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3の2話

「ヒトゥりーん!」

「ヒトゥリちゃーん!」


 日が暮れる頃、心身共にくたびれ果てて城に戻ると、居間から友人2人が駆けて来てヒトゥリデに抱きついた。

 もちろん友人とはエルフのカーナ・ヒナエルダと人間のセシリー・マツシマの事だ。

 僕らを心配して、帰りを待ってくれていたらしい。


 目の眩むような光の後、ヒトゥリデとテルオの姿は消えて……

 席には2人の手荷物だけが残されていた。

 あわててスマホに連絡をするが、ヒトゥリデのバックから着信音が流れて来る。

 とにかく城に戻って、ヒトゥリデの家族に連絡を。と思ったのだとか。


 列車を引き返して、城内の家族に話をするべく急いで駆けつけた時、丁度ケンシ村から2人の無事を知らせる電話があった。

 それでそのまま彼女らもここに--という訳だ。


「急にケンシコの一族から連絡があった時はびっくりしたぞ」


 じいちゃん……ドゲン様も奥から出迎えてくれて、僕らを見ると安堵の息を吐いていた。


「あ! おじいちゃん、杖の鍵が盗まれたのよ! どうしよう!」


 祖父の顔を見ると、ヒトゥリデは心配でそう泣きつく言葉を吐いた。

 自分らが帰路に着いている間におそらく、ケンシ、ワンコの方から報告は行っているだろう。

 この4千年で最初にして最大の危機的事態だからだ。


「そうなんじゃ。

 ちょっと前にもワンコの奴が電話してきてなあ」


「んん?」


 どうもドゲン様とヒトゥリ様に温度差がある様だ。


「そうそう、あやつも鍵がどうとか騒いでおったが……杖?」


「そうよ! ドゲンの杖よ! 

 ソレ、おじいちゃんのでしょ!」


「ムムム、何か聞き憶えのある名前……」


 覚えもナニもあんたの名前だろ。

 ああ、杖自体に聞き覚えがあるって事ね。

 

「ああ~持ってたな、確か。ドコやったっけ?」


「だから封印させたんでしょ、じいちゃんが、家臣に!」


 ああ、もう駄目だなコリャ。

 完全に忘れてますよヒトゥリ様。


『ほんと、やっぱりおじいちゃんはアテにはなんないわね』


 やはりこの件はヒトゥリ様と僕とで対応する事になりそうですね。


『仕方ないわね』



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「どうするの! 杖も盗られちゃうよ!」


 遠くの空に小さく見えなくなって行く「どろんYS」を指差しながらヒトゥリデは叫んだ。

 確かにこのまま、飛んで、鍵開けて、お宝ゲットさようなら。世界の混乱こんにちは。

 それじゃあ洒落にもならない。打つ手無し。

 だが「どろんYS」が飛んで行った方角は山じゃない。


 僕らの背後--

 この村を見下ろす様にそびえているのが、おそらく竜王山。

 お宝封印の山だろう。

 しかし賊は逆方向に去って行ったのだ。


「いや、彼奴きゃつらは今すぐ山には向かわんでしょう」


 ヒトゥリデの問いにケンシ村長が答える。

 何か根拠のある口振りだ。


「どうして?」


「はい。鍵とは言ってもそれで錠前を開ける、という訳ではないのです。

 前門と後門2つの鍵を合わせると、結界内に入れる様になるのです」


「結界?」


 村長の話では竜王山に杖を封印してあるが、その竜王山全体には結界が張ってあり、侵入者を阻んでいると。

 鍵の半径3メートル内の者だけが結界を通過出来るらしい。

 内部ではゴーレムが守護しており、装備を整えないと、とてもじゃないが突破出来ないとの事。

 

 数十年置きに、ケンシ、ワンコ村合同で鍵の動作チェックをしているらしい。

 その際ゴーレムの様子も見て来るのだが、両村選抜の精鋭チームが命懸けでの確認作業なんだとか。


「賊は完全装備で侵入を図るでしょうな。

 手前で抑えられればよいのですが、山全体を24時間の警備ではちと厳しいでしょう」


「じゃあ入られちゃったら、後はゴーレム頼み?」


「いえ、結界に誰かが入ると両村に警報が鳴る様になっております。

 ゴーレムに時間稼ぎをさせ、王族のどなたかが駆けつけ次第、討伐隊を出します」


「へ?」


「王族の方には鍵と同じ力がありますれば。

 それとゴーレムに命令を下せますので挟み撃ち出来ます」


「「おおーーっ」」


 思わず楽勝だろう、なんて思ってしまった。

 んな訳ないのに……

 と、とにかく油断はイカンという事。

 ね、ヒトゥリ様。


『そうね。

 これ十中十、私が行く流れでしょ?』


 そうでしょうね。

 主人公ですからね。

 それなら情報をもっと集めた方がよくないですか?


『ごもっとも』

「ワンダユウさん、相手側はどれくらい竜王山の事を知っているの?」


 主な話をケンシ村エイコ村長に任せ、自分は脇で息子と控えつつ此方を見つめているワンコ村ワンダユウ村長に、ヒトゥリデは声を掛けた。

 ワンダユウ村長は実に申し訳ないという顔で、今話していた内容は全てと返してくれた。


「俺のせいです! 俺が間抜けなばっかりにっ」


 ワン太が急に土下座して謝って来た。

 さっき父親と謝ったときに許してやったのだが、ここでの失態は確かに全て彼なのだ。

 居たたまれないのだろう。


「まあ、過ぎた事は仕方ないわね」

「汚名返上に一緒に来てくれるんだろ?」


「は、はい! もちろんです!」


 僕の一言で、討伐に向かう王族はヒトゥリデだと宣言した様なもの。

 一瞬何を言われたか分からなかったが、意味を理解して快諾するワン太。

 ちょっと荒れていたが、根はいい奴っぽいな。


 あと知りたいのは……杖の能力ってとこかな?

 向こうが何を目的にアイテムを手にしたいのか。

 知った方が対策に繋がるかも。


『おおっ、そうね。私もそう思ったかなあ』


「ねえ、おじいちゃんの杖って、どんな能力で危険なの?」


「「「…………」」」


「わかんないの!?」


 4千年、守る事が目的であって、余計な詮索はしない忠臣の一族であった。 

 


 

テルオはスマホを持たせてもらえません。

私が持ってれば必要ないでしょ。との事。

持たせてたら、友人に余計な心配をかけずに済んだのですが。

どうせ動画ばっか観る気よ。いやらしい。との事。

ああ、ヒ◯キンとかね。

絶対ウソ!


読んでいただきまして、ありがとうございます。

次話もどうか、よろしくお願いいたします。

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