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4の9話

「おばあちゃん、何でここに?」


 アケミ・ダイヤモンドは目を丸くして、悪魔人形を殴り飛ばしたエルフ美女に声を掛けた。


「「「おばあちゃん!?」」」


 もちろん驚く一同。

 おばあちゃんと言われた女性はどう見ても20代。

 頑張っても、落ち着いた雰囲気からギリ30位か。


 だがそれは、彼女がエルフだという事を考えればそこまで不思議な話ではない。

 そのエルフ族が祖母だというダイヤ先輩に、皆は一番驚いているのだ。


「あんた達、今はそんな事置いといて、目の前の敵に集中なさい」


「「「!!」」」


 あまりに派手な「おばあちゃん」の登場で一瞬忘れてしまったが、悪魔ともあろう者がグーパンチ一発で消滅する訳がないのであった。

 ヨロヨロと起き上がってくるあたり、かなり効いてはいる様だが。


「お婆様、ぶん殴るより、時間停止している間に倒せたんじゃありません?」


 僕は思った事を素直に口にした。


「この俺が……」

「おばあちゃんが……」


「「そんな姑息な事、出来る訳なかろう!」」


 ハモるふたりに『ホントだ、親族だ』と全員が納得。

 気持ちを引き締め、悪魔人形を注視する。

 ちょうど彼|(?)は立ち上がり、身構えた所だった。


「お、おのれ、この、下等生物どもがあ」


 おそらく生物でもない存在から、見下した物言いをされる一同。

 まだ若干、足がプルプルしている様子。


「おい、貴様!」


 ビクッ。


 お婆様が声を掛けると一瞬ビクつく上等種。

 もうダメなんじゃないの? 悪魔くん。


「ああ、すまん、君? お前? いや……名前は?」


「ま、麿まろはセバスチャンです……おじゃる」


 またセバスチャン!

 都合3人だよ!

 まあ、ひとりはダイヤ先輩が勝手に呼んでるだけだけど。


「よし、セバスチャン。私とヒトゥリデは王家の者だ。

 お前も一応は杖を守るゴーレムになるのだろう?」


 そうだった。

 王家の血はゴーレムを無力化出来るはずなのだ。

 ヒトゥリデではどうやるのか行き当たりばったりだったが、お婆様ならご存知なのかも。


『あ!』


「本来ならばあの子に襲いかかる事など出来ぬはずなのだが?」


 ん?

 どうやら自動的に発動するっぽいな。


『そ、そ、そうだと思ってたから、私何もしてないんだもん』


 ……あ、そうですか。



「おほほほほ……

 確かにおふたりには強くドゲン様の香りがするでおじゃる。

 そして、そこのセクシイYシャツ娘からも少しはね」 


 むむ、ちょっと気持ちが落ち着いたのか、軽口を叩く余裕を見せる悪魔くん。

 って、ええ? 気付いてたの?


「ほう、それが分かっていても退かぬ、と?」


「麿にも矜持きょうじがごじゃる。

 ドゲン様の臣として、おいそれと退けぬでおじゃる」


「その意気や天晴れ。……だが、ちと腑に落ちんのう。

 この魔法はゴーレムの製造段階での話だからな」


 ふたりの会話から、やはり本来は自動で発動する、ゴーレムの抑制装置の様な魔法があったみたいだ。

 それとも、このゴーレムはやはり別格で、召喚した悪魔の意志を尊重する物なのか?

 

我が社(うち)のマジックキャンセラーが効いているのかな……」


「「「おお~っ」」」


 セシリー・マツシマの呟きに皆は合点がいった様な気がした。

 機械の動作を強制的に止める為のアイテムだ。

 精神と憑依体の結び付きが強くても、予防措置の様な魔法はカットされても仕方がない。……気がする。

 

「だけど……」


 それは違うと思う。


「僕が魔法を食らった直後、コイツはヒトゥリ様に魔法を放とうとした。

 あの時、マジックキャンセラーの効果は切れていたはずだ」


 たとえあの時点でセシリーがマジックキャンセラーのスイッチを入れていたとしても、杖に駆け寄るヒトゥリデを排除しようとしていた動作に途切れは無かった。

 マジックキャンセラーの効果が切れた時間がある以上、その間は動きが止まるなりしないとおかしい。


「いえ、ダイヤモンドさんも我が社のマジックキャンセラーを使ってらした様で。

 たぶん、その時に魔法が解除されているのかと。

 我が社のマジックキャンセラーは高性能で、緊急時に優秀ですから」


 そうか、ゴーレムの再生、再起動のような単純にして根幹の魔法は停止までだが、付属というか後付けな魔法だと解除してしまうのだろう。


 いや、それだけではないのかもしれない。

 そもそも普通なら最初の段階で機能停止なのだ。

 やはりこのゴーレムが特別な存在ではあったのだ。


「おほほほほ。

 お喋りをしてくれたお陰で、結構その力は弱まった様でおじゃるな」


 しまった。

 高性能ではあるが、出力を最大範囲にしている為、バッテリーが長く持たない。

 見回すと確かに青い光が薄くなって来ている。


「いかん!

 魔法の勝負になれば分が悪いぞ」


 ダイヤ先輩が皆に注意する。

 悪魔は直接攻撃よりも魔法による攻撃が得意だといわれる。

 先程僕は身をもってご披露したが、詠唱無しに、えげつない凶暴さだった。


「お前達、俺の後ろに集まれ!」


 お婆様が叫ぶ。

 お婆様の睨みが牽制となり、指示通り速やかに全員移動する。

 祭壇は背後、「ドゲンの杖」はヒトゥリデの手中。


「初撃は俺が止める。

 2発目が来る前にアケミは殴れ!

 ヒトゥリデは魔法を放て!」


「はいっ!!」

「ええっ!?」


 ヤル気充分な先輩に反し、戸惑うヒトゥリデ。


「ヒナエルダの娘は人間を庇え!

 精神統一したらレジスト出来る」


「はい!」


「ヒトゥリデ、その手にある杖を使え!

 変化へんげすれば楽に魔法が使える。

 とにかく一番強力な奴をぶっ放せ!」


 い、行き当たりばったりで変化の杖!?


「テ、テルオ~っ、どうしようううっ」


 もうやるしかないですよ。

 ほとんど光が消えてますから……

 

「お婆様が止めた直後、僕はダイヤ先輩より先に出て、2撃目を塞ぎます。

 ダイヤ先輩、いいですね」


 僕は彼女にそう言い、強い意志を込めて見詰めた。

 それを受け、分かったと頷くダイヤ先輩。


「何か手がありそうだな」


「はい。

 ですから……」


 最後にもう一度ヒトゥリデに向き直り。


「ヒトゥリ様はその間に何とかして下さい」


 任せました!


『任さないでよおおっ!』

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