おまけ
「うえええええ~ん、酷いよう」
子供の様に泣きじゃくるヒトゥリ様。
まあ、見た目はまだまだお子ちゃまなんで似合うっちゃあ似合う。
「おおヨチヨチ。怖かったよねえ~」
その見た目以上に幼くなっているエルフ美少女を、もうひとりの美少女エルフが抱き締め頭を撫でている。
夕方学校帰りに心配して旧王城へ立ち寄ったカーナが、ヒトゥリデを思いっきり甘やかしているのだ。
「ヒトゥリちゃん、大丈夫?」
抱き合うエルフふたりの傍らには、ご近所の人間美少女セシリーが心配して様子を伺っている。
今僕の目の前には、美少女3人が百合的展開に発展するのか、しないのか。
セシリーの行動如何によっては、ひょっとすれば、ひょっとする。
これは小説のタグにレズビアンを追加するチャンスなのではなかろうか。
キーワードってのは、あれば何でもいいという訳ではないが……
ふふふ、私は欲張りなのだよ。
「ヒトゥりん、大丈夫よ。お姉ちゃんがみんなに話してあげたから。
ヒトゥりんはテル坊を虐めてなんかないよって」
「ほんと?」
カーナは可愛い妹分を安心させようと、僕らが去った後にクラスメートは懐柔させたと伝える。
それを聞いて安心半分、不安半分のヒトゥリデ。
「そうだよヒトゥリちゃん。
そうじゃなきゃ、テル坊君、あんな風に、手を引いて教室、後にしないし……」
カーナはヒトゥリデを猫可愛がりだが、セシリーは複雑な心持ちらしい。
セシリーは僕の事が好きなのだ。が、教室を出る時の態度を見て、僕はヒトゥリデに気があるのでは? と勘繰っている。
更には、ヒトゥリデの口が悪いのは、彼女も僕に惚れてるんじゃないだろうか、と疑ってもいる。
「ええっ!?」
「あ! ヒトゥリちゃん、そんな、そういう意味じゃなくてっ」
今のヒトゥリデの反応は僕のナレーションに対してだったが、丁度セシリーの言葉にも合致してた。
もういい加減、ナレーションにリアクション取るのはやめてほしい。
まあ、今回は散々それを利用して、クラスで悪役になってもらったんだけど。
「ムムムム……」
「ご、ごめんね」
だからリアクション取っちゃダメだって。
セシリーちゃん、ヒトゥリ様を怒らせたって思ってるよ。
「ち、違う、違うよセシリーちゃん」
「え?」
「テルオが思わせ振りな態度取っちゃってたな、と思って。
……でもね、彼、男が好きだから有り得ないわよ」
えーーーーーーーっ!
「えーーーーーーーっ!」
「えーーーーーーーっ!」
ヒトゥリデ以外の3人同じ声を上げる。
僕は心の中でだけど。
ヒトゥリ様? どういうつもり?
『お前は欲張りなのだろう?
レズビアンは最早無理。
だから私が別のキーワードを付けたげる』
と、心でヒトゥリデはほくそ笑んだ。
「テルオいや、テルミーナちゃん、可愛いのよ」
心だけじゃなく、ヒトゥリデはしっかり笑顔になっていた。悪い笑顔に。
そんな彼女につられてカーナとセシリーもニンマリと悪魔の様な笑みを見せる。
まあ、この程度でお嬢様方の親睦が深まるなら、一肌でも二肌でも脱ぎましょう。
僕は栗原テルオ。
この物語世界のナレーターだ。
全てを見通せるかと思っていたが……
主人公ヒトゥリデ・ショルトカの突飛な行動は予知出来ないらしい。
作品情報のタグに「男の娘」というキーワードが入ってしまった。
今回で第1章おしまいです。
第2章は冒険します。
どういう意味かは……まあ次回。
読んでいただきまして、ありがとうございます。
次話もどうか、よろしくお願いいたします。