表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

39/72

4の10話

 さいは投げられた。

 本来ならば投げる前、マジックキャンセラーの効力がある内に、肉弾戦で組伏せるべきであったのだろうが。


 だが11人中、まともに戦えるのは半分もいない。

 まして魔法戦になだれ込めば、お婆様はどうだか分からんが、魔法体験者は僕だけだ。

 しかも僕以外があの魔法を食らっていたら、間違いなくそいつはあの世逝きだった。


 だから迎い撃つ形になって……ある程度お婆様が仕切れる今の状態の方が結果的に良かったと言える。

 混戦のど真ん中にあの業火インフェルノなんかぶち込まれたら悪夢である。

 今の態勢なら、至近距離の魔法以外はお婆様が防いでくれそうだ。

 いや、実際、防ぐ光景が見えるんだけどね、能力で。


 もうほとんど、回りに青色は感じられない。

 チラとセシリーの持つマジックキャンセラーを見ると、弱々しく光が明滅している。

 戦闘の開始を知らせるのは、完全に停止した時のこのアイテムなのだろうか。


『うう、消える。消えちゃうよおお』


 ヒトゥリデが泣きそうな声を、心の中で上げてくる。


 ヒトゥリ様、誰でも使えるとありましたが、その杖は昔の魔道具です。

 魔力を込めなければウンともスンとも言いませんよ。


『ちょ、ちょっと、こんな直前に!』


 どのみちマジックキャンセラーが切れなきゃ試せないんだから一緒です。

 大丈夫、出来ますよ。魔力を目一杯込めて下さい。

 ヒトゥリデ・ショルトカは魔法王国ホーの、正統なる王位継承者ですから。


『な、何そんな……

 バ、バッカじゃないの……』


 なんたってハイエルフですからね。

 自分の魔力を信じて下さい。


『もう……仕方ないわね。

 エンシェント・ドラゴンにでも変化へんげしてあげるから、待っていなさいね』


 はい。でも早めでお願いします。



 僕はヒトゥリデとの会話の為に思考を高速化していた。

 それと同時に、時間の進み方は遅くなっている。

 それを解こうと意識した時、時間が完全に停止した。


「ヒトゥリデのフォローありがとう、えっと、その……」


 もちろん、こんな事が出来るのはお婆様だけだ。


 僕はテルオ。

 ヒトゥリデの執事です。見習いですけど。


「おお、テルオ君ね。

 弟子の名前は覚えておかんとな」


 うう、勝手に弟子入りまでが決められている。


「して、テルオ君は奴の攻撃に対してどう対処する気かね」


 はい。

 僕には魔法耐性があるので死ぬ事はありません。

 ですから最前線で魔法を引き受けます。

 お婆様は遠距離攻撃を全て防げますか?


「無詠唱に対向するのはしんどいが、何とかしよう。

 あと、ミィンナデだ」


 は?


「名前だよ、俺の名前。

 アケミ以外にもお婆さん呼ばわりされるとへこむ」


 あはははは。

 はい、ミィンナデさんですね。

 では魔法は我々が受け持って……


「うむ、攻撃はアケミとヒトゥリデに任せよう」



 ミィンナデさんは言うと、時間停止を解除した。

 解除するや即、彼女は大きく声を上げる。


「お前達、マジックキャンセラーに意識するのはやめろ!

 奴は停止前に突っ込んで来るかもしらん。

 前衛は特に、奴から意識を逸らすな!」


「「「はいっ!」」」 

 

 ミィンナデの声が部屋に響き、全員気合いの乗った返事をする。

 そう、マジックキャンセラーの効果が切れてから戦闘開始などと決まっている訳ではない。

 そう。決まっていないのだ。


 ダッ!


 僕はひとり、ミィンナさんが庇う様に立つ集団から飛び出した。

 あと数秒はマジックキャンセラーが明滅してくれるだろう。

 至近距離まで詰めれば、数発は僕に撃たざるを得ない。


「撃てるもんなら撃ってみろーっ!」


「小癪な! 大氷柱(ヘル・アイシクル)!」


「のわああああっ!」


 カッチンコ!


 という具合に僕は氷漬けにされてしまった。

 マジックキャンセラーが明滅している影響を受け、途中で魔法が止まったにも拘わらず、人ひとりを包み込む氷柱つららが地面から生えたのだ。


「おほほほほ、氷ならどうじゃ?

 そなたは先程、炎で死ななかったでおじゃるからの」


「テルオ君! ああっ、でももう、マジックキャンセラーが……」


「切れたか。来るぞ!」


 ミィンナデの声に、皆緊張して身構える。

 それを庇う形で一歩前に立ち、ミィンナデは目に追えない速さで唇を動かす。 


飛火球ヘル・ファイア!」

魔法壁マジック・ウォール!」


 悪魔人形の右手のひらから飛び出した巨大な火球は、ミィンナデよりも手前1メートル程に出現した光る障壁に阻まれ消滅した。


「よし、私も行くぞ!」


 勢いよくダイヤ先輩が前に出る。


「アケミ、テルオ君の陰に入れ! 氷を溶かす!」


 おっと、ゆっくりしていると魔法を無駄撃ちさせてしまう。

 僕は危険回避の能力を使い、


 ガシャアアーーン!


 と、派手に氷柱を内側から粉砕した。


「な、何でおじゃるかーっ!」


 戸惑う悪魔人形セバスチャン。

 僕は前に進み、氷の破片と共にダイヤ先輩の盾になった。

 後ろでダイヤモンドリングに力を込める彼女を感じる。


「ふ、付与っ! 物理攻撃無効フィジカルバリア! でおじゃるっ」


「貴様! 歯を食いしばれ!」

  

 僕の脇からすり抜けて、殴りかかるダイヤ先輩。

 付与魔法を自らにかけ、顔面の前に両腕をクロスしてガードする悪魔人形。

 両者が僕の目の前で激突する。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