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春香さんがやって来る!!  作者: 潜行花火
6/6

6話:夜会

 帰る頃にはすっかり暗くなっていて、両親に酷く怒られた、携帯には両親と夏菜の着信がたくさんあった。

 僕の様子を見て両親は説教をほどほどにして夏菜の家に電話してくれていた。

 どうやら夏菜は僕の事を探してくれていた様だった。


 無性に夏菜と話がしたくなった、でもなにを話したらいいのか僕には、今の僕にはわからない


 またしても、夏菜から着信があった。


 「あんた、こんな時間まで何処に居たのよ」

 「ごめん」

 なにも、考えずに出てしまった。

 「どれだけ心配したと思ってるの」

 「本当にごめん」


 「ごめんじゃなくて、何処に行って何してたの」

 「それは、、ごめん」

 思わず口ごもる


 「ごめん、ごめんじゃねえ」

 「今からお前ん家に行くからな待ってろ」


 ブッチと彼女の怒りの大きさを表すように携帯が切れた。


 僕は夏菜が来るまで血だらけのノート再度読み直す。

内容は秘密基地での出来事が書いてあった。ある日ハルナちゃんが、バスケットボール大の機械の卵の様なモノを拾って持ってきた。

 名前の解らなかったあの子の名前はハルナと言うらしい事が、このノートを通して解った。

 ハルナちゃんと口の中で繰り返してもまるで実感がわかない、なにも思い出せない。

 ハルナちゃんはこの卵を羽化させようと様々な方法を試すのだが、卵は一向に羽化しないまま月日だけが流れていく。


 そしてある日を境に日記は唐突に終わりを迎える、途中から赤い液体によって日記は読めなくなってしまっているのだ。


 どうなってしまったのか、なにも解らないけど、きっと春香は知っているのだろう。

そんな時に春香から着信が鳴る。

 「馬鹿だな君は」

 「そうかもね」

 「全てを知りたいならこれから学校に来なよ優しい春香さんが君に真実を教えてあげるから、君の世界の真実をね。」    

 「30分だけ待ってあげるから早く来てね」 

 そこで会話が途切れると僕はこっそりと家を飛び出して自転車を漕いで漕いで学校に向かう。僕の足はもう鉛の様に重くはなかった。それが哀しい事なのはわかっている。


 夏菜の事が気がかりだけど、だけどここを逃したら僕は一生後悔するかもしれない。


 それでも僕は前に進まないと不安で不安で押しつぶされそうになるんだ。

学校に着くが誰も居なかった。


 「いやー早かったね」    

 春香はスポーツドリンクを僕に投げて渡してきた。自分はコーラを飲んでいる。

 「ん、コーラは上げないよっと」

 話ながらガチリと学校の正門横の扉を開ける、手には鍵が握られていた。

 春香が学校の中に入って行くので、僕は慌てて後を付けた。警備員や宿直の先生が居るかと想ったが、誰も居なさそうだった。

 春香は真っ直ぐに学校のプールの方に向かう、学校のプールは街灯に照らされて綺麗な水面がゆらゆらと揺れていた。

 春香は今年は少し遅れたらしいけど、来週からようやくプール開きなんだよねと、足を水面に付けてばしゃばしゃと楽しそうに話している。

 「ああでも、君は楽しいを犠牲にして真実を知ろうとしているんだよね」

 「別に悪いことだとは想わないよでもね、君は真実を知って耐えられないようなら」

 「夏菜のように記憶をいじくるのか」

 「パパの判断に任せるよ」

 「パパ?」

春香は、しまったという顔と、なにか今まで一生懸命我慢していたような顔だったような



 「ああ気にしないで、パパと秋津くんは別物だから、そうそう、なにから話そうかなあのノートは読んだんだよね。」

 「途中で読めなくなってたのか、迂闊だったなあそこまでは想定してなかったよ」

 「気付いてるかもしれないけど私はそこに書いてあった機械の卵の中身だよ」

 「えっ人間にしか見えない?そういう風にしてあるんだよどうかな」

 春香の身体が大きな大きな怪鳥を模した機械に変わっていくが、すぐに元の姿にもどる。

 「ごめんね、おどろかせちゃったかな」


 「だけどね、私は自分自身が何故作られたか良く思い出せないんだけどね、まだ私が目覚めて間も無かった頃にママとパパいや違うなパパとハルナちゃんが私に色んな事を教えてくれたのそう色んな事をね、ああママって言うとハルナちゃん怒るんだよね」

