73.久しぶり
「緋和、久しぶり。七生さんってなに」
今までは七生ちゃんと呼んでいたような記憶がある。少しその呼ばれ方に慣れず面白かった。
「え、あ、七生……ちゃん」
なにか、そのおろおろした感じがより面白みを帯びさせた。
「……どうしたの? なにかあった?」
いくら成長したからといって、あの緋和があんな威嚇するような目で他人を見るだろうか。何かあったのだと思う。私の思い違いでなければ。
「いえ別に……大したことは……。」
「隠せると思ってるの? そんなに話したくない?」
緋和は、何も言わない。緋和の根本は何も変わっていないようだった。他人には何があっても自分の感情的な部分のことを話そうとしない。
緋和の手術前、春上先生は受け入れられていたみたいだったけど、私はまだ春上先生ほどには至っていないようだ。まああの頃から時間も経ちすぎたから仕方がないか……。
「例えば……例えば、同室の子が病院を脱走しようとしたら……どうしますか?」
しばらくの沈黙を破ったのは緋和自身だった。
同室の子が脱走したら……。考えたこともなかったが、まあ何やってるんだよくらいには思う。
「年下だったら怒ってるかなぁ? 年上なら呆れるな。」
「同じ年なら?」
「中間じゃないかな。怒るし、なおかつ呆れる」
なにか腑に落ちたような顔をした緋和に少し疑問は残るが、まあ彼女自身の中で何かが整理されたならよかった。
「で、緋和と同室の子が脱走したの?」
「え……」
「普通に緋和がそんな質問するわけないかなと思ったんだけど違う?」




