緋和ちゃんはどうして?
入院生活初めての朝は大変だった。でも、気づくと八時ちょっと前。
もうすぐ朝ご飯の時間だ。意外とお腹の減っているわたし。超健康人になれそうな勢いだ。
「ご飯は、自分で取りに行くんだけど……西尾さん、それじゃあ無理だよね」
緋和ちゃんが私の手を見て言った。点滴のしてある左手。確かにこれではご飯は取りにいけそうにない。
「取ってきてあげるけど、食べられる?」
「流石に食べれるよ。たぶん……」
「そう。食べられなかったらナースコール、してもいいと思うから」
緋和ちゃんはそれを言いながらベッドのカーテンを閉めた。
そういえば、随分と病院に慣れている様子だけど入院生活が長いのだろうか。知りたいけど、本人に聞くのはちょっと……。
「ねえ、心晴ちゃん」
わたしは小声で話しかけた。緋和ちゃんに聞こえないように。
「なあに?」
心晴ちゃんも小声で返してくれる。
「緋和ちゃんって入院生活長いの?」
「そうだね~わたしも気になったとき、あったんだよね。何でも緋和は知ってるからさ~。だから、わたしの担当の先生に聞いてみたの。」
「何て?」
「緋和はいつからここに入院してるんですかーって。」
「そしたら?」
「そうしたらね、数か月入院しては、退院。そうしてまた数か月入院、退院。を繰り返しているらしいの。わたしは緋和が何の病気かは知らないけど、きっと大変なんだろうね~」
驚いた。一見、元気そうに見える緋和ちゃん。でも、本当はとても弱くて、だから入院を何度も何度もしているんだと思った。
ここに元気な子なんていないっていうのは分かっていたつもりだった。でも改めて、みんな大変なことを実感した。