86.重なる姿
「そう……ですよね。もっと気を付けないといけないな……。」
個々で感じ方も発し方も違う。その患者さんの命に関わることだからやっぱりそれを僕たちは受け止められないといけないし、患者側が受け止められる形に直して伝えなければいけない。彩ちゃんにはもう少し長い時間向き合う時間を設ける必要があるのかもしれない。また明日、彩ちゃんの様子を見に行こう。
市能川先生の話によると緋和ちゃんも身体事態に大きな問題はないらしい。それもよかった。緋和ちゃんも僕の担当ではないにせよ何か対策が必要な問題である。
「さーやちゃん、おはよう!」
「んん……おは、よう……。」
「いつもより眠そうだね。」
いつもより眠そうではあるけど、体温や呼吸等に問題はない。大丈夫そうだ。
「昨日は、ごめんね。彩ちゃんが嫌なの知ってたのに圧しきるように話を進めようとして。本当にごめん。」
彩ちゃんは少し困ったように眉を下げた。
「……わたし嫌なの。病院も先生も、検査なんてもってのほか……。」
「うん。」
「……でも、どうしてもやらないといけないの……?」
「うん。彩ちゃんの身体のためにもやらないと後悔するのは彩ちゃん自身かもしれないからね。」
「昨日はわたし、自分が悪いなんて全然思ってなかった。緋和ちゃんに叩かれても、わたしは悪くないのにどうしてって……。」
彩ちゃんはそこでつまる。僕ができることは彩ちゃんの言葉をじっと待つことだけだ。
「でもわたし昨日の夜、緋和ちゃんがうなされてるのを聞いたの。……それで、あの緋和ちゃんが熱でうなされるような状態になるまで体調不良を黙っていたのが緋和ちゃんの言う『迷惑をかけない』ってことなんだって思ったんだけど……。」
途切れながらも必死に思いを言葉にしてつむぐ彩ちゃんは昨日までと随分様子が変わったように思える。これは緋和ちゃんの影響なのか。緋和ちゃんの姿が百萌ちゃんと七生ちゃんに重なる。




