79.発熱
「春上……先生。どうして」
そうつぶやく緋和ちゃんには驚き、後悔、羞恥など様々なものが見えた。
「ごめん、盗み聞きしちゃって……。でも、病気になった報酬が僕ら医者と出会えたことっていうのは違うと思う。だって、病気になっただけじゃない、入院しただけじゃない。他にもいろいろな犠牲を払ったうえで成り立った僕らの出会いだ。その犠牲と僕ら医者との出会いが同等なんて思えないよ。」
「……先生としてはそうだったのかもしれないけど、私は本当にこれでよかったって思ってるんです。」
ふわりと表情を柔らかくして笑う緋和ちゃんの笑顔はどうも僕の心を締め付ける。
いや、緋和ちゃんだけじゃない。僕はこの手で誰かの体に傷をつけてしまったことに負い目……のようなものを感じている。こんな僕はもしかしたら医者には向いていないのかもしれない。でもそれ以上に患者さんの退院するときの笑顔が好きだ。だから僕は医者を続けているんだろうな。
「緋和、ちょっと顔赤くない?」
背後から白衣を引っ張られ、夏目ちゃんに声をかけられた。確かに言われてみればそうかもしれないと思った瞬間。緋和ちゃんの足は崩れた。
「緋和ちゃん!」
突然倒れこむ緋和ちゃんの身体を支えると明らかに熱かった。熱がある……!
「緋和……!」
頭痛がするのかこめかみにしわを寄せたままだ。
「大丈夫、ちょっと足が滑っただけです」




