謎解き編
あなたの夏にこの物語を…
目を覚ますと白い天井が見えた。
真っ白な天井に少年はホッとした。
良かった、何もいない…と。
この間から少年は夜な夜な啜り泣くような声を聞くようになった。
不気味に感じていた少年はついに一昨日、ヤバいものを見てしまったのだ。
天井からつり下がる青白い手を。
それに絡まった濡れた長い髪の毛を。
声を出しそうになるのを少年は必死に堪えていた。
その日はいつもの啜り泣く声ではなかった。
その日の声は嬉しさを滲ませた笑い声だった。
少年は恐怖で動くこともできない様子だった。
手はゆっくりと少年のもとへ伸びてくる。
少年は怖さのあまり気絶してしまった。
目を覚ますと白い天井が見えた。
あの白い手はどこかへと消えていた。
安心感が僕を包む。
手で汗を拭おうとする。
しかし不思議なことに腕が全く動かなかった。
これが世に言う金縛りというものか、と僕は思った。
以前僕は友人に聞いたことがあった。
脳だけが起きていて体は休まっているときに起こるんだと。
驚いたことにその友人は金縛りで半日動けなかったそうだ。
一体なにがあってそうなったんだよ、とため息をついたのを覚えている。
実は金縛りになったあとも友人は気にせずそのまま寝続けたらしい。
それは半日動けなくて当たり前だろう、と思った。
僕はそうならないように必死で起きようと努力した。
どれくらいたっただろう。
体はその後も全く動かない。
可笑しなことに今日は看護士も全くこない。
不思議なこともあるものだ、と思った。
その日は特に気にせずにそのまま寝た。
しかしこれで不思議なことは終わらなかった。
次の日もその次の日も…僕のもとに看護士は来なかった。
僕の体も動かなかった。
可笑しい。
いくら何でも可笑しすぎる。
僕は急に不安になった。
………もしかして僕は…
死んだ、のか?
それなら全てに納得がいく。
てことは…
僕はあの幽霊に殺されたのか?
そんな!
嫌だ!そんなの嫌だ!
これは夢だ!そうだ夢なんだ!
早く覚めないとッ
僕はまだ死にたくないんだ!
起きろ!起きてくれッ
目を覚ますと僕は白い天井を見つめていた。
隣には両親が涙を浮かべてこちらを見下ろしている。
「あぁ良かった!目を覚ましたのね」
「大丈夫か?!お前一週間も目を覚まさなかったんだぞッ」
一週間?
その位僕は寝続けたのか。
なんで?
………駄目だ。全く思い出せない。
「良かった…本当に良かった」
「この間から変な夢を見るって言っていたから、もしかしてその変な夢のせいなのかって…」
「あなた、心配しすぎよ」
「だってよく聞くだろ?変な夢を見て、その後亡くなってしまうって話」
「そんなの嘘の話しでしょう?…でも本当に目を覚まして良かった」
父は相変わらずオカルト好きで、母は心配性だな。
僕は大丈夫、と言って二人を宥めた。
結局僕が一週間も寝続けた原因は分からないままだった。
僕は病気が治らないままで、今も入院している。
でもこの間ようやく仮退院してもいいと許可がでた。
早く退院して、友人達とまたバカをやりたいな。
その日の夜。
久々にまたあの青白い手がでた。
しかし今度はその手は僕の目の前まで伸びていた。
女性の笑い声が聞こえる。
その手が徐々に僕の首に迫り来る。
「ほら、こっちへおいで」
僕の首に手がようやく届いた。
「つ・か・ま・え・た」
目を覚ますと白い天井が見えた。
久々にいやな夢を見たな、と僕は思った。
汗を拭おうと手を動かす。
しかし手はおろか、体も全く動かない。
ーーーあぁまたか。
前もこんなことがあった。
そうか。
これは夢だ。
またこんな夢を見てしまった。
早く覚めないと。
また両親が心配してしまう。
早く覚めろ僕。
目を覚ませ………
少年は今日も夢を見る。
永遠に覚めない夢を、ね。
ある夢。ある屍。END
こんにちは。死蘭です。
謎解き編、分かった人には簡単な問題だったと思います。
分からない人のために解説編を載せておきますのでそちらを是非見てみてください。
勿論確かめに見てもらっても構いません!
それでは解説編でまたお会いしましょう。