 「私はあっという間に大きくなってね隠れ切れなくなっちゃったのでねある日悪い人達がたくさんやって来たのみんな倒しても倒してもね次から次にやって来るんだよ」


 「だから私は悪い人達の記憶を弄るくることにしたの始めは上手く行かなかったんだけど、どんどん上手く出来る様になったんだけどねパパとハルナちゃんが気付いたら死んでたの哀しかったなあ」

 「死んだ人間ってどうやっても生き返ラセルコトガデキナカッタンダ」

 春香は上を見上げてそのままプールに飛び込んだ。ずっと黙って聞いていたが、じゃあ僕はなんなんだと聞きたくなくなっていた。

 「だから私はパパとハルナちゃんを作る事にしたの、でもたくさん失敗しちゃった」

 「でもね少しづつ少しづつ本物に近づいて来て思わずパパって言っちゃいそうになるぐらいだよ今回の出来は」

 「作ったってどういう事だよ」

 「言葉通りだよパパとママの遺体から細胞を培養してねシュミレータを利用して成長した時の性格なんかを何度も試したんだよ」

 偉いでしょ、褒めてよと言いたげな表情で春香は僕の方を向いている。


 「じゃあなんで夏菜って名前なんだよハルナじゃなくて」

 「私はねパパの事が大好きだったんだよだからね、パパの一番大事な人がハルナちゃん解るくらいに成長した時は大好きなハルナちゃんに嫉妬したんだ。私オカシイヨネ」

 「まあ君に言った所でこんな事は解らないかもしれないけどね」

 「でも、やっぱりハルナちゃんが、居ないとパパはパパに成れないんだよね」

 プールの中で泣いている女の子に僕もプールの中に入って近づく夏とは言え夜のプールは想像以上に冷たいけど、春香が泣いている。そのままにして置くのは僕には出来ない。

 「お前が言いたい事はさっぱりわからないけどな」

 僕はプールの中で泣いてる女の子を抱き寄せる。

 「なんでお前が泣いてるんだよ春香」

 「夏菜ちゃんじゃなくて私を選んで」

 春香のわがままは、みんなで仲良くやって行く事のはずだったのだが、募る想いは彼女の心から溢れてしまったのだ。

 「ごめん、でも僕は夏菜が好きなんだ」

 「じゃあなんでプールに入って来たんだよ」

 「春香が泣いてたからだろ」

 「そうゆうとこが」


 春香は水の中で僕の身体をぎゅっと抱きしめた。

冷たい水の中でこの子の腕の中はとても暖かく感じた。

彼女の気持ちの大きさが熱いぐらいだ。


 僕も彼女の事をぎゅっと抱きしめたかったし、勢いで襲いたくなるほど、彼女が可愛く見える。

実際にとても可愛いんだけど、でも、でもでも、ここで抱きしめるのは違う、ちがう


 僕の気持ちとは関係なく彼女の事を思わず抱きしめていた。


 「パシャ」


 彼女はスッと僕から離れる。


 彼女の身体の一部であろう、物体が携帯を操作して僕が彼女を思わず抱きしめた所が、

そこに映っていた。


 「そうゆうところは好きですよ」

 春香は笑って僕に話し掛けるてくる、悪魔の笑みだ。


 気付くと彼女はプールから上がっていた、濡れた衣服が発育の良い彼女の肢体にぴったりと

張り付いて、僕はプールから上がれない。


 「これはなかなか、えろい」

 彼女は写真を見ながら呟くが、正直今の春香の方がえろいと思うが口にはださない。


 「少年はまだまだ、まだまだですね」

 「なにがだよ」


 「まあ、色々とね、とりあえず夏菜ちゃんにこの写真送っちゃおうかな」

 「えっ、おま、馬鹿なの」

 「どうしようかな」

 「・・・」

 「一つだけお願い聞いてくれたら許してあげる」

 「なんだよ」


 春香は後ろを向いて小さな小さな声で呟いた


 「・・ト」

 「ごめん、よく聞こえない」


 「・・ト」

 さっきより小さいんだけど、でもここで聞き返すのは可哀想だ。


 「わっかたよ、デートすればいいんだろ」


 彼女は小さく頷いて、そのまま顔を見せずに帰って行った。

僕はしばらくプールから出ることが出来なかった。


 

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