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4の3話

 ヒトゥリデ一行はトンネルを抜けて、コウカの街で列車を降りた。

 僕らは足早に正面口であるコウカぐちの反対側、ツクシ口へと向かった。


「こちらです、姫」


 ワンタロウが先頭に立って先を急ぐ。

 彼の父ワンダユウからの指示で、先ずはコウカにあるワンコ家の施設に寄るという。

 その方が城から直接、車で山向こうのワンコ村に向かうより早いのだそうだ。


「ワン太君! 姫はやめてって」


「はいっ! ヒトゥリデ様、すみません」


 どうも山の連中は時代劇みたいで困る。

 隠れ里とは言っても、もう村人の結構な数はコウカなりホーなりで働いているのだ。

 第一、このワンタロウにしたってコウカの高校に通っているじゃないか。

 街の人とは今どきの言葉で話しているくせに、身内とは時代錯誤な口調になる。


「方言みたいなものでして……」


 僕の疑問の解答みたいな言い訳をしながら、ワン太は頭を掻き掻き謝った。


 駅を出て大通りを渡って直ぐにあるビル、コウカスターレイ。

 ゲームセンター、ボーリング、イベント会場等があるちょっと大きめのビルだ。

 その入り口前にワン太の父、ワンコ村長ワンダユウが立っていた。


「姫! こちらです!」


 僕らが近づくと踵を返しビル内へ向かう。

 コウカスターレイがワンコ村の所有している施設らしい。


「だから姫はやめてって!」


「むむっ! ヒトゥリデ様、申し訳なく……」 


 急ぐ足を緩める事なく、ワンダユウは頭を掻く。


 関係者以外立ち入り禁止と書いてある扉を開いて奥に進み、つきあたりのエレベーターで地下へと向かう。

 B5という表示で扉が開くと、駐車場の様な階だった。


「この部屋です」


 ワンフロアーに壁は無く、柱が十数本だけ。そんな景観が駐車場に見えるのだろう。

 そこには車もなければ、駐車スペースを示す白線もない。

 ワンダユウは先に進み、柱にあるスイッチらしき物をひねった。


 ゴウン、という音とともにスイッチがあった柱の上部から一本の光が左側に走る。

 光はその先にある柱に当たると、更にその柱から別方向の柱へとまた伸びて行く。

 次々と柱に当たる度に光は角度を変えて行き、最後に元の柱へと戻って来た。


「六芒星か!」


 ワンタロウが光の辿った線を見て叫んだ所を見ると、彼も知らない装置の様だ。

 相当使われていない部屋なのだろう。

 秘密の部屋なのかもしれない。


「そう、魔法陣じゃ。

 緊急時、里のわしの部屋へと移動する為の転移装置じゃ」


「「「おおおーーっ!」」」


「正にこれ以上の緊急時は無かろうて。

 ささ、姫様、すでにチェックも済ませております」


 ワンダユウは僕ら6人が光の中心へと収まったのを確認し、先程とは別のスイッチを入れて自らも駆け込む。

 直後、六芒星の内側の空間自体が輝きを増していく。


「もう一回だけ言っとく。

 次は無いからね……

 姫様はやめてって言いよるやろがっ!」


 ヒトゥリデがそう叫んだ時、皆の視界は白一色になっていた。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 ゴオオオオオッ!


 いびつで巨大な岩石のこぶしが唸りを上げる。


「キャーッ! ダイヤちゃん、危ないっ!」


 竜王山内部のダンジョンではダイヤモンド盗賊団こと、コウカ東高校美術部が10体目のゴーレムと戦闘を行っている。

 いや、戦っているのは最初からダイヤ先輩だけ。

 僕はマジックキャンセラーを構え、カヨ先輩とナツキは応援だけ。


 ビッ!


 鋭いパンチは寸での所で回避出来た。

 ダメージは無い。


「先輩っ、もうだめです! 

 マジックキャンセラーを使いましょう!」


 僕はぱっと見デッキブラシという形をしたそのアイテムを前に突き出す。


「いやミチよ、まだダメだ! もうちょいイケるっ」


 ブウウウン!

 ビリッ!


 逆手が迫り、またギリギリでかわす。


「も、もうだめ……

 師匠、僕、見てらんない」


「大丈夫、ノーダメージだ。問題ない」


「「「問題大ありーっ!」」」



 ダンジョンを進むほどにゴーレムは強くなった。

 最初は楽に倒せていたダイヤ先輩も、7体を過ぎると流石に手こずり出す。

 9体目で遂に攻撃が掠めて来た。


 現在対峙する10体目には、さっきから攻撃を回避はしているが、微かに当たっている。

 少しずつ、少しずつ、確実に削られているのだ。


 服が!


 上着、ジーンズはもう布地ひと切れも残っていない。

 スポーツブラは最早ブラジャーとは言えず、ほとんど紐。

 かろうじて胸の先端の突起で引っ掛かり、自身をギリギリ隠せている。


 そして下半身。

 厚めの生地の白いショーツも無事ではなく、サイドがやはり当たり易いらしく切れる寸前。

 こちらもまるで紐パンになっている。


「胸が、胸が揺れすぎて邪魔だーっ」


 本人もなんか愚痴っているけど余裕あるのか?


「ダイヤちゃん、それ当てつけでしょ! 私に!」


 カヨ先輩が自身のコンプレックスから過剰に反応する。

 今それどころじゃないですよ、先輩方。


「いやいやいやいや、ホントにホントだって」


 確かにゴーレムの攻撃を避ける度に、たゆんたゆん、たゆんたゆん、と揺れる揺れる。

 これは思春期男子の目に毒です。

 チラと横見ると、ナツキは耳まで真っ赤になっている。


「大き過ぎるのも考えものだな。アーッハッハ……」


 バキィ!


「のわあああ~っ」

「ダイヤちゃーーん」


 言わんこっちゃない。

 裏拳が素早く返ってきて、まともに食らう。

 いや、咄嗟に後ろに跳んだので衝撃は半減している。が--


 ピラッピラッピラ……


 紐状の布切れが宙を舞う。

 ぐうう、と呻きながらも起き上がり……

 急ぎ距離を取る先輩の左足付け根()()にはペランと布切れが。


「マジックキャンセールッ!」


 僕は迷い無くアイテムを使用した。


 

 

 


  

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