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LIAR・TEAR ~ライアー・ティア~  作者: 八瀬蛍
第一章 彩と緋和の出会い
74/91

74.価値観

 やっぱり図星のようで緋和は少しどぎまぎしていた。

「…………。西尾さんって子が、さっき脱走したんです。春上先生の担当の子で、医者が嫌い病院が嫌いといつも……。挙句、脱走なんかして寧ろ驚いたくらいで……」

「へえ。脱走なんて思い切ったことするね、その子。」

 春上先生の担当の子か。緋和は自覚ないかもしれないけど、春上先生のことが大好きだから自分の担当がよかったんだろうな。なのに担当になった子は春上先生や他の先生に迷惑をかけた……と。

「そんなことするなんて思ってなかったから……。」

「なに? 叩きでもしたの?」

「…………。」

 面白半分で言ったのに、まさか? 緋和が人を叩くところなんてそれこそ見てみたいものだ。

「で、部屋を飛び出したと。やるねえ緋和も。」

「でも、やりすぎたかも……しれない……。」

「まあね。その西尾さん? は病院とか医者が苦手な理由があるのかもしれないし、それらが平気な緋和の価値観とは違うだろうね。」

 でも自分の価値観にとらわれているのは緋和だけじゃない。西尾さんとやらの方もそうだろう。緋和は反省しているようだけど相手はどうなのだろう。

 まあきっと春上先生が一緒だろうから大丈夫だとは思うけど。

「でも……! いや、謝らなきゃ……ですよね……。」

「まあ、そうだね。呼んでこようか?」

 うん、ともいや、とも言わない。心の準備ができていないという事なのかもしれない。ここは春上先生に任せてもいいかな。

「呼んでくるよ、それで私は夏目と春上先生に会って帰るね。久しぶりに会えてうれしかったよ。あ、そうそう緋和って携帯もってる?」

「……はい一応。」

「そっかよかった、じゃあ私の番号教えるね。」

 フリールームに設置されているお絵かきコーナーの紙とペンを借りて番号を書いた。ふとそのペンを使って思い出した記憶。ここのペンはカスカスのものが多かった。理由はもちろんふたを閉めないから。私はカスカスのペンが勿体なく思えて定期的にふたが空いてないか見に行っていた。

 もうあれから六年の月日が流れた。短いようで長かったな。

「いつでも連絡してね。待ってるから。」

「……今日は、ありがとう……。私もあえてよかった……!」

今日は緋和に会うことができてよかった。


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