検温なんて嫌っ!
トイレから戻ると春上先生がいた。知らない先生と看護師さんもいたけど。朝からお医者さんに囲まれるなんてやっぱり嫌だ。
「よし大丈夫そうだね~昨日の夜は大変だったね~」
ベッドに戻ると春上先生は笑顔で話しかけてきた。昨日の夜の記憶は断片的にしか覚えていない。
「今日は天気悪いし、夜も大変だったから、点滴はまだつけといた方がいいかな~」
天気が悪いのと点滴に何の関係があるのかイマイチ分からないけど、まあ発作? が起きるのは結構辛かったからいいか。
「あ、雨の日とかね台風が近いときは気圧の変化とかあるから発作が起きやすいんだよ」
わたしの表情を見抜いて天気と発作の関係について教えてくれた。普通に話している分にはお医者さんもただの人だから平気なんだけど、やっぱり治療中とかだと嫌。
「今日はお母さん来るって言っていたから、来たら看護師さんに言ってね。それでお母さんと一緒でいいから小児科のとこまで来てね。」
「何するの?」
不安しかない。注射とかされるのかな。それとも何だっけ……緋和ちゃんも言われていた……そうだ、心電図。そういうのかな?
でも、でも、もしかしたら問診だけかもしれないし。いろいろ考えるとより不安が積もった。
「それはお母さんがきてから話すね~」
緋和ちゃんは教えてもらっていたのに……何だか曖昧にはぐらかされた。まあ理由はきっとわたしが嫌がって逃げたりしそうだからだと思うけど。
「あと、また何かあったらナースコール押すんだよ」
「はい……」
わたしは渋々返事をした。
「じゃあ最後に検温」
「やだやだッ!」
「ちょっと脇に挟むだけだから」
「それでも嫌ッ!」
「彩ちゃん、これやんないともっといろんな先生来て無理やりしちゃうよ?」
「それも嫌ッ!」
「じゃあ、頑張ろうか」
結局わたしは先生にうまくまるめ込まれてしまった。仕方なく、とてもいやいやながらわたしは脇に体温計を挟んだ。冷たくてビクッと体が震えそうだった。
「三十六度、四分。平熱かな。じゃあ、何かあったら呼ぶんだよ」
先生はそれで去ってくれた。朝からこんなに声を出すことなんて普通に学校生活を送っていればない、といっても過言ではない。叫びすぎて疲れた。