4の5話
ヒトゥリデ一行の奇妙な行軍は、鳥居を潜った所でやっと終了した。
鳥居の根元に「結界ココまで」と親切な看板が立ててあったからだ。
比較的新しいところを見ると、定期的に行われるというワンコ、ケンシ合同の動作チェック時に取り替えているのだろう。
それは大変ありがたいのだが……
我々全員疲労困憊、思わずその場にへたり込む。
会敵する前に気力をほとんど持っていかれた。
なにしろ距離が長いのだ。
1キロ以上は歩かされてしまった。
どうやらケンシ村との中間点の様だ。
「こんなに遠いなら最初に言ってほしかったわ」
掛け声のリズムを取っていたカーナが愚痴る。
おそらく皆もそう思っていた。
知っていても歩く距離が変わる訳ではないのだが、精神的なダメージは今よりもずっと軽かっただろう。
「あの神社っぽいのが入り口みたいですから、入る前にひと休みしましょう」
唯一疲れていない僕が、疲れたフリして提案する。
ヒトゥリ様、無理しないで下さいね。
『き、貴様は本っっ当に底意地の悪か男やね』
なんで! 心配してんじゃん!
『はいはい、取って付けたみたくね』
んぐっ。
「そうね、取り敢えず小休止しましょ」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
ズズウゥゥン!
超巨大ゴーレムは地響き立てて倒れ、そして崩れた。
全長5メートルはある天井すれすれの巨躯も、終わってみれば手前のゴーレムの方が手強かった気がする。
確かにパワーと攻撃範囲の広さは11体中最強ではある。
だがスピードを犠牲にしている時点でダイヤ先輩の敵ではなかった。
当たらなければ意味がない。のである。
「いやあ、前の奴から出てきたコイツ、いいなあ」
実に、ご満悦のダイヤ先輩。
10体目のゴーレムには裸に剥かれる程苦戦した先輩だったが、マジックキャンセラーで休憩を取った後の第2ラウンドで即快勝。
砂になったゴーレムの、何故か右手装甲の一部が硬質を保ったまま残ったのだった。
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「ダイヤちゃん、これってドロップアイテムって奴じゃない?」
「おおっ! そうだ、ドロップだぞ」
喜ぶ先輩方だが、ドロップ率10%は低い気もしますけど。
まあ、そんな副産物があるとは思ってなかったから、純粋に嬉しいっちゃあ嬉しい事ですが。
「師匠、これってやっぱり師匠の戦闘スタイルに合わせた武器なんですよね」
確かに。
ナツキの言葉は正解な気がする。
このドロップアイテムはナックル……いや、メリケンサックだ。
指の上だけに装備される武器で、このダンジョンが作られた時代の主装備とは到底思えない。
先輩の素手での攻撃が反映されたのはまず間違いない。
「そうだな。
やはりドゲン公は追い払う為だけにこの地を作った訳ではなかったのだ」
僕らはダイヤ先輩の言葉に無言で頷くのだった。
「なんか趣味で悪ノリまでして作った気もする」
カヨ先輩の言葉にも僕らは深く頷き合うのであった。
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メリケンサックを装備した先輩の強さは目を見張った。
元々理解できない破壊力の先輩だ。
素手、素足で岩石の様なゴーレムを粉々に砕いていた。
それがこの武器を装備して先輩が殴ると……爆砕するのだ。
11体目のゴーレムは巨体だった。
見慣れた巨体とはレベルの違う超巨体だった。
その巨大な拳が地面に打ち込まれた瞬間、手の甲部分を先輩は殴った。
その瞬間、ゴーレムの右腕全て、肩まで残さず爆発した。
僕らはあんぐり口をあけて驚いたが、殴った本人も目を真ん丸にして驚いた。
といった具合で……
この武器を手に、難なく11体目を倒したダイヤモンド盗賊団なのであった。
いえ、ダイヤ先輩なのでした。
「この、私の為にあるかの様な武器。
この武器に名を与えよう」
「「「おおーっ!」」」
「今からコイツはカイザーナック……」
「「「ダメーーッ!」」」
先輩、恐ろしい発言はやめて下さい。
オリジナリティーたっぷりでお願いします。
「せっかくダイヤちゃんピッタリの武器なんだからアケサックとかは?」
「ううっ、カヨちゃん、それは……」
うわあ~、何それ。
あと○○サックも危険な香りがするからやめてほしい。
「師匠、ダイヤモンドリングとか……」
ナツキが遠慮がちに発言した。
シンプルにダイヤの指輪に掛けてる所がいいと思う。
あと、先輩の指輪には御誂え向きだし。
「うん。それでいいか。
おっと、本当の指輪はナツキがくれるんだろう?」
そう言ってまたいつもの高笑い。
なにサラッとセクハラ発言してんだか。
チラとナツキを見ると耳まで真っ赤に俯いている。
……まさか、ね。
「よし! 行こう!
そろそろラスボスの出てくる頃合いだろう」
僕らは気を引き締めて先へと歩を進める。
部屋の奥に長い階段がある。
先程のゴーレムが巨大だった為か、このフロアは天井が高いのだ。
先輩方が文句を言いながら昇っていく。
魔法でエスカレーターにしろとか、バカじゃない。
やっと上の階に上がっても更に上に奥に階段が続く。
また文句を言うかと思ったが、表情は厳しかった。
明らかに今までの階と造りが違うからだ。
洞穴の奥へと向かう様に上って行く通路。
やがてなだらかな階段を上りきると、そこは小さなフロアで奥中央に扉がひとつ。
見るからに重く豪華な、この場所に不釣り合いな扉であった。
ダイヤ先輩の予言通り、この先が目的地で間違いないだろう。
そしてそこを守護するゴーレムも、今までとは別格だという事も間違いないのだろう。
お忘れかもしれませんが、ナレーションは全てテルオが行っております。
ミチ視点でもテルオがミチ風にナレーションしております。
ですからダイヤ先輩の発言で小説世界に危険が迫る時、テルオの能力で回避しております。
今回は本筋ではないので、説明を割愛しております。
気にする人がいるかなと、作者は気にしております。
くどっ!
読んでいただきまして、ありがとうございます。
次話もどうか、よろしくお願いいたします。




