅィーカの駅を利用したのだ。
目指すはコウカ国首都コウカの街!
「じゅ、う、しゃ、だからねっ!」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「やあ、遅かったではないか」
コウカの街へと降り立った我ら主従の前に立ち塞がったのは、ダイヤモンド盗賊団改め、ダイヤと楽しい仲間達のリーダー、ダイヤ先輩と弟子のナツキ君だった。
ふたりともカジュアルな格好で、ナツキ君は白のサスペンダーなんかしてやがる。
「……ダイヤ先輩、その口ぶりだと私達を待ってたの?
ってか、なんでお出かけ知ってんの?」
と言いつつ、チラとワン太に視線が向かうヒトゥリデ。
自然と皆の目がひとりに集まる。
「お、俺じゃないですよ!」
「ハッハッハ、私の諜報力を見くびってもらっては困る。
ランコちゃんとワンタロウがホー城に向かった時点でマークしておるのだ」
僕の能力によると……
どうやら情報の発信源はランコの父、エイコ村長。
前の宴会以来、剣歯影虎ともあろう者が、この見た目10代美少女に頭が上がらないらしい。
もうかれこれ100年も前の恋慕の情が、頭を掠める様である。
どちらかといえばトラウマに近いのでは。
「みなさん! 酷いですよっ」
「あら、カヨ先輩とミチ君の姿が見えないけど?」
「ああ、あいつらは缶詰めだと。
徹夜して夏コミにギリで間に合うらしい」
「僕らはコスプレ衣装がメインなんで、まだ手伝えるレベルまで作業が進んでないんですよ」
ヒトゥリデの質問に師弟で答え、行けなくて血の涙を流しておったぞアッハッハ、とまた高笑いのダイヤ先輩。
「僕たち男は影薄くしとけばいいんだよ」
「あ、はい、そう、ですね」
抗議の声を軽くスルーされた後輩君へと僕は、そっと肩に手を置き、フォローをまた入れるのであった。
『従者だからね! じゅ、う、しゃ!』
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
思いがけず6人パーティーになり、スイーツ巡りには少し多い人数の様な気もする。
だが6種類頼んでひと口ずつ食べる、というのは効率いい気がする。
もしくは半数に分かれ、多くの店をまわり、厳選した品を持ち帰りにして集まる。という手もある。
「よし! 勝負だ!」
作戦会議も兼ねて、コウカ駅近くのカフェ、キャンベル・アイリーンでパンケーキとパフェを食べる事に。
注文して即、この発言。
もちろんダイヤ先輩だ。
「男女3組に分かれて、これって奴をひとり1品ずつ持ち寄る。
それで一番美味いスイーツを出したチームの勝ちだ」
この人は本当に勝負事が好きらしい。
しかもえらく負けず嫌い。
先日の修行でよっく分かった。
「いいわね! 受けてたーつ!」
あ、ここにも居たよ負けず嫌い。
まあ、ふたりのリーダー格がやる気ならば話は早い。
ダイヤ先輩師弟、獣臣ズの許嫁カップル、そしてヒトゥリデと僕の主従コンビ。
斯くして3チーム対抗、超絶スイーツ採集勝負の火蓋は切って落とされたのであった。




