89.迫る検査日
彩ちゃんが決断した日からMRIに向けた準備は着実に進んでいった。
そしてなるべく早く撮らせてもらえるようにお願いをして予約した実施日は明日というところまで迫っていた。
「彩ちゃんこんにちは、体調はどうかな?」
「先生。別にいつもと変わんない。」
「そっか良かった。じゃあ明日の検査も大丈夫そうだね。」
彩ちゃんの肩が小さく震えた。やはり怖がっていることは明白だった。
「緊張してるかな、大丈夫だよ。彩ちゃんはただ寝てるだけで終わるからね。」
「でも点滴はするんでしょ……!」
「点滴はするね、検査の結果がはっきりわかるようにするための点滴だよ。どうしても必要なものなんだ、だからちょっとだけ、頑張れないかな?」
恐らく検査を受けると決めた時点である程度痛い思いをする覚悟はできていたのだと思う。だけど検査前日になって怖くなってしまったのだろう。小児の患者さんではよくあることだ。
「……もうやるって、決めたし。」
「そうだね、えらいえらい!」
本当に緋和ちゃんと揉めた一件以来少し前向きな方に素直になった気がする。
「じゃあまた明日、検査の前に説明があるからその時にもう少し詳しく話すね。」
そう告げて彩ちゃんのベッドを離れると丁度、隣の緋和ちゃんのベッドにも市能川先生が問診に来ていた。
緋和ちゃんはあれから三日ほどでほぼ完全に回復して一週間弱経った今ではもうすっかり体調は整ったようだった。しかし、根本問題は解決していない。もちろんそれはこの間彩ちゃんが指摘した点である。自分の体調を隠すことまで正しいと思っている緋和ちゃんの意識改善。
市能川先生はだいぶ手を焼いているようだった。
今も昔も緋和ちゃんは自分のことをあまり話したがらないし、自分のことを話すことがそもそもあまり得意ではないように見受けられた。
だけどこのままでいいはずは勿論ないので、ここ数日市能川先生は比較的頻繁に緋和ちゃんのベッドを訪れているようだった。
――神原緋和ちゃん、十二歳。彼女の担当になって約一年、まったく心を開かれている感じがしない。
彼女の入院生活は幼少期から多岐にわたっているせいで病院への慣れがすごい。それが吉と出た面も多々あるけれど凶と出た面もかなり強い。今回の一件は完全に凶だ。
医者の俺たちや看護師たちへの対応もどこか距離があって「私は一人で大丈夫」とでも言っているかのように感じる。




